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『のだめカンタービレ』


二ノ宮知子 著 (講談社)



マンガで接近する音楽の本質
 
 昨年、テレビ・ドラマ化されたこともあって、ブームとなったこのマンガ。私は、よくいっしょに音楽の演奏を楽しんでいる女性の友人から、かなり早い時期にこのマンガを勧められていました。
 
 でも、そのときは、まあ少女マンガだしね、ということで興味はありつつも手には取りませんでした。その後、あまりにも評判になってきたので、試しに読んでみたところ、これがなかなかおもしろいものたったので、最初におすすめされたときに読んでおかなかったことを非常に後悔しました。
 
 1巻から9巻までは、主人公達が音楽大学で活躍する様子が、10巻からは世界の舞台で活躍する様子が描かれています。
 音楽大学での生活は、おそらく一般の人には物珍しく、興味深いものなのだと思います。この部分がおもしろいと言う人が多いようです。このマンガのおかげで音楽大学を受験する人が増えたのではないでしょうか。
 
 しかし、私はその後の世界の舞台で主人公達が活躍する場面になって、さらにおもしろさが増したと思います。私がおもしろいなと感じるのは、「音楽」のおもしろさの、言葉ではなかなか表現できないところを、マンガという媒体を通して、いいところまで迫っていることに成功している点です。
 
 惜しいのは、オーケストラとピアノが主体で、オペラがあまり出てこないところです。最初に主人公の尊敬する指揮者は、ウィーン国立歌劇場で『マクベス』を振っていることになっています。でもそれは、ほんとにそれだけです。
 
 『魔笛』の夜の女王の役を取りあって負けた女性が、《なんでわたしがあいつの娘役なわけぇ〜》とやけ酒を飲むシーンもありますが、これもちょっとしたエピソードであって、しかも夜の女王とパミーナでは並列には比べられないことは、オペラ好きの人ならすぐわかることでしょう。
 
 あとは『コジ・ファン・トゥッテ』の話が出てくるくらいです。実はこのマンガがブレイクしているとき、私のサイト「わかる!オペラ情報館」の『コジ・ファン・トゥッテ』のページのアクセス数がいつも多くて、「コジはこんなに人気があったのか」と驚いていたのですが、このマンガのせいだったのですね。それだけこのマンガは影響力があったのだということを納得いただけると思います。
 
 クラシック音楽が好きな人にも、そうでない人にも、一読をおすすめしたいマンガです。といっても、私も人からおすすめされても読まなかった部類ですから、大きな声では言えないのですけどね。
 






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