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バイエルン国立歌劇場『タンホイザー』


ワーグナー「タンホイザー」
2005.10.01 Sat. 15:00 東京文化会館(大)
メータ(指揮) オールデン(演出)
バイエルン国立歌劇場o.cho.
 タンホイザー  ギャンビル T
 エリーザベト  ピエチョンカ S
 ヴォルフラム  キーンリーサイド Br
 ヴェーヌス  マイアー Ms
 ヘルマン  ケーニヒ Bs


11年前でも「新しい」

 バイエルン国立歌劇場の引っ越し公演で、1994年プレミエの『タンホイザー』を観てきました。今から11年前のプロダクションですが、デヴィッド・オールデンの演出は現在でもまだ「新しさ」を感じさせるものでした。
 
 日本のオペラも、最近はおもしろい演出が増えてきていますが(もちろん外国から一流の演出家を呼んできているためでもありますが)、このような海外の歌劇場の舞台を見せられると、まだまだ追いつけないのだなと思ってしまいます。
 
 
オールデンの演出のわからなさ
 
 このオールデンの演出は、わからないことも多くあります。私はオーソドックスな演出が好きですが、でもあまり平凡だと、ただ退屈なものになってしまうので、「わかる」と「わからない」の中間くらいの「仕掛け」をたくさん用意しておいてもらえるとうれしいところです。
 
 
ヴォルフラムの描き方
 
 今回、特に不思議だなと思っていたのが、タンホイザーの旧友ヴォルフラムの描き方です。従来、ヴェーヌスベルクに堕ちたタンホイザーに対比して、誇り高く立派に描かれることが多いヴォルフラムですが、オールデンの演出では、気弱で悩み多き詩人となっていました。最初は少しパッとしないなあと思っていました。
 
 でも、第2幕の歌合戦でよくわかりました。ヴォルフラムが悩みながら歌った「精神の愛」に対して、タンホイザーが「快楽の愛」こそが真実だと反論する場面。続けてヴァルターやビーテロルフがタンホイザーを非難しても、タンホイザーの暴論が止まないという状況で、それまで弱々しかったヴォルフラムが、何か吹っ切れたかのように歌い出したのを見たとき、なるほどここを頂点に狙ってきたのかと納得しました。その表現効果は抜群。その直後、タンホイザーがとうとうヴェーヌスを讃えて歌うというように、決定的な場面が最高に盛り上がりました。
 
 今回の『タンホイザー』は基本的にパリ版でしたが、この歌合戦の場面などはドレスデン版となっていたので、折衷版といったところでしょうか。私はバランスが取れていて、いい選択だったと思います。
 
 
雄弁なピット
 
 それにしても、ピットのバイエルン国立歌劇場管弦楽団の「雄弁」なこと。絶妙な合いの手に、本当にオペラをよく知っているんだなあと感心させられます。日本のオーケストラとは、まるでアナウンサーの表現と、朗読の表現の違いのようです(ただし、私はアナウンサー的な美しさも好きです)。
 特に管楽器、オーボエやフルートが際立った音楽を聴かせてくれました。
 
 ズービン・メータの指揮は、少し大味でアンサンブルが乱れたところもありましたが、最初から最後まで熱演でした。
 
 
歌手の力量
 
 歌手陣としては、上記のヴォルフラムを演じきったサイモン・キーンリーサイド(Br)が、筋のいい歌唱を披露。当然ながらヴェーヌス役のワルトラウト・マイアー(Ms)は貫禄の歌唱。

 エリーザベト役のアドリアンヌ・ピエチョンカ(S)は、2001年に新国立劇場『ドン・ジョヴァンニ』のドンナ・アンナを聴いたときから目を付けていましたが、その時より数段うまくなっていて驚きました。第3幕では、もう少し抑えてじっくりと歌った方がよかったとも思います。
 
 
                             (2005/10/02)





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