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ダフネ

Daphne





オペラ・データ

【作曲】
リヒャルト・シュトラウス 1935頃~37年に作曲

【初演】
1938年10月15日 ドレスデン、国立歌劇場

【台本】
ヨーゼフ・グレゴール(ドイツ語)

【原作】
ギリシャ神話

【演奏時間】
全1幕 約1時間30分



あらすじ

【時と場所】 
ギリシャ神話の時代、オリンポス山のふもとの川岸

【登場人物】
ダフネ(S): 精霊
アポロ(T): オリンポス12神の一人
ロイキッポス(T): ダフネの幼馴染
ペナイオス(Bs): 漁師、ダフネの父
ゲーア(Ms): ダフネの母
ほか

【全1幕】
時はギリシャ神話の時代、舞台はオリンポス山のふもとの川岸。漁師ペナイオスとその妻ゲーアの娘ダフネが、一日を終える夕暮れ時、オリーブの樹々に祈りを捧げていると、その木陰から幼馴染の若者ロイキッポスが現れます。大人に一歩近づいている彼は、ダフネにその恋心を打ち明けますが、彼女にはその意味が理解できず伝わりません。

その夜、オリンポス神の一人アポロが人間の姿となり、牛飼いとして川岸にやってきます。そこで、満月の光に照らされたダフネの姿を見初め、彼女に向かって「妹」と呼びかけました。ダフネは、アポロのことを兄と認めながらも、彼に何か不思議な力を感じます。兄に抱擁され、口づけを受けて動揺します。いつしか月も隠れ、暗闇が二人を包み込みました。

この日は葡萄祭の日、夏至の日没の後にディオニソスを讃えて祝宴が始まります。松明を持つ牧人たちにより明るくなった一帯で、乙女たちが杯を持ち、祝酒をふるまいます。その乙女の中にロイキッポスがいました。女性の姿になって、男性を拒絶するダフネに近づいたのです。その行為に怒ったアポロは、神の力で雷雲を呼び、まず祝宴に集まっていた人々を追い払います。そしてロイキッポスに向かって弓矢を構えました。しかしロイキッポスは、神を前にして、神が愛したダフネへの想いを貫きます。アポロはそのままロイキッポスを射貫くと、彼はその場に崩れ落ちました。

そのとき初めてロイキッポスの愛に気がついたダフネは、彼の愛にこたえることができなかったことを悔みます。ロイキッポスの死を悼み、彼に全てを捧げるというダフネ。アポロは、彼女の体を、永遠に緑を保つ月桂樹に変えて、ロイキッポスが倒れた大地に残したのでした。



解説(ポイント)

【1】 円熟期に挑むオペラの古典
 
世界最初のオペラとされるヤコボ・ペーリの『ダフネ』以降、様々な作曲家がダフネを題材としたオペラ作品を生み出してきました。円熟期にあったR.シュトラウスにとっても、オペラの原点から、自身の業績を意識した格好のテーマだったことでしょう。R.シュトラウスは、ローマのボルゲーゼ美術館のベルニーニ作「アポロとダフネ」に想いを寄せてこのオペラの創作を決意したそうです。また、フィレンツェのウフィツィ美術館のボッティチェリ作「春(プリマヴェーラ)」をダフネのモデルに、との考えを持っていました。
 
【2】 月桂樹とダフネの物語
 
ダフネは、アポロに求愛されて月桂樹となった精霊(ニンフ)として、ギリシャ神話でも有名な登場人物です。オリンポス12神の一人アポロ(アポロン)は、エロス(キューピッド)の持つ弓矢を小さいとからかったことから、エロスはアポロのことを金の矢で射ち、ダフネを鉛の矢で射ちました。金の矢は愛を芽生えさせる、鉛の矢は愛を拒絶するものです。アポロはダフネを追いかけ、ダフネはアポロから逃げます。とうとうアポロに追いつかれそうになったとき、ダフネは川の神である父ペナイオスに助けを求めました。父は娘の願いを聞き入れ、ダフネの体を月桂樹に変えます。失意のアポロはこの月桂樹から、月桂冠を作ったというのが元の神話です。オペラでは「愛」を拒絶するダフネに対し、アポロは兄として近づき、ロイキッポスは女性の衣裳で近づこうとします。
 
【3】 ダフネの最後の歌唱
 
アポロは兄としてダフネの前に現れ、ダフネへの愛の言葉を投げかけます。「卑しい衣をまとって」"Was führt dich her"から始まるアポロとダフネの二重唱は、シュトラウスの圧倒的な音楽の力を感じます。そして、ダフネをどのように月桂樹の姿に変えていくのかは、演出家にとって大きくその技術を問われるところとなりますし、その樹に月の光が差し込む最終場面におけるダフネの歌唱「来ましたよ、来ましたよ、緑なす兄弟よ」"Ich komme...ich komme...Grünende Brüder"とそれに続く「月の光の音楽」は、このオペラの最大の聴きどころの一つです。
 


おすすめディスク

【CD】
ベーム指揮
ウィーン交響楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
ギューデン(S) キング(T) ヴンダーリヒ(T)
(録音1964年、Deutsche Grammophon)
アン・デア・ウィーン劇場におけるライブ録音。ギューデンとキングのほかに、瑞々しいヴンダーリヒのロイキッポスが聴ける名盤です。

【CD】
ビシュコフ指揮
ケルン放送交響楽団、合唱団
フレミング(S) ボータ(T) シャーデ(T)
(録音2005年、DECCA)
シュトラウス歌いのプリマドンナ、フレミングにダフネ役は当たり役と言ってもいいでしょう。美しいサウンド。








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