2023年新刊
名作オペラをやさしく解説
面白いほどわかる!
オペラ入門
名アリア名場面はここにある
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,800円+税
詳しくはこちら
|
オペラのことをいちから学ぶ
声、歌、音楽、演出について
オペラ鑑賞講座 超入門
楽しむためのコツ
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,600円+税
詳しくはこちら
|
「オペラ情報館」が
本になりました
オペラにいこう!
楽しむための基礎知識
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,600円+税
詳しくはこちら
|
|
【作曲】
リヒャルト・シュトラウス 1914~17年に作曲
【初演】
1919年10月10日 ウィーン、国立歌劇場
【台本】
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール(ドイツ語)
【原作】
ヴィルヘルム・ハウフの童話『冷たい心臓』
【演奏時間】
第1幕 70分
第2幕 60分
第3幕 70分 合計 約3時間20分
|
【時と場所】
東南の島々
【登場人物】
皇帝(T)
皇后(S): カイコバートの娘
乳母(Ms): 皇后の保護者
バラック(Br): 染物師
バラックの妻(S)
ほか
【第1幕】
舞台は東南の島々。この国の皇帝は、霊界の王カイコバートの娘と結婚し、皇后としました。皇后は完全な人間ではなく、自分の影をなくしており、それは子どもを産めないことを意味していました。娘を奪われて立腹した霊界の王は、皇帝に呪いをかけます。その呪いによって、1年経って皇后に影ができなければ、皇帝は石になる運命となりました。期限の1年まであと3日に迫っています。影を望む皇后に、彼女の乳母は、人間をだまして影を奪うことを勧めます。皇后と乳母は人間界へと出かけました。
染物師バラックとの夫婦生活に不満をもつその妻は、子どもに恵まれていません。染物師の妻に対し、乳母は皇后とともに3日間召使いとなることを申し出ます。そして、彼女に美しい宝石や恋人を与えるかわりに、彼女の影を買うという取引きを成立させました。
【第2幕】
染物師の妻は、夫のバラックに対して、見知らぬ男を恋人とし、自分の影を高値で売り払い、誰のためにも子どもを産まないことにしたと伝えます。それを聞いてバラックは激昂しました。その間に、乳母は皇后に、影を奪い取るように言います。しかし、皇后はそれを罪と感じ、拒否しました。
バラックが手を挙げると、その手になんと裁きの剣が天から与えられます。それを妻に振り降ろそうとしたときです。大地が裂け、家が崩れ、バラックと妻は霊界に落ちていきました。
【第3幕】
霊界の牢獄に捕らわれたバラックとその妻は、お互いの愛を求める気持ちに気がつきます。乳母は依然として皇后に影を奪わせようと仕向けますが、その行いは霊界からの怒りを買い、乳母は追放されます。霊界では、黄金に輝く生命の水が湧き出ており、皇后はこれを飲めば、バラックの妻の影が得られると告げられますが、彼女は拒否します。そのとき、石になった皇帝の姿を見せられます。それでも皇后は飲まないと言い切ると、皇帝は元の姿に戻り、生まれていない子どもたちの歓呼の声が聞こえてきたのでした。
|
【1】 R.シュトラウスのメルヘン・オペラ
R.シュトラウスと6つのオペラの台本を書いたホーフマンスタールは、モーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』を意識して完成させた『ばらの騎士』という最高傑作を生み出した後も、同じくモーツァルトのオペラ『魔笛』に似ているメルヘン・オペラを構想しました。そして再び、シュトラウスとホーフマンスタールの共同制作が始まります。ホーフマンスタールは「千夜一夜物語」やグリム童話などから素材を得て物語を作っていきました。第1幕、第2幕・・・とテキストが出来上がるたびに、シュトラウスからの注文が付き、激しい意見が交わされました。こうして複雑な筋と意味が交差するこのオペラ『影のない女』が完成しました。
【2】 円熟期のR.シュトラウスの音楽技法
シュトラウスがこのオペラを手がけたのは、50歳前後の作曲家として脂の乗り切った時期にありました。このオペラでは、わかりにくくなりがちな筋を、シュトラウスが音楽で丁寧に説明していきます。それは、ワーグナーのライトモティーフの形で現れ、例えば、霊界の王カイコバートの動機、鷹の動機、石化の動機、生まれていない子どもの声の動機などがあり、それが丹念に織り込まれて、各場面が提示されるのです。シュトラウスのオペラ作品の中でも最も大規模なものと言える『影のない女』ですが、その分、シュトラウスの持つ音楽技法が注ぎ込まれています。
【3】 音楽の力による語り
様々な童話や物語の素材からなるこのオペラは、筋も、そしてその意味するところも複雑であり、様々な解釈が可能です。そうしたことから、演出家が多くの着想を得て、読み替え演出にはおあつらえ向きと言えるでしょう。音楽は、上述したようにシュトラウスの分厚い編成のオーケストラで雄弁に語られます。聴き逃したくないのは、第3幕の冒頭、霊界に落ちたバラックとその妻による二重唱「私に委ねられた」"Mir
anvertraut"で、これは名場面として知られています。そして、オペラの最終場面で、バラックとその妻、皇帝と皇后という2組による四重唱「心から歓呼しよう」"Nun
will ich jubeln"が歌い上げられ、生まれていない子どもたちの合唱とともに大団円を迎えます。
|
【CD】
シノーポリ指揮
ドレスデン・シュターツカペレ、ドレスデン州立歌劇場合唱団
ヘップナー(T) ヴォイト(S) シュヴァルツ(Ms) グルントヘーバー(Br) ハス(S)
(録音1996年、TELDEC) |
|
|
この重量級のオペラをシノーポリとドレスデン・シュターツカペレ、それに充実した歌手陣で贅沢に聴くことができます。
|
|