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ドン・カルロ






オペラ・データ

【作曲】
ジュゼッペ・ヴェルディ(1865〜66年)

【初演】
1867年3月11日 パリ、オペラ座
(4幕改訂版は1884年1月10日 ミラノ、スカラ座)

【台本】
フランソワ・ジョセフ・メリ、カミーユ・デュ・ロクル(フランス語)
アキッレ・デ・ラウジェレス、アンジェロ・サナルディーニ(イタリア語訳、加筆)

【原作】
フリードリヒ・シラーの戯曲『ドン・カルロス』

【演奏時間】
第1幕 60分
第2幕 40分
第3幕 50分
第4幕 30分  合計 約3時間



あらすじ

【時と場所】 
1560年頃、スペインのマドリード

【登場人物】
ドン・カルロ(T): スペインの王子
エリザベッタ(S): フランスの王女で、後にスペイン王妃
ロドリーゴ(Br): 侯爵、カルロの親友
フィリッポ2世(Bs): スペイン王、カルロの父
エボリ公女(Ms): エリザベッタに仕える女官
ほか

【第1幕】
時は1560年頃、舞台はスペインのマドリード。スペインの王子ドン・カルロは、フランスの王女エリザベッタと愛し合い婚約していましたが、エリザベッタは政略によってカルロの父、つまりスペイン王のフィリッポ2世と結婚していました。
エリザベッタへの想いが忘れられないカルロを、親友のロドリーゴが励まします。ロドリーゴは彼に、スペインの圧政に苦しむフランドルの救済に力を注ぐように言いました。この当時、旧教カトリックのスペインは、新教徒プロテスタントの多いフランドル地方に弾圧を加えていたのです。
 
【第2幕】
王妃エリザベッタの女官であるエボリ公女は、カルロのことを密かに愛していましたが、彼がまだエリザベッタのことを忘れられないということを知って、激しく嫉妬します。
ところで、大聖堂前の大広場では、異端者が火刑に処されるところでした。民衆が国王フィリッポ2世を讃えていたとき、そこに王子カルロがフランドルの使節たちを連れて現れます。そしてフランドルの救済を願い出たのです。もちろん国王は聞く耳を持ちません。興奮して思わず剣を抜いたカルロは、反逆罪で捕らえられ牢に入れられてしまいました。
 
【第3幕】
国王フィリッポ2世自身も、王妃エリザベッタから本当に愛されていないことを感じ、孤独を嘆いていました。そして、息子カルロの処遇にも悩みます。
エリザベッタが部屋に入ってきたとき、フィリッポ2世は、彼女の宝石箱にカルロの肖像画が入っていたことを明らかにし、激怒して出ていきます。実はエリザベッタの女官エボリ公女がこっそり宝石箱を盗み、国王に渡していたのです。事の大きさに気付き良心の呵責を感じたエボリは、エリザベッタに罪を告白し、カルロの命を救うことで罪を償おうとします。
カルロの親友ロドリーゴも、彼の命を救おうとしました。反逆者はカルロではなく自分だということにし、身代わりになったのです。カルロの独房にやってきたロドリーゴは、フランドルの救済をカルロに託し、自らは暗殺されてしまいます。このとき、カルロの解放を求めた民衆の暴動が起きていました。そしてその騒ぎの隙にエボリがカルロを牢から逃がしたのです。
 
【第4幕】
月夜の静かな修道院にて、昔の幸せを思い出しながらエリザベッタが待っているところへ、カルロが現れます。カルロはフランドルに密かに旅立つため、二人は永遠の別れを決意します。
そこへ、フィリッポ2世が現れ、カルロを捕らえようとしました。しかし、そこへなんと偉大なる先王カルロ5世の亡霊が出現し、不思議な力でカルロをいずこへと連れ去っていったのでした。



解説(ポイント)

【1】 スケールの大きい歴史ドラマ
 
ヴェルディは、パリ・オペラ座から新作の作曲の依頼を受けて、このオペラ『ドン・カルロ』を作曲しました。原作はシラーの『ドン・カルロス』。ヴェルディは、すでにこの作品を知っていましたが、この壮大な物語をどのようにオペラにまとめ上げるか苦心したようです。しかし円熟期のヴェルディは、その原作の持つスケールの大きさを維持しながら、多様な登場人物の心情を描ききり、見事なグランド・オペラとして完成させました。
 
【2】 物語の背景を知っておく
 
この『ドン・カルロ』というオペラは、16世紀のスペイン宮廷を舞台に繰り広げられます。ドン・カルロの祖父にあたる人物、カルロ5世は、宗教改革の息吹の中、ヨーロッパで広大な領地を治めていました。しかし、そうした統治にも疲れて引退を決めます。まずオーストリアの領地と神聖ローマ皇帝の地位を弟に与え、そしてスペイン等の他の領地を息子のフィリッポ2世に与えました。フィリッポ2世は「無敵艦隊」と呼ばれるスペイン艦隊を率いて、全世界にスペインの領地を作ります。こうした中、フィリッポ2世はフランドル(現在のオランダ、ベルギー、ルクセンブルク周辺)の都市に重税をかけ、さらにカトリックを強制しました。このことから、フランドルは独立戦争へと進んでいったのです。フィリッポ2世が、フランドルの新教徒と通じていた息子のカルロを幽閉したのも実話です。
 
【3】 個性的な登場人物
 
タイトルロールのドン・カルロ以外にも、主役と言っていい役が多くあります。エリザベッタは、その悲しい運命を受け入れる強い心を持った女性で、第4幕のアリア「世のむなしさを知る神」は名歌。ドン・カルロの親友ロドリーゴは原作者シラーの創作した人物ですが、キー・プレーヤーであり、ドン・カルロとの友情を確かめ合う二重唱や、アリア「最後の時がきた」は見逃せません。フィリッポ2世の歌うアリア「一人寂しく眠ろう」は、バス歌手の本領が発揮されるところですし、エボリ公女の存在もこのオペラに大きな影響を与えています。この頃ヴェルディは、その華やかな音楽の手法に加えて、登場人物の内面を描き出す手法を自分のものとしていました。



おすすめディスク

【CD】
カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
カレーラス(T) フレーニ(S) カップッチッリ(Br) ギャウロフ(Bs) バルツァ(Ms)
(録音1978年、東芝EMI)
 
このオペラの定盤とも言うべきディスク。表記の他にもファン・ダム(Br)、ライモンディ(Bs)、グルベローヴァ(S)、ヘンドリックス(S)とスター歌手がちりばめられています。エリザベッタ役のフレーニが絶唱を聴かせてくれます。


【CD】
ハイティンク指揮
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
マージソン(T) ゴルチャコーワ(S) ホロストフスキー(Br) スカンディウッツィ(Bs) ボロディナ(Ms)
(録音1996年、PHILIPS)
 
イタリア語で5幕という「モデナ版」を採用しています。カルロ役のマージソンがやや弱いものの、新しい録音の中では非常に存在感があります。特にフィリッポ2世役のスカンディウッツィは、歴代のバス歌手に匹敵する力を見せました。


【DVD】
カラヤン指揮、演出
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ザルツブルク・コンサート合唱団
カレーラス(T) イッツォ・ダミーコ(S) カップッチッリ(Br) フルラネット(Bs) バルツァ(Ms)
(録音1986年、SONY CLASSICL)
 
ザルツブルク祝祭大劇場で、カラヤンが指揮、そして演出も手掛けた映像。カラヤンの徹底ぶりが発揮され、オケピットが映ったときなど全てを操るカラヤンの様子がよく見えておもしろい。さすがカレーラスは、ドン・カルロ役にいかにもはまっています。







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