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ファウスト

Faust





オペラ・データ

【作曲】
シャルル=フランソワ・グノー(1855〜58年)

【初演】
1859年3月19日 パリ、リリック劇場

【台本】
ジュール・バルビエ、ミシェル・カレ(フランス語)

【原作】
カレの戯曲『フォーストとマルグリット』、ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテの『ファウスト』第1部(ジェラール・ド・ネルヴァルのフランス語訳)

【演奏時間】
第1幕 30分
第2幕 30分
第3幕 50分
第4幕 45分
第5幕 35分  合計 約3時間10分



あらすじ

【時と場所】 
16世紀、ドイツ

【登場人物】
ファウスト(T): 博士、哲学者
メフィストフェレス(Bs): 悪魔
マルグリート(S): ヴァランタンの妹
ヴァランタン(Br): 兵士
ジーベル(Ms): 村の若者
ほか

【第1幕】
時は16世紀。舞台はドイツ、老哲学者ファウスト博士の書斎。ファウストは書物の前で、学問に捧げた人生を振り返り、何にも得られなかったと空しさを感じ、毒杯を仰ごうとします。そのとき神を呪い、悪魔を呼ぶと、そこに悪魔メフィストフェレスが現れました。ファウストは、あの世で悪魔に仕えるかわりに青春を得るという契約に署名します。悪魔に差し出された杯を飲み干すとファウストは若返りました。
 
【第2幕】
祭りで賑わう広場で、出征するヴァランタンが妹のマルグリートを残していくことを心配し、彼女を友人のジーベルに託します。そこにメフィストフェレスを連れたファウストが現れ、美しいマルグリートに一目ぼれして声をかけますが、彼女は彼の誘いを断り、立ち去りました。
 
【第3幕】
マルグリートの家まできたファウストは、ジーベルが彼女に小さな花束を置いたのに対抗して、メフィストフェレスが用意した数々の宝石を贈ります。ファウストはマルグリートを口説いて、彼女と結ばれました。
 
【第4幕】
戦争から帰ってきたヴァランタンは、妊娠した妹が恋人に捨てられたことを知り、激怒します。彼は剣を抜きファウストと決闘しますが、メフィストフェレスの助力を受けたファウストに殺されました。
 
【第5幕】
ワルプルギスの夜。ファウストは、彼との間の子を殺した罪で処刑を待つマルグリートを救うために、彼女の牢獄に向かいます。マルグリートはすでに精神が錯乱しており、ファウストを見ても牢から出ようとしません。しかし、天使の合唱が聞こえてくる中、マルグリートの魂は救われます。ファウストは天使とともに昇天する彼女に祈りを捧げ、その傍らでメフィストフェレスは、天使の剣の威力に倒れたのでした。



解説(ポイント)

【1】 フランスの大ヒット・オペラ
 
このオペラはゲーテの傑作『ファウスト』を原作としますが、正確にはその戯曲の前半である第一部の主な部分、ファウストとマルグリート(グレートヒェン)の恋愛物語をオペラ化しています。もちろん原作はドイツ語ですが、フランス語訳の台本に、フランスの作曲家シャルル・グノーが抒情的な音楽を施し、このオペラはパリだけでなく、世界中のオペラハウスで大ヒットしました。現在は、そのことが嘘のように、他のオペラ作品と比べて目立たなくなっていますが、長年、オペラ人気を支えた作品の一つです。
 
【2】 名曲がズラリ
 
グノーは当初、このオペラを台詞を伴うオペラ・コミックの形式で書きました。その後、台詞の部分に管弦楽で音楽を施してレシタティーフで各ナンバーがつなぎ合わされ、グランド・オペラとして上演されました。オペラ『ファウスト』には、聴きどころが多くあるのが魅力で、例えば、ファウストの「この清らかな住まい」、メフィストフェレスの「金の子牛の歌」「セレナード」、マルグリートの「トゥーレの王」「宝石の歌」「糸紡ぎの歌」、ジーベルの「花の歌」、ヴァランタンの「故郷を離れる前に」など多くのナンバーが次々と歌われます。
 
【3】 時よ止まれ、お前は美しい
 
原作のゲーテの『ファウスト』では、現生に絶望していたファウスト博士がメフィストフェレスと賭けをします。それは、もし若返って、再び人生を歩んだとき、その最高の瞬間にファウストが「時よ止まれ、お前は美しい」と言ったら、悪魔に魂を与えるというものでした。それほどの快楽を得ることができるか、という賭けです。このような名作『ファウスト』をテーマにした音楽作品は、ベルリオーズ『ファウストの劫罰』、シューマン『ファウストからの情景』のほか、数多く存在します。例えば、オペラではボーイト『メフィスト―フェレ』、シュポーア『ファウスト』、ブゾーニ『ファウスト博士』があり、歌曲でもシューベルト「糸を紡ぐグレートヒェン」、「トゥーレの王」、ベートーヴェンやムソルグスキー「蚤の歌」など、そして、交響曲でマーラー『千人の交響曲(第8番)』やリスト『ファウスト交響曲』など、この機会に接してみたいところです。
 


おすすめディスク

【CD】
プラッソン指揮
トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団、合唱団
リーチ(T) ファン・ダム(Bs) ステューダー(S) ハンプソン(Br)
(録音1991年、EMI CLASSICS)
 
プラッソンの指揮による手堅い演奏。メフィストフェレス役のファン・ダムの理知的な歌唱も、悪魔としてかえって怖い印象を与えます。ヴァランタン役のハンプソンも立派な出来です。
 
【DVD】
ネゼ=セガン指揮、マッカナフ演出
メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱団
カウフマン(T) パーペ(Bs) ポプラフスカヤ(S) ハンプソン(Br)
(録音2011年、DECCA)
 
20世紀前半という設定で、スタイリッシュな舞台になりました。ここでもカウフマンは理想的なファウストを提示しています。
 
【DVD】
エッティンガー指揮、マクヴィカー演出
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
ファビアーノ(T) シュロット(Bs) ルング(S)
(録音2019年、OPUS ARTE)
 
こちらは19世紀後半のパリという設定。ゲーテの『ファウスト』は、多くの芸術家の想像をかきたてるようです。シュロットの歌うメフィストフェレス役が売りでもありますが、マルグリート役のルングが良いパフォーマンスを出しています。
 






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