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ジャンニ・スキッキ






オペラ・データ

【作曲】
ジャコモ・プッチーニ(1917〜18年)

【初演】
1918年12月14日 ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場

【台本】
ジョヴァッキーノ・ファルツァーノ(イタリア語)

【原作】
ダンテ『神曲』第一部「地獄篇」

【演奏時間】
全1幕 50分



あらすじ

【時と場所】 
1299年9月1日、フィレンツェ

【登場人物】
ジャンニ・スキッキ(Br): フィレンツェの知恵者
ラウレッタ(S): スキッキの娘
リヌッチオ(T): ラウレッタの恋人
ほか

【全1幕】
時は1299年9月1日、舞台はフィレンツェ。この地の大金持ちブオーゾ・ドナティがついさっき息を引き取ったところ・・・、その邸宅に集まった親戚9名は大いに悲しんでいたものの、頭の中は遺産相続のことでいっぱいでした。それもそのはず、全財産を修道院に寄付するという遺言状があったからです。
 
この遺言状に憤る一族でしたが、何かいい策も思いつきません。そこで、一族のうちの一人の若者リヌッチョは、自分の婚約者ラウレッタとその父ジャンニ・スキッキを呼び、どうしたらよいか相談します。
 
リヌッチョとラウレッタの結婚話について一族は反対していました。一族は「持参金なしには結婚させない」と娘の父スキッキに対して言い放ったので、スキッキも怒って帰ろうとします。そのときラウレッタは父スキッキに自分たちの結婚のために一肌脱いでほしいと懇願したのでした。
 
それから、スキッキの作戦が始まります。それは、スキッキが死んだブオーゾになり代わってまだ生きてることにして、遺言状を書き換えてしまおうというものでした。一族は大賛成をして、それぞれ自分に多く財産を分けてほしいとスキッキに言い寄ります。スキッキは、遺言状の書き換えがばれたときの刑罰は、共犯者全員が両手首を切断されてフィレンツェから追放される、つまり「さらばフィレンツェ」ですからねと、一族に伝えておきました。
 
さて、公証人が到着して遺言状の書き換えが始まります。ブオーゾになり代わったスキッキは、前の遺言状を撤回し、修道院にはわずかな金額を寄付することにします。そして、現金は一族で等分することにして、他の財産も平等に分け与えたので、一族は大喜びしました。その後スキッキは、一番価値があるロバ、家、粉ひき場について、親愛なる友人のジャンニ・スキッキに与えるとしたのです。一族はカンカンに怒り出しましたが、時すでに遅し。公証人が帰った後、スキッキは「この家は私のものだ」として一族を追い払いました。十分な資産を得て、娘のラウレッタとリヌッチョの結婚も実現することとなります。
 
舞台から客席に向かってスキッキが一言。「法外なやり方でしたが、皆様がお楽しみいただけたら、許してやってくださいな」



解説(ポイント)

【1】 3作目はダンテの『神曲』から
 
プッチーニの『三部作』と呼ばれるオペラのうちの3つ目の作品が、この『ジャンニ・スキッキ』です。このオペラの基になった話は、有名なダンテの『神曲』。しかし、そこには、ダンテの親戚を騙して遺産の遺言状を書き換えた罪で地獄に落とされた男のことが短く記述されているだけです。それが作曲家プッチーニと台本作家ファルツァーノの手によってこんな楽しいオペラに生まれ変わりました。『三部作』の3つのオペラの中でも、最も評価が高く、親しまれているオペラです。
 
【2】 プッチーニにオペラ・ブッファの才能は?
 
『三部作』の他の2作品と比べると、その特徴は「オペラ・ブッファ」であること。あのプッチーニの喜劇は一体どんなものなのでしょうか。オペラ自体は、演出の可能性が広くなっています。例えば、ブオーゾ・ドナティの遺言状を一族がみんなで開いて読むところなど、2分ほど音楽のみの部分があります。いろいろな演技、表現が考えられます。また、ジャンニ・スキッキが随所に「さらばフィレンツェ」と歌うことによって、一族を脅したりすかしたりするところなどは、見事な作曲法です。プッチーニにブッファの適性があったことが確認できます。
 
【3】 アリア「私のいとしいお父さん」
 
なんといってもこのオペラの知名度に貢献しているのは、ラウレッタが歌うアリア「私のいとしいお父さん」の存在でしょう。ソプラノ歌手がリサイタルで取り上げるアリアとしても人気のある曲です。もしかしたら、アリアはよく聴いたことがあっても、オペラの内容を知らない人も多いかもしれません。他にもリヌッチョが歌うアリア「フィレンツェは花咲く木のような」にはこんな歌詞が出てきます。「フィレンツェをより豊かに輝かせるために、芸術や学問に通じた者たちが訪れる」・・・ジャンニ・スキッキのことを言っているわけですが、その後の芸術の都フィレンツェの発展を先取りしたような感じがします。



おすすめディスク

【CD】
パッパーノ指揮
ロンドン交響楽団
ファン・ダム(Br)ゲオルギュウ(S) アラーニャ(T)
(録音1997年、EMI CLASSICS)
 
オペラ界の夢のカップル・ゲオルギュウとアラーニャを擁していますが、このオペラの性格上、二人の存在もあくまで全体の中に収まっています。それよりおもしろいのがジャンニ・スキッキ役のファン・ダムの歌唱。様々な声と表現を駆使してこのディスクを魅力あるものにしてくれました。







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