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神々の黄昏
『ニーベルングの指環』第3夜






オペラ・データ

【作曲】
リヒャルト・ワーグナー(1869〜74年)

【初演】
1876年8月17日 バイロイト、祝祭劇場

【台本】
作曲者ワーグナー自身による(ドイツ語)

【原作】
ドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの歌』、アイスランドの歌謡集『エッダ』等の伝説

【演奏時間】
序幕、第1幕 120分
第2幕 70分
第3幕 80分  合計 約4時間30分



あらすじ

【時と場所】 
神話の時代、ライン川近くのギービヒ家

【登場人物】
ジークフリート(T): ヴォータンの子ジークムントとジークリンデの子
ブリュンヒルデ(S): ヴォータンの娘、ジークフリートの妻
アルベリヒ(Br): ニーベルング族の小人、ハーゲンの父
グンター(Br): ギービヒ家の長男
グートルーネ(S): グンターの妹
ハーゲン(Bs): グンターの異父弟
ノルンたち: エルダの娘たち
ラインの娘たち
ほか

【序幕】
時は神話の時代、舞台はワルキューレの岩山。3人のノルンたちがこれまでの経緯を話しています。ジークフリートとブリュンヒルデは幸せに暮らしていましたが、ジークフリートは武勲を求めて旅立つことになり、彼は妻に指環を残し、ブリュンヒルデの愛馬に乗って旅立ちました。
 
【第1幕】
ライン川近くのギービヒ家の長男グンターは、異父弟ハーゲンに一家が栄える知恵を聞きます。ハーゲンは、グンターにブリュンヒルデを妻として迎えることを勧めます。
何も知らずにギービヒ家にやってきたジークフリートは忘れ薬を飲まされ、グンターの妹グートルーネに求婚することになります。そこでグンターは、ブリュンヒルデを自分の嫁にできればという条件を出しました。
ジークフリートは「隠れ頭巾」を使ってグンターに変装し、炎を越えてブリュンヒルデのもとに現れ、ついには彼女の指環をも奪い取ったのでした。
 
【第2幕】
夜、ハーゲンの夢の中に、父アルベリヒが現れ、神々に奪われた指環の経緯を説きます。ハーゲンは指環を手に入れることを誓います。
ギービヒ家の館では、婚礼の儀式が行われようとしていました。一組はジークフリートとグートルーネ。もう一組はグンターとブリュンヒルデ。ブリュンヒルデはジークフリートの指にグンターに奪われたはずの指環を見つけ驚きました。加えて、自分との幸せだった日々を忘れているジークフリートに対し、怒りがこみ上げてきます。
ハーゲンはブリュンヒルデに近寄り、ジークフリートの弱点を聞き出します。ブリュンヒルデは、彼は無敵で決して敵に背を向けて逃げることはないが、そのため背中は不死身の体になっていないことを教えました。
 
【第3幕】
ラインの娘たちがジークフリートに指環を返すように求めますが、彼は聞く耳を持ちません。
ジークフリートとハーゲンが狩に出掛け、宴の際にジークフリートは忘れ薬の解毒剤を飲まされます。記憶が戻ると、彼はブリュンヒルデのことを思い出しました。しかし、ハーゲンに背中から槍で刺され、ブリュンヒルデを讃えながら息絶えます。
「ジークフリートの葬送行進曲」が流れる中、遺体がギービヒ家の館に運ばれました。ラインの娘たちからすべてを聞いたブリュンヒルデは、ジークフリートの遺体の周りに薪を積んで火を放ちました。そのとき、ライン川が氾濫し、すべてを飲み込みます。ラインの娘たちはその中で指環を奪還し、指環を追ったハーゲンは溺れ死にました。
ブリュンヒルデの放った火は、神々の居城ヴァルハラにも燃え移り、神々は火に包まれ、その栄華は終焉したのでした。



解説(ポイント)

【1】 大悪役・ハーゲン
 
『ニーベルングの指環』の最後の作品である『神々の黄昏』は、この大河オペラの最後にふさわしく、壮大なオペラです。さて、『ワルキューレ』ではブリュンヒルデというヒロインが、『ジークフリート』ではタイトルロールであるヒーローが活躍しました。この『神々の黄昏』のキープレイヤーはというと……、悪役のハーゲンでしょうか。前作までにも、アルベリヒやミーメなどの小人族、またはファフナーなどの巨人族など、悪役はいたのですが、どことなくパンチに欠けるものがありました。しかし、ハーゲンは正真正銘の大悪役です。無敵のジークフリートを背中から槍で突き刺し、指環を手に入れようとする執念は、父アルベリヒをも上まわる。バス歌手の力の見せ所となっています。
 
【2】 指環のラスト・シーンの解釈は?
 
『ニーベルングの指環』全体で200にも及ぶ示導動機(ライトモティーフ)が用いられているとされており、ワーグナーの作曲法の極みといったところでしょうか。また、『神々の黄昏』は4部作の最終章というだけあって、複雑な背景を持ち、オペラ自体いろいろな解釈が可能です。しかし、女性の愛と死(自己犠牲)によって救済されるという構図は、ワーグナーの真骨頂とも言えます。15時間を通して鑑賞して、その後に、この作品からあなたは何を感じるのでしょうか。
 
【3】 バイロイト祝祭劇場・その2
 
ワーグナーが建設した祝祭劇場は、独特な作りとなっています。例えば、オーケストラ・ピット。通常、舞台と客席の間の空間に設置されることになっていますが、バイロイト祝祭劇場は、オケピットが半ば舞台の下に埋没していて、天蓋で覆われています。バイロイトで活躍した指揮者バレンボイムは、このオケピットが覆われた状態になっていることの利点として、「声とオーケストラの結びつきを容易にし、サウンドが申し分なく溶け合う」と評価しています。



おすすめディスク

【DVD】
ツァグロゼクほか指揮、コンヴィンチュニーほか演出
シュトゥットガルト州立管弦楽団、シュトゥットガルト・オペラ合唱団
ボンネマ(T) デヴォル(S) ブラハト(Bs)
(録画2002、03年、Creative Core)
 
ドイツのオペラ雑誌『オーパンヴェルト』において、最近、4回も最優秀歌劇場に選ばれたシュトゥットガルト歌劇場による『指環』のDVD。このセットのおもしろいところは、なんといっても4作品それぞれ演出家が違うこと。『ラインの黄金』はオペラ初演出のシュレーマー、『ワルキューレ』はネル、『ジークフリート』はヴィーラーとモラービトの黄金コンビ、そして最後の『神々の黄昏』にはコンヴィンチュニー、というようにひと癖もふた癖もある演出家が個性的な4部作を完成させました。シェロー盤以来、見てないと語れない名盤の出現です。







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