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イル・トロヴァトーレ






オペラ・データ

【作曲】
ジュゼッペ・ヴェルディ(1852年)

【初演】
1853年1月19日 ローマ、アポロ劇場

【台本】
サルヴァトーレ・カンマラーノ(遺稿)、レオーネ・エマヌエーレ・バールダレ補筆(イタリア語)

【原作】
アントニオ・ガルシア・グティエレスの戯曲『吟遊詩人』

【演奏時間】
第1幕 30分
第2幕 40分
第3幕 20分
第4幕 40分  合計 約2時間10分



あらすじ

【時と場所】 
15世紀初頭、スペインのアルゴン地方

【登場人物】
レオノーラ(S): 領主の夫人に仕える女官
マンリーコ(T): 吟遊詩人(トロヴァトーレ)
ルーナ伯爵(Br): アルゴン地方の貴族
アズチェーナ(Ms): ジプシーの女
ほか

【第1幕】
時は15世紀、舞台はスペインのアルゴン地方。この地の貴族ルーナ伯爵の弟は、赤ん坊の頃とても病弱でした。それはあるジプシーの老婆による呪いのせいだとされ、この老婆は火あぶりの刑に処され殺されました。しかし、このときルーナ伯爵の弟もいなくなり、処刑後の灰の中から、幼児の骨が発見されていました。
時は過ぎ、ルーナ伯爵はこの地で立派に成人し、力のある貴族となっていました。そして、領主の夫人に使えていた女官レオノーラに恋をします。けれど、レオノーラは吟遊詩人(トロヴァトーレ)のマンリーコと相愛の関係にありました。ルーナ伯爵とマンリーコは対立したのです。
 
【第2幕】
吟遊詩人マンリーコはジプシーの女アズチェーナの息子でした。アズチェーナは自分の母がルーナ伯爵家によって火あぶりにされたことを恨んでいました。処刑の時、夢中でルーナ伯爵家の赤子を奪い、炎の中に投げ入れたものの、間違えて自分の子供を投げ入れてしまったと語っていました。マンリーコは自分の出生に疑問を持ち始めます。
 
【第3幕】
ある日、アズチェーナはルーナ伯爵家の兵士に捕らえられます。そして、あの火あぶりにされた老婆の娘であること、また、マンリーコの母であることをルーナ伯爵は知ったのです。
一方、母がルーナ伯爵に捕らえられ処刑されると聞いたマンリーコは激怒し、仲間と共に救出に向かい、ルーナ伯爵家と戦いました。
 
【第4幕】
マンリーコはルーナ伯爵に捕らえられ、母アズチェーナと共に処刑されることとなりました。それを聞いたレオノーラは、マンリーコの命を救うようルーナ伯爵に頼みます。レオノーラは自身をルーナ伯爵に捧げる代わりにマンリーコを助けるとの約束を取り付け、その後彼女は秘かに毒をあおりました。
マンリーコは助かりましたが、レオノーラの取った行動を非難しました。しかし彼女の体に毒がまわり、彼の腕の中で倒れます。マンリーコはこの時すべてを知って嘆き悲しむのでした。
ルーナ伯爵は騙されたことを知って激怒します。マンリーコに対し再び処刑の命令を出しました。アズチェーナが止めに入ったものの間に合わず、マンリーコは処刑されます。
そのときアズチェーナは、ルーナ伯爵に向かって「マンリーコはお前の弟だ。・・・かたきをとりました、母さん!」と絶叫したのでした。



解説(ポイント)

【1】 「アズチェーナ」というタイトルだった可能性も・・・
 
『イル・トロヴァトーレ』は、ヴェルディの前作『リゴレット』、また次作『椿姫』とともに、ヴェルディ中期の傑作として親しまれています。このオペラは、筋が複雑だったり、「呪い」や「復讐」など暗いイメージだったりしたのにもかかわらず、初演のときから大成功を収めました。ヴェルディは特にアズチェーナの役に惚れ込み、オペラのタイトルに彼女の名前を使おうと思っていたときもありました。
 
【2】 「歌」で力勝負!
 
とにかくオペラの「歌」の醍醐味を堪能したいなら、この『イル・トロヴァトーレ』がおすすめです。歌の力で、ぐいぐいと客席をねじ伏せる・・・そんな力業を体験できるはず。4人の主要な登場人物がそれぞれソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール、バリトンの四声を受け持ち、オペラ全体の成功が歌手の力量にかかっています。また、合唱にも「アンヴィル・コーラス」として親しまれている陽気な曲や、男声6部合唱の美しい「ミゼレーレ」があり見逃せません。
 
【3】 名物の「ハイC」
 
数々の名アリアで目白押しのこのオペラには、レオノーラのアリア「恋はばら色の翼に乗って」、アズチェーナのアリア「炎は燃えて」、ルーナ伯爵のアリア「君はほほえみ」など聴き所満載ですが、なんといってもマンリーコのアリア「見よ、恐ろしい炎を」が注目されます。このアリアでは、テノールの最高音とも言える力強い「ハイC(ドイツ語でツェーと読む、高い「ド」の音)」が名物になっています。



おすすめディスク

【CD】
レヴァイン指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱団
ミッロ(S) ドミンゴ(T) チェルノフ(Br) ザジック(Ms)
(録音1991年、SONY)
 
レヴァイン率いるメトロポリタン歌劇場による『イル・トロヴァトーレ』。ここでもドミンゴは絶好調ですし、対するチェルノフも負けていません。ミッロも丁寧に歌っています。バランスの取れた名演の一つ。


【CD】
ムーティ指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
フリットリ(S) リチートラ(T) ヌッチ(Br) ウルマーナ(Ms)
(録音2000年、SONY)
 
フリットリが最高のレオノーラ像を提示してくれました。2000年のミラノ・スカラ座のオープニングを飾ったプロダクションで、ムーティは原典主義を貫いているので、本当は楽譜に書かれていないマンリーコのアリアでの「ハイC」はありません。当時もこのことでかなり物議を醸したようです。


【DVD】
リッツィ指揮、モシンスキー演出
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
ヴィッラロエル(S) クーラ(T) ホロストフスキー(Br) ネフ(Ms)
(録音2002年、Opus Arte Classic)
 
まさにクーラとホロストフスキーの男と男の対決が見もの、聴きものの一枚。『イル・トロヴァトーレ』はこのくらいかっこいい男たちが歌い上げてほしい。私はここではホロストフスキーに軍配を挙げたいと思います。







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