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清教徒

I Puritani





オペラ・データ

【作曲】
ヴィンチェンツォ・ベッリーニ (1834年に作曲)

【初演】
1835年1月24日 パリ、イタリア劇場

【台本】
カルロ・ペーポリ(イタリア語)

【原作】
アンスロとグサヴィエ共著の戯曲『議会党派と王党派』

【演奏時間】
第1幕 70分
第2幕 40分
第3幕 30分  合計 約2時間20分



あらすじ

【時と場所】 
1649年、イングランド

【登場人物】
エルヴィーラ(S): 議会派の城主の娘
アルトゥーロ(T): 王党派の騎士
リッカルド(Br): 議会派の騎士
エンリケッタ(Ms): チャールズ1世の未亡人
ほか

【第1幕】
時は1649年1月、国王チャールズ1世の死後、舞台はイングランド。王党派と戦うリッカルドは、戦地から城に戻ったら、城主の娘エルヴィーラと結婚することを、その城主から許しを得ていました。しかし、エルヴィーラは、敵である王党派の騎士アルトゥーロを愛していました。城主は、娘の心まで変えることはできないとし、娘とアルトゥーロとの結婚を承諾します。
騎士アルトゥーロは婚礼のため、城に入りました。そこで彼は、城内で密偵として疑われて議会に護送される女性を見かけます。彼女はエンリケッタ。亡き国王チャールズ1世の妻、すなわち女王でした。それを知ったアルトゥーロは王党派の騎士として女王を救うことを誓います。二人で城を脱出しようとしたところ、リッカルドにさえぎられました。しかし、リッカルドは二人をそのまま逃がします。アルトゥーロが捕らわれていた女性と共に逃亡したことを知ったエルヴィーラは嘆き悲しみました。

【第2幕】
議会は、アルトゥーロの処刑を宣告し、クロムウェルは彼の捜索を命じます。エルヴィーラは絶望して、狂乱状態となります。

【第3幕】
3か月後、月夜にマントに身を包んだアルトゥーロは、エルヴィーラの館に戻ってきました。そして、密かに彼女と会い、女王を救い出すため仕方がなかったこと、今でもエルヴィーラを愛していることを告白します。そこにリッカルドが清教徒たちを率いて現れ、アルトゥーロを逮捕しようとしました。エルヴィーラは彼とともに死ぬ覚悟でした。しかし、そのとき王党派が敗北したとの一報が入り、アルトゥーロの罪が許され、二人は幸福の日を手にしたのでした。



解説(ポイント)

【1】 早世の作曲家ベッリーニによる白鳥の歌
 
早世のオペラ作曲家ベッリーニは34歳で亡くなりましたが、この『清教徒』は彼の最後のオペラ作品です。その初演から8か月後、新作に取りかかろうとしたところで、病気で命を落とします。これまでのベッリーニのオペラを聴いていると、その天性の美しい旋律創作の技法によって、その後どんな傑作が生まれたかと思うと大変残念なことです。
 
【2】 清教徒革命をめぐる歴史物語
 
ベッリーニ最後の作品は、清教徒革命と呼ばれることもあるイギリスを舞台にした歴史オペラです。スコットランドから国王として迎えられたステュアート朝ジェームス1世は、絶対王政を行い、その息子チャールズ1世も1625年に王位を継ぐと絶対王政を維持、また、イギリス国教会の統制を強化しました。議会とも対立します。当時、議会派の多くをプロテスタントの一派(清教徒)が占めており、このクロムウェルが率いる議会派は、1942年、王党派の騎士たちと衝突しました。決着は議会派に軍配が上がり、1647年にチャールズ1世は捕らえられ、2年後の1649年に処刑されます。オペラでは、その後、身を隠した女王エンリケッタが議会派に捕らえられ、正体は明かされていないものの疑いをかけられ、議会に護送されようとしているところから始まります。
 
【3】 プリマ・ドンナの狂乱の場
 
このオペラの最大の聴きどころは、有名な「狂乱の場」です。第2幕でヒロインのエルヴィーラは、婚約者が別の女性と去り、かつ、敵として追われる身となったことを知り、この狂乱の場「あなたの優しい声が」"Qui la voce sua soave"を歌うことになります。ベッリーニはこのオペラでパリに進出しようとしており、当時流行していた狂乱オペラを提示したとされます。ドニゼッティの『ランメルモールのルチア』とともに、オペラ史上、重要な場面の一つです。初演時には名歌手ジュリア・グリージによって歌われ、その後もプリマ・ドンナのレパートリーとして歌い継がれています。



おすすめディスク

【CD】
セラフィン指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
カラス(S) ステファノ(T) パネライ(Br) カッテラーニ(Ms)
(録音1953年、EMI Classics)
プリマ・ドンナの力によってオペラの成否が決まるベルカント・オペラの必聴盤には、やはりマリア・カラスのディスクが筆頭に挙げられます。往年の名歌手によって支えられた名演です。


【DVD】
ハイダー指揮、セルバン演出
リセウ大歌劇場管弦楽団、合唱団
グルベローヴァ(S) ブロス(T) アルバレス(Br) ピエロッティ(Ms)
(録画2001年、DENON)
歴史オペラにうれしいオーソドックスな舞台で、この役を長年歌ってきたグルベローヴァの実力が大いに発揮されています。


【DVD】
ピド指揮、サージ演出
マドリード王立歌劇場管弦楽団、合唱団
ダムラウ(S) カマレーナ(T) テジエ(Br) ストロッパ(Ms)
(録画2016年、Bel Air)
エルヴィーラを歌うダムラウの余裕のある歌唱は圧巻。カメラワークが巧みで、美しい場面が映し出されます。







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