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皇帝ティートの慈悲






オペラ・データ

【作曲】
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1791年)

【初演】
1791年9月6日 プラハ、国民劇場

【台本】
ピエトロ・メタスタージオの台本をカテリーノ・マッツォーラが改訂(イタリア語)

【演奏時間】
第1幕 60分
第2幕 70分  合計 約2時間10分



あらすじ

【時と場所】 
皇帝ティート(ティトゥス)の治世下(在位79-81)、ローマ

【登場人物】
ティート(T): 時のローマ皇帝
ヴィテッリア(S): 先々代のローマ皇帝の娘
セルヴィリア(S): セストの妹でアンニオの恋人
セスト(Ms): ローマの貴族でティートの友人
アンニオ(Ms): ローマの貴族
プブリオ(Bs): ティートの近衛長官
ほか

【第1幕】
時は紀元1世紀の皇帝ティートの治世下における、舞台はローマ。先々代ローマ皇帝の娘ヴィテッリアは、ティートの妃となり再び権力を握りたいと思っていました。しかし、ティートがユダヤの王女を妃に迎えるということを知って、いっそのこと皇帝暗殺を企てます。ヴィテッリアは自分のことを愛していたセストにこの暗殺を命じます。セストは皇帝の忠臣で、そして友人でしたが、彼女への愛に負け、暗殺を引き受けました。
このとき、ティートの結婚が中止になったので、暗殺計画も中止になります。しかしそれも束の間、ティートはセストの妹であるセルヴィリアと結婚すると発表しました。セルヴィリアはすでに、兄セストの友人であるアンニオと婚約することが決まっていたので困ります。セルヴィリアはティートに直接自分の気持ちを伝えました。ティートはその願いを聞くと快諾し、セルヴィリアとの結婚を取りやめます。
この経緯を知らないヴィテッリアは、セルヴィリアが妃に選ばれたと聞いたとき、再び暗殺計画を実行しようと、セストに暗殺を命令していました。
しかし、この後、ティートはヴィテッリアを妃とすることを発表したのです。ヴィテッリアは焦り暗殺を中止しようとしましたが、時すでに遅く、セストは皇帝の宮殿に火を放ち、宮殿は真っ赤に炎上したのでした。
 
【第2幕】
皇帝ティートは無事でした。暗殺は失敗に終わったのです。ヴィテッリアはセストにローマから逃げるように言いますが、セストは皇帝の近衛長官プブリオに逮捕されます。ティートは友人の裏切りに戸惑います。なぜ暗殺に至ったのか理由を聞こうとしますが、セストは答えずに自ら死を望みます。苦悩する皇帝ティート。しかし皇帝暗殺の罪は死罪にするほかありませんでした。
ヴィテッリアは、死を前にしても自分の名を口にしないセストに心を動かされます。そして、皇妃の夢を諦め、ティートに自らの罪を告白しました。
ティートは、友人を救えると思うと同時に、別の罪人が現れたことに悩みます。そこでティートは二人とも許すこととしました。人々はローマが寛大であることを知り、皇帝ティートの慈悲を讃えたのでした。



解説(ポイント)

【1】 モーツァルトの人気オペラの後に・・・
 
『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』の成功によって、これらのオペラを初演したプラハの国民劇場でモーツァルトは大人気となっていました。この頃、皇帝レオポルト2世が即位し、プラハで戴冠式を行うため、新作のオペラを上演することとなりました。最初に依頼を受けたのは、モーツァルトのライバルである〜映画『アマデウス』でおなじみの〜アントニオ・サリエリ。しかし、サリエリは多忙でこの依頼を断ったので、モーツァルトの出番となりました。
 
【2】 劇的な効果を生む台本
 
『皇帝ティートの慈悲』はメスタージオの台本で、他に何人もの作曲家が既にオペラ化していました。しかし、モーツァルトはこの台本に飽きたらず、詩人のマッツォーラに改訂を頼みます。モーツァルトはこの改訂の結果を気に入って、「本格的なオペラとなった」と言っています。こうして、オペラとして劇的な効果が期待できるようになりました。
 
【3】 最後のオペラ・セリア
 
このオペラの制作依頼は急な話でした。ちょうど同じ頃、モーツァルトは有名なオペラ『魔笛』を作曲中で、これを中断して『皇帝ティートの慈悲』の作曲に取りかかりました。そして、わずか18日間で書き上げたとも言われています。また、時間がなかったことから、レチタティーヴォ部分は弟子に書かせたそうです。しかし、作品自体の完成度は高く、18世紀に成立したオペラ・セリアと呼ばれる古代の伝説を題材にした正歌劇の潮流の最後を飾る作品として存在感を保っています。



おすすめディスク

【CD】
アーノンクール指揮
チューリヒ歌劇場管弦楽団、合唱団
ラングリッジ(T) ポップ(S) ツィーザク(S) マレイ(Ms) ジーグラー(Ms) ポルガル(Bs)
(録音1993年、TELDEC)
 
モーツァルトの生き生きとした音楽を、アーノンクールが独特の感性で再現しています。ポップやツィーザクなど女声陣の活躍が光り、このオペラの定盤としておすすめできます。


【CD】
ガーディナー指揮
イングリッシュ・バロック・ソロイツ、モンテヴェルディ合唱団
ロルフ・ジョンソン(T) ヴァラディ(S) マクネアー(S) フォン・オッター(Ms) ロビン(Ms) ハウプトマン(Bs)
(録音1990年、ARCHIV)
 
適材適所と言える歌手陣を、ガーディナーの流麗な指揮がまとめ上げました。ロルフ・ジョンソンのティート役は高貴であり、マクネアー、フォン・オッターなどの歌唱の巧さを味わうことができます。







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