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西部の娘

La Fanciulla del West





オペラ・データ

【作曲】
ジャコモ・プッチーニ (1908~1910年に作曲)

【初演】
1910年12月10日 ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場

【台本】
グエルフォ・チヴィニーニ、カルロ・ザンガリーニ(イタリア語)

【原作】
デイヴィッド・ベラスコの戯曲『黄金の西部の娘』

【演奏時間】
第1幕 60分
第2幕 45分
第3幕 25分  合計 約2時間10分



あらすじ

【時と場所】 
1849~50年、アメリカ・カリフォルニア州

【登場人物】
ミニー(S): 酒場の女主人
ディック・ジョンソン(T): 盗賊団の首領
ランス(Br): 保安官
ほか

【第1幕】
時は1849~50年のゴールドラッシュの時代、舞台はカリフォルニア州の山麓にある酒場。鉱夫たちから慕われている女主人のミニーに、保安官のランスは想いを寄せています。その酒場にディック・ジョンソンが訪れました。実は、彼は最近この辺りを荒らしている盗賊団の首領ラメレスでした。しかし、女手一つで酒場を切り盛りするミニーの魅力に引かれ、彼はすでに酒場から強盗する気を失っていました。ミニーもジョンソンとワルツを踊り、次第に彼に好意を抱いていきます。

【第2幕】
その夜、ミニーが家に帰ると、そこにジョンソンが訪れます。二人が口づけを交わしたその時、鉱夫たちが現れ、さっき酒場に来た男が盗賊ラメレスだったと伝えました。ミニーは怒り、ジョンソンを追い出しますが、そこで一発の銃声が鳴り響きます。扉の外で傷つき倒れていたジョンソンを見つけたミニーは、彼を再び家の中に運び入れ、屋根裏に隠しました。屋根裏からしたたる血で、保安官のランスは彼のことを発見しましたが、ミニーとの賭けで負け、その場から立ち去りました。

【第3幕】
しばらく経ったカリフォルニアの森。ラメレス、すなわちジョンソンが生け捕りにされ、ランスをはじめ男たちの前に引き立てられます。首に縄をかけられ、ジョンソンが処刑されようとしたところに、馬に乗ったミニーが駆けつけました。ミニーは銃を手にして、彼を解放しなければ自分も死ぬと言います。これまでミニーの世話になり、ミニーを慕ってきた鉱夫たちは抗えず、ジョンソンを釈放しました。ミニーとジョンソンは、カリフォルニアを後にして去っていったのでした。



解説(ポイント)

【1】 オペラの西部劇
 
プッチーニは自身のオペラで様々な「異国」を描いてきました。それは『ラ・ボエーム』のパリ、『蝶々夫人』の長崎、『トゥーランドット』の北京を思い浮かべれば十分でしょう。そして、『西部の娘』の舞台はカリフォルニアです。ゴールドラッシュを時代背景にしたいわゆる「西部劇」で、オペラ全体を見ても珍しい設定と言えます。プッチーニはメトロポリタン歌劇場のためにこのオペラを作曲し、その初演は大変な成功をおさめました。
 
【2】 アメリカ風プッチーニ
 
1907年にアメリカ・ニューヨークを訪れたプッチーニは、メトロポリタン歌劇場で上演された自作のオペラ鑑賞に加えて、ブロードウェイでいくつかの演劇を見ました。『蝶々夫人』の後、台本を探していたプッチーニは、『蝶々夫人』の原作者ベラスコの戯曲に関心を抱きました。それが『黄金の西部の娘』(The Girl of the Golden West)です。早速、アメリカン・インディアンなどの伝統的な民謡を採集して作曲に取りかかりました。途中、女中が自殺する有名な事件で中断を強いられましたが、1910年に完成させます。
 
【3】 プッチーニのアリア健在
 
他のプッチーニ作品と同様、ミニーという意思が強く、優しく、純粋な女性をタイトルロールとしています。ミニーは第1幕で子どもの頃を思い出して恋愛に憧れる「ソレダードで小さかった頃」"Laggiù nel Soledad, ero piccina"、同じく第1幕でジョンソンに向かって歌う「私は貧しく無知な娘です」"Io non son che una povera fanciulla"など、ミニーの純粋な一面が描かれます。そんなミニーに対して、自身の過去と愛の間に挟まれたジョンソンが第3幕で歌うアリア「やがて来る自由の日」"Ch'ella mi creda libero e lontano"では、ミニーへの愛が痛切に伝わってきます。



おすすめディスク

【CD】
スラットキン指揮
ミュンヘン放送管弦楽団、バイエルン放送合唱団
マルトン(S) オニール(T) フォンダリー(Br)
(録音1991年、BMG Japan)
アメリカの代表的指揮者レナード・スラットキンが初の全曲盤オペラに挑んだのがこのオペラ。歌手陣は国際的な布陣でまとまっています。


【DVD】
ウェルザー=メスト指揮、マレッリ演出
ウィーン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
シュテンメ(S) カウフマン(T) コニーチュニー(Br)
(録画2013年、SONY Classical)
何を演じても絵になるカウフマンのジョンソン役。その声質がマッチしています。全体をウェルザー=メストとウィーン・フィルが見事な演奏でまとめました。







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