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椿姫

La Traviata





オペラ・データ

【作曲】
ジュゼッペ・ヴェルディ(1853年)

【初演】
1853年3月6日 ヴェネツィア、フェニーチェ座
(1854年 ヴェネツィア、テアトロ・ガロで再演)

【台本】
フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ(イタリア語)

【原作】
アレクサンドル・デュマ・フィスの戯曲『椿姫』

【演奏時間】
第1幕 30分
第2幕 60分
第3幕 30分  合計 約2時間



あらすじ

【時と場所】 
18世紀初頭、パリ

【登場人物】
ヴィオレッタ(S): パリの高級娼婦
アルフレード(T): 田舎出の青年
ジョルジョ・ジェルモン(Br): アルフレードの父
ほか

【第1幕】
時は19世紀半ば、舞台はパリ。社交界一人気のある高級娼婦ヴィオレッタの館では華やかな宴が催されています。この宴にやって来た青年アルフレードは、「乾杯の歌」を歌って場を盛り上げます。彼は以前からヴィオレッタに恋をしていて、二人きりになると、彼女にその気持ちを告白しました。ヴィオレッタは、娼婦である自分は本当の恋愛などに縁はないと思っていましたが、アルフレードの純粋な愛の前にとまどうのでした。
 
【第2幕】
ヴィオレッタは社交界を離れ、パリ郊外の家でアルフレードと静かに、そして幸せに暮らしていました。ある日、アルフレードの留守中に、彼の父ジェルモンが訪ねてきます。ジェルモンは、ヴィオレッタの娼婦という過去が、娘(つまりアルフレードの妹)の縁談に差し障りとなるので、息子と別れるよう彼女に迫りました。ヴィオレッタは自分の真実の愛を必死で訴えますが、受け入れられず、悲しみの中で別れを決意。家を出ていきます。別れの置き手紙を読んだ何も知らないアルフレードは、彼女の裏切りに激怒したのでした。
その夜、ヴィオレッタはパリの社交界に戻り、かつてパトロンだった男爵に手を引かれて現れます。彼女を追ってきたアルフレードは、ヴィオレッタが男爵を愛していると苦しまぎれに言うのを聞いて逆上します。彼は社交界の大勢の人前で彼女をひどく侮辱して悲しませるのでした。
 
【第3幕】
数か月後、ヴィオレッタは自宅のベッドで横になっています。実は難病におかされていて、自分の最期が近づいていたことを彼女は知っていました。そして、今や死を目前にしています。そこへアルフレードが駆け込んできました。全ての事情を父から聞いた彼は、彼女に許しを請います。二人はまたいっしょに暮らすことを誓いますが、時はすでに遅く、ヴィオレッタは過ぎ去った幸せな日々を思い出しながら、息を引き取ったのでした。



解説(ポイント)

【1】 初演は大失敗
 
『椿姫』はオペラ史上、最も有名な作品と言っても過言ではないでしょう。しかし、この作品の初演は大失敗に終わっています。パリ社交界の高級娼婦が主人公という設定がイタリアの聴衆には馴染めず、さらに、ヒロインであるヴィオレッタ役の歌手があまりに太っていたというのが失敗の原因だったそうです。ヴェルディはこの失敗を受けて「時代が判断してくれる」と語っています。私たちの時代のこの作品の評価をヴェルディが知ったら、喜んでくれるに違いありません。
 
【2】 パリ社交界の華やかな舞台と、ヒロインの切ない運命
 
パリ社交界を舞台にしているだけあって、タキシードを着た男性と豪華なイブニングドレスを着た女性が「乾杯の歌」を歌う、という華やかな場面があります。そういうオペラらしいゴージャスさを味わうことができます。この華やかな場面とは逆に、このオペラのストーリーは、ヴィオレッタの切なく、悲しい運命を描いていて、泣けるドラマでもあります。特に第3幕のヴィオレッタのアリアを聴けば、まずその歌のすばらしさに心を動かされ、加えて、その歌の内容に涙してしまうことでしょう。
 
【3】 充実したヴェルディの音楽
 
このオペラは、ただ名前が有名なだけでなく、音楽、物語とも非常にレベルの高いものとなっており、そうでありながら親しみやすい、というようにオペラの決定版と言えます。一人の女性ヴィオレッタの運命を追いながら彼女の生き方を描き出し、さらに彼女を取り巻く登場人物の心理描写も精緻に描かれています。第2幕、ヴィオレッタに息子と別れるよう迫る父ジェルモン。ここでの二重唱は、充実したヴェルディの音楽に支えられて、数あるオペラの中でも名場面と評価されています。



おすすめディスク

【CD】
C.クライバー指揮
バイエルン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
コトルバス(S) ドミンゴ(T) ミルンズ(Br)
(録音1976年、Deutsche Grammophon)
 
伝説の名指揮者カルロス・クライバーのタクトによって、オペラ『椿姫』の華やかな音楽がはじけます。そして、ヴィオレッタの死が待つラストシーンに向かって、音楽の集中力が次第に高まっていき、聴いている者を引きつけるのです。ヴィオレッタを歌うコトルバスの歌唱も見事。


【DVD】
ドミンゴ指揮、ゼッフィレッリ演出
アルトゥール・トスカニーニ財団管弦楽団、合唱団
ボンファデッリ(S) パイパー(T) ブルゾン(Br)
(録画2002年、TDK CORE)
 
イタリアのブッセートにある作曲者ゆかりのジュゼッペ・ヴェルディ劇場における公演の映像。美貌と実力を兼ね備えたソプラノ、ボンファデッリがヴィオレッタを歌っています。映像なので、演技が観られるのもうれしい。父ジェルモンには、大ベテランのブルゾンという実力者を起用しています。演出ゼッフィレッリの舞台は美しく、歌手のドミンゴが指揮をしているのも興味深いところです。


【DVD】
リッツィ指揮、デッカー演出
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
ネトレプコ(S) ヴィラゾン(T) ハンプソン(Br)
(録画2005年、Deutsche Grammophon)
 
現代のプリマ・ドンナ、アンナ・ネトレプコが話題となった2005年のザルツブルク音楽祭のライブ。もちろん、ネトレプコはすばらしい出来ですが、オペラ全体としてもハイ・レベルな公演です。すでに『椿姫』を見たことがある人におすすめ。きっと新しい『椿姫』を体験できると思います。







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