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愛の妙薬






オペラ・データ

【作曲】
ガエターノ・ドニゼッティ(1832年)

【初演】
1832年5月12日 ミラノ、カノッビアーナ劇場

【台本】
フェリーチェ・ロマーニ(イタリア語)

【原作】
オーベールの歌劇『媚薬』におけるユジューヌ・スクリーブの台本

【演奏時間】
第1幕 65分
第2幕 55分  合計 約2時間



あらすじ

【時と場所】 
19世紀、スペインのバスク地方の村

【登場人物】
アディーナ(S): 地主の娘
ネモリーノ(T): 村の若い農夫
ベルコーレ(Br): 村の守備隊の軍曹
ドゥルカマーラ(Bs): いかさま薬売り
ほか

【第1幕】
時は19世紀、舞台はスペイン、バスク地方の小さな村。美しいけどちょっと高飛車な村娘アディーナは、『トリスタンとイゾルデ』の物語を村人たちに読んで聞かせています。トリスタンの飲んだ惚れ薬によって恋に落ちたイゾルデ姫。そんな薬が本当にあったらいいなと陰からそっと聞いていたのは、アディーナに恋していた純真無垢な若い農夫ネモリーノでした。
そこへ村の守備隊の軍曹ベルコーレが現れます。見るからに頼もしいベルコーレはアディーナを口説こうとしますが、アディーナは惹かれつつもここはかわしておきます。その様子を見て焦ったネモリーノもアディーナに勇気を出して告白しますが、相手にされません。しかし彼女は内心では、純粋な心を持つネモリーノを気にかけていました。
村の広場には、金色の馬車に乗った薬売りのドゥルカマーラが到着しました。万病の特効薬を売るドゥルカマーラに、農夫ネモリーノは、あのイゾルデ姫が飲んだ「愛の妙薬」はないかと尋ねます。いかさま薬売りのドゥルカマーラは安物のボルドーワインのラベルを貼り替えて売りつけ、明日になれば効き目が現れると言います。その間にドロンしてしまおうというわけです。
これで「明日にはアディーナは自分のものになる」という態度をとったネモリーノは、彼女のプライドを傷つけ、彼女はベルコーレ軍曹と結婚すると言い出します。しかも、今日中ということになり、ネモリーノは大いに慌てたのでした。
 
【第2幕】
ネモリーノは愛の妙薬の効き目をはやく出すため、もう1本飲もうと思いますが、お金がなくて買えないため、命の保証も顧みず軍隊に入って、契約金を手に入れます。
実はちょうどそのとき、村の娘たちの間では、ネモリーノの叔父さんが亡くなって莫大な遺産が彼に転がり込んだという話で持ちきりになっていました。ネモリーノの周りに集まる娘たちに、何も知らない彼は薬の効き目が現れてきたと勘違いします。
一方のアディーナはそんなおかしな光景を見せられ困惑しますが、ドゥルカマーラからネモリーノにまつわる一連の事情を聞きます。命を投げ出す覚悟で軍隊に入ってまで、妙薬を手に入れようとしたネモリーノの愛情の深さに、彼女は涙を見せるのでした。
アディーナの涙にネモリーノも気が付きます。アディーナがネモリーノの入隊契約書を買い戻し、二人は結ばれました。ベルコーレ軍曹は、女は他にもたくさんいると言って気にしません。結局、「愛の妙薬」の効き目はありました。薬売りドゥルカマーラは村人に見送られて馬車を出発させたのでした。



解説(ポイント)

【1】 ドニゼッティの人気オペラ
 
ドニゼッティはその生涯で70にも及ぶオペラを作曲しました。その中でも、きらりと光る名作として人気が高いのが、この『愛の妙薬』です。初演されたミラノのカノッビアーナ劇場の劇場主の依頼で作曲を引き受けたドニゼッティは、このオペラをわずか2週間で完成させたと言われています。ドニゼッティの筆の速さは有名で、職人芸の域に達していました。初演も大成功で、1か月連続で上演されています。
 
【2】 哀愁漂うオペラ・ブッファ
 
物語は「愛の妙薬」をめぐるたわいもないコメディーとなっていますが、オペラの中では時折、実に哀愁漂う音楽が耳に入ります。喜劇の中に、ふと心にしみる音楽が混ざっているという不思議な雰囲気がとても魅力的です。アディーナも単純に高飛車な地主の娘ではなく、内心はネモリーノに心を寄せ、ネモリーノもただの野暮な男ではなく、純粋さから引き出された熱い心を持っています。こうした二面性を楽しめるオペラです。
 
【3】 アリア「人知れぬ涙」
 
やはり何と言ってもネモリーノが第2幕で歌うアリア「人知れぬ涙」が最大の聴きどころです。テノールのアリアの中でも指折りの名曲として、オペラ・ファンに親しまれているこの曲をお目当てに、『愛の妙薬』を観たいと思う人も多いのではないでしょうか。このアリアのほかにも、名アリア、名二重唱が目白押しなので見逃しませんように!



おすすめディスク

【CD、DVD】
ピド指揮、ダンロップ演出
リヨン歌劇場管弦楽団、合唱団
ゲオルギュー(S) アラーニャ(T) スカルトリティ(Br) アライモ(Bs)
(録音1996年、LONDON)
 
田園ふうの背景がいかにも『愛の妙薬』の舞台らしく、このオペラのスタンダードとして一度は見ておきたいディスクです。ゲオルギュー・アラーニャ夫妻の息ももちろんぴったり。CDではアリア「人知れぬ涙」に、低く移調した版を使っています。いつもとは違う味で楽しめます。


【DVD】
オルミ指揮、デ・アナ演出
東京フィルハーモニー交響楽団、藤原歌劇団合唱部
ルキアネッツ(S) サッバティーニ(T) ヴェッチャ(Br) デ・カロリス(Br)
(録音2002年、LA VOCE)
 
奇才ウーゴ・デ・アナが演出したこのディスクは19世紀末のフランスを舞台として、ネモリーノをあの画家ゴッホに見立て、売れない画家として描いています。ネモリーノが繊細な芸術家として見事に読み替えられ、サッバティーニが歌い上げます。アディーナ役のルキアネッツ、ドゥルカマーラ役のデ・カロリスもよい出来。おすすめの一枚。







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