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ホフマン物語






オペラ・データ

【作曲】
ジャック・オッフェンバック(1877〜80年)

【初演】
1881年2月10日 パリ、オペラ・コミック座

【台本】
ジュール・バルビエ、ミシェル・カレ(フランス語)

【原作】
E.T.A.ホフマンの小説『砂男』『顧問官クレスペル』『失われた鏡像の物語』

【演奏時間】
第1幕 35分
第2幕 40分
第3幕 50分
第4幕 40分
第5幕 15分  合計 約3時間



あらすじ

【時と場所】 
19世紀、ドイツのニュルンベルク

【登場人物】
ホフマン(T): 詩人
ニクラウス/ミューズ(Ms): ホフマンの親友/芸術の精
リンドルフ(Br): 上院議員
ステッラ(S): プリマドンナ
オランピア(S): 機械人形
コッペリウス(Br): 人形作り師
アントニア(S): 病弱な歌手
ミラクル博士(Br): 医師
ジュリエッタ(S): 高級娼婦
ダペルトゥット(Br): 魔術師
ほか

【プロローグ】
時は19世紀、舞台はニュルンベルクの歌劇場の近くの酒場。詩人ホフマンは、『ドン・ジョヴァンニ』に出演中のソプラノ歌手ステッラを待っています。ステッラは「オペラが終わるまで待ってて」という手紙を届けようとしましたが、途中でその手紙はステッラに横恋慕している上院議員リンドルフに奪われました。ステッラを待ちくたびれたホフマンは親友ニクラウスとお酒を飲みながら、周りにいた学生たちに過去の失恋話を語り始めました。
 
【第1幕】オランピア
一人目の恋人はローマの科学者の娘オランピア。娘と言っても、実は機械仕掛けの人形でした。ホフマンは、人形作り師コッペリウスに売りつけられた不思議なメガネで見ていたので人形だとはつゆ知らず、恋に落ちてしまいます。ところがコッペリウスは、科学者が人形オランピアの代金を払わないことに怒って、人形を壊してしまいました。
 
【第2幕】アントニア
二人目の恋人は病弱な歌手アントニア。アントニアの父親は、歌手だった彼女の母親と同じく死んでしまうと心配して、歌うことを禁止にしていました。そんなアントニアに恋するホフマン。そこへ邪悪な医師ミラクル博士がやってきてアントニアに歌を歌うように勧めます。歌い続けたアントニアは、力尽きてしまいました。
 
【第3幕】ジュリエッタ
三人目の恋人はヴェネツィアの高級娼婦ジュリエッタ。魔術師ダペルトゥットは、ジュリエッタにダイヤモンドを渡して、ホフマンを誘惑してその「影」を手に入れるように依頼します。ジュリエッタはホフマンに近づき、見事にホフマンの影を手に入れます。そして、ジュリエッタはホフマンを棄てて、去っていきました。
 
【エピローグ】
ホフマンはこれらの悲しい失恋話を語り終えると、酔い潰れてしまいます。そこへ恋人のソプラノ歌手ステッラがやってきますが、上院議員リンドルフがホフマンの酔い潰れた姿を見せ、彼女の手を取って首尾よく連れ去ります。
ホフマンの親友ニクラウスは、実は芸術の精ミューズの化身でした。酔い潰れたホフマンにミューズは「詩人としてよみがえりなさい。人は恋によって大きくなり、涙によってさらに大きくなるのです」と語りかけたのでした。



解説(ポイント)

【1】 オペレッタの開祖が執念を燃やしたオペラ
 
オッフェンバックはオペレッタ(オペラより少し軽く、より親しみやすい「喜歌劇」)の開祖です。書き上げたオペレッタはなんと111作品。オペレッタという分野は「流行」に敏感で、作品は当たったり外れたりします。そうこうしているうちにこれだけの数を量産してしまいました。そんなオッフェンバックも晩年になって、オペラの傑作を後世に残したいと思います。それだけの実力を自分は持っているんだ、と意気込んで作曲に臨んだのがこの『ホフマン物語』でした。
 
【2】 様々な演出の可能性
 
ところが、オペラを完成させないうちにオッフェンバックは痛風によって健康を害し亡くなってしまいました。オーケストレーションやレチタティーヴォの部分は友人の作曲家エルネスト・ギローが補筆させて完成させました。しかし、上演を行った劇場が2度も火災に見舞われたりと楽譜が散逸してしまい、未だ決定稿が確定しないままになっています。研究家の間でも「決定稿は存在しない」という点では一致しているそうです。いろいろなバージョンが存在し、公演ごとに考えられた『ホフマン物語』が上演されます。オッフェンバックの夢は、私たちの前に変幻自在に現れるのです。
 
【3】 あなたの知らない世界
 
オペラの作曲が未完であるだけでなく、作品そのものも不思議な世界観で構築されています。まったく異なった3つのオムニバス・ドラマ。あなたはどの物語が好きですか。1つのオペラで3つ分のオペラを楽しむことができます。そして、そのどれもが不思議な恋の物語です。もちろん音楽についても、有名な「ホフマンの舟歌」や、ホフマンの歌う「クラインザックの歌」があり、そして機械人形そのもののようなオランピアのアリアは、コロラトゥーラ・ソプラノの最大の見せ場となっています。



おすすめディスク

【CD】
小澤征爾指揮
フランス国立管弦楽団、フランス放送合唱団
ドミンゴ(T) エーダー(Ms)グルベローヴァ(S) シュミット(Br) バキエ(Br) モリス(Br) ディアス(Br)
(録音1989年、Deutsche Grammophon)
 
ヒロイン3役をグルベローヴァひとりで歌いきり、プリマドンナとして面目躍如たる活躍。自由自在な声に驚かされます。対する敵役四役も強者ぞろい。ドミンゴの歌唱とともに小澤の指揮もまとまりがあり、バランスのとれたディスクです。

【CD】
ナガノ指揮
リヨン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
アラーニャ(T) デュボス(S)ファン・ダム(Br) デッセイ(S) ヴァドゥーヴァ(S) ジョー(S) モリス(Br)
(録音1996年、ERATO)
 
このオペラは、いろいろな性格のソプラノを一夜で堪能できるという贅沢な趣向もうれしいところ。このディスクにもそれぞれ適材適所の歌手が配置されています。ナガノのシャープな指揮の下、主役アラーニャも冴えています。







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