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ティレジアスの乳房

Les mamelles de Tirésias





オペラ・データ

【作曲】
フランシス・プーランク 1944年に作曲

【初演】
1947年6月3日 パリ、コミック座

【台本】
作曲家自身(フランス語)

【原作】
ギョーム・アポリネールの戯曲『ティレジアスの乳房』

【演奏時間】
第1幕 35分
第2幕 25分  合計 約1時間



あらすじ

【時と場所】 
20世紀初頭、架空の都市ザンジバール

【登場人物】
テレーズ(S) 
亭主(T): テレーズの夫 
憲兵(Br)  
新聞記者(T) 
座長(Br) 
ほか

【第1幕】 
座長がプロローグで、この劇のテーマが「家庭における子どもの存在」であり、フランス国民に子作りに励むよう客席に向かって叫ぶと幕が開きます。
時は20世紀初頭、舞台は南仏の架空の都市ザンジバール。子どもを産んで、料理を作るだけの生活に嫌気がさした若く美しいテレーズは、自身がフェミニストであると宣言し、兵士となって戦い、その後はアーティスト、弁護士、代議士・・・になると言います。すると、彼女の胸から赤色と青色の乳房が風船のように飛び出しました。テレーズはそれにライターで火をつけて割ってしまうと、今度は髭が生えてきて喜びます。テレーズは亭主に、男になったと伝え、ティレジアスという男性名を使うことを表明しました。逆に亭主が主婦になりました。次に登場したのは憲兵。この憲兵は、女装した亭主にひと目惚れし、彼に結婚を申し込みます。あきれた亭主は、憲兵とザンジバールの市民に向かって、子どもを増やす重要性を問いかけ、「私は一人で子どもを作る」と宣言しました。しかし、そこにいた市民は、全く聞く耳を持ちません。

【第2幕】 
亭主はたった1日で、4万49人の子どもを作りました。新聞記者に、どうやって子どもを養っていくのかと問われます。亭主は、小説家や芸人となった子どもたちが儲けていることを伝え、子どもが多ければ多いほど豊かになると説きます。そこに怪しい女占い師が現れ、市民に対し、子作りに励むよう勧めます。憲兵は、占いは違法な行為だと言って、逮捕しようとします。しかし、この女占い師がヴェールを外すと、イブニングドレス姿のテレーズが立っていました。妻が帰ってきて喜んだ亭主も急にタキシード姿となり、二人で子作りを讃美します。続いて舞台の全員が、フランス国民に子作りに励むよう唱和して幕となります。



解説(ポイント)

【1】 フランス歌曲の名手プーランクのオペラ
 
プーランクの作風は、お堅いクラシック音楽からは離れており、作曲家として駆け出しの頃から、楽しみに満ちたサロン風でエレガントな音楽を好んでいました。また、フォーレやドビュッシーとともにフランス歌曲の分野で多くの傑作を生み出しており、その流れから例えばいずれも美しいソプラノ・ソロを伴う『スターバト・マーテル』や『グローリア』などの優れた声楽曲を作曲しました。そんな「声」を扱う作曲家プーランクが創作した初めてのオペラがこの『ティレジアスの乳房』です。
 
【2】 子作りに励みなさい
 
原作のアポリネールの戯曲のテーマは、少子化です。現代にも通じるテーマ設定のようですが、当時のフランスの社会問題を大まじめに取り上げています。原作では、東アフリカのザンジバールを舞台にしていましたが、プーランクは原作者の未亡人に許可を得て、これを南フランスのニースとモンテカルロの間にある架空の都市ザンジバールとしました。最初にプロローグで座長が、このテーマは「家庭における子どもの存在」であることを宣言します。そして魅惑的な音楽とともに、世にも奇妙なオペラに引き込んでいくのです。
 
【3】 シュールな世界を描くプーランクの音楽
 
妻が男となり、亭主が女となる。しかし、オペラでは、そういえばそういうシチュエーションは多く見られました。とはいえ、亭主が4万人もの子どもを作ることはありませんでした。なんともシュールな世界が描かれるこのオペラは、プーランクの粋な音楽で満たされ、楽しく聴くことができます。



おすすめディスク

【CD】
小澤征爾指揮
サイトウ・キネン・オーケストラ
ボニー(S) フシェクール(cT) ホルツマイアー(Br) ギーツ(T) ラフォン(Br)
(録音1996年、DECCA)
多くないディスクの中で、名盤があります。指揮、オケ、歌手、すべて揃った理想的な出来です。







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