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マクベス






オペラ・データ

【作曲】
ジュゼッペ・ヴェルディ(1846〜47年)

【初演】
1847年3月14日 フィレンツェ、ペルゴラ劇場
(改訂版1865年4月21日 パリ、リリック劇場)

【台本】
フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ、アンドレア・マッフェイ(イタリア語)

【原作】
ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『マクベス』

【演奏時間】
第1幕 45分
第2幕 30分
第3幕 30分
第4幕 35分  合計 約2時間20分



あらすじ

【時と場所】 
11世紀中頃、スコットランド

【登場人物】
マクベス(Br): ダンカン王に仕える将軍
マクベス夫人(S): マクベスの妻
バンクォー(Bs): マクベスの同僚の将軍
マクダフ(T): スコットランドの貴族
マルコム(T): ダンカン王の息子
ほか

【第1幕】
時は1040年、舞台はスコットランド。スコットランド王のダンカンに仕えるマクベスとバンクォーは、嵐の荒野で魔女たちの一群に出会いました。魔女たちはマクベスに「コーダの領主となり、さらにはスコットランドの王となるだろう」と予言します。そしてバンクォーには「お前の子供は王となるだろう」と予言しました。このとき兵士がやってきて、コーダ領主が死去し、王がマクベスをその後任としたことを伝えます。予言の正しさが証明されたのです。
この予言のことをマクベスからの手紙で知ったマクベス夫人は、夫を王座に就かせようと野心を募らせます。ちょうどその夜、ダンカン王がマクベスの城に宿泊することになっていました。夫人はマクベスの背中を押し、マクベスはついに王の寝室に忍び入り、短剣で刺しました。夫人は、うろたえるマクベスが握っていた短剣を奪い、寝室に置きに行きます。マクベス夫人も自らの手を王の血で汚してしまいました。
 
【第2幕】
王の息子マルコムが隣国イングランドに向かったため、王殺害の疑いをかけられました。スコットランド王の座はマクベスに転がり込んできたのです。しかしマクベスは、魔女がバンクォーに与えた予言が気になります。そこで、バンクォーとその息子をも殺害するに至りました。しかし息子だけは逃れることに成功したのでした。
一方、城ではスコットランドの貴族たちが集まり、マクベスの国王就任の祝宴が催されていました。ここでマクベスはバンクォーの亡霊を見て狼狽し、取り乱します。その姿を見て、スコットランドの貴族の一人マクダフは亡命を決意しました。
 
【第3幕】
不安だったマクベスは、魔女たちにさらなる予言を聞きに行きます。魔女は「マクダフに用心すること」「女から生まれた者でお前にかなうものはいない」「バーナムの森が動いて向かってこない限り負けない」と語りました。マクベス夫妻はまず貴族マクダフの妻子を皆殺しにします。
 
【第4幕】
しかし、マクベス夫妻の運命はすでに決まっていました。マクベス夫人は、自らの手についた王の血が消えないことに怯え、精神を病んで狂死します。
マクベスによって国を追われた者たちが、王の息子マルコムや貴族マクダフを中心にスコットランドに攻め込んできました。彼らは森に潜み、木の枝を身につけ進軍してきたのです。それはあたかも森が動くかのようでした。マクベスは「女から生まれた者には負けない」と言って戦いましたが、貴族マクダフは「私は母親の腹を割いて取り出されたのだ(帝王切開のこと)」と答え、マクベスを討ち取ったのでした。



解説(ポイント)

【1】 ヴェルディのシェイクスピア第1作
 
オペラ『マクベス』は、シェイクスピアの戯曲をもとにヴェルディが作曲した最初の作品です。この後、シェイクスピアの原作によるヴェルディのオペラには、後期の『オテロ』『ファルスタッフ』があります。ヴェルディは、シェイクスピアを愛読していたようで、イタリア語による全集を枕元に置いていました。『ナブッコ』の成功により、オペラ作曲家として忙しい日々を送っていたヴェルディは、体調不良で倒れ、温泉療養に出掛けます。そこでじっくりと向き合ったのが、この『マクベス』の作曲でした。魔女の予言に踊らされるマクベス夫妻の生々しい感情を表現したこの異色作は大成功を収め、初演で38回も作曲者が舞台に呼び出されたそうです。
 
【2】 うろたえるマクベス
 
マクベスは実在する人物で、スコットランド王のダンカン王を殺し、自らが王座に就いたのも事実です。実在のマクベスは1041年から1057年までの17年間、スコットランドの王位にあり、優れた統治を行っていたそうです。オペラでのマクベスは、極めて弱い人間であり、魔女の予言に一喜一憂し、王やバンクォーを殺害したことに対し、狼狽し続けます。オペラのマクベスの方が、人間的かもしれません。そう思わせるのが、シェイクスピア=ヴェルディのすごいところです。
 
【3】 異様な世界観とマクベス
 
このオペラの特異な点として、その異様な世界観が挙げられます。もともとスコットランドには、魔女やら亡霊やらの話の類は結構あるそうです。ヴェルディは舞台を極度に暗くすることを要求しています。また、オペラに付き物の恋愛話からは無縁で、いつもヒーローを演じるテノールも主役ではありません。初演された劇場に優秀なテノールがいなかったそうですが、タイトルロールのマクベスがバリトンであることは、マクベスの独白をより表現豊かにし、このオペラをより深いものとしています。マクベスには有名なアリア「哀れみと、誉れと、愛と」があります。



おすすめディスク

【CD】
アバド指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
カップッチッリ(Br) ヴァーレット(S) ギャウロフ(Bs) ドミンゴ(T) サヴァスターノ(T)
(録音1976年、Deutsche Grammophon)
 
指揮者のアバドは、『マクベス』をヴェルディの全作品の中でもとりわけ重要で魅惑にみちたオペラだと評しています。この録音では、タイトルロールをカップッチッリが充実した歌唱を見せており、聴きごたえがあります。


【DVD】
ヴェルザー=メスト指揮、パウントニー演出
チューリヒ歌劇場管弦楽団、合唱団
ハンプソン(Br) マッローク(S) スカンディウッツィ(Bs) リマ(T) クリストフ(T)
(録音2001年、TDK CORE)
 
最近のハンプソンはヴェルディの諸役も確実に歌い見事です。マクベス夫人役のマッロークも十分な表現力を見せていますし、バンクォー役のスカンディウッツィもいい声を聴かせます。パウントニーの演出も斬新でありながら納得のいく仕上がり。全てが揃った名盤です。







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