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蝶々夫人






オペラ・データ

【作曲】
ジャコモ・プッチーニ(1904年)

【初演】
ミラノ、ミラノ・スカラ座
(改訂版は同年、ブレッシャ、テアトロ・グランデ)

【台本】
イッリカ、ジャコーザ(イタリア語)

【原作】
ロングの小説『蝶々夫人』に基づくベラスコの戯曲

【演奏時間】
第1幕     50分
第2幕第1場 50分
第2幕第2場 40分  合計 約2時間20分



あらすじ

【時と場所】 
1890年代、長崎

【登場人物】
蝶々夫人(S): 15才の芸者
ピンカートン(T): アメリカ海軍士官
シャープレス(Br): 駐日アメリカ総領事
スズキ(Ms): 蝶々の女中
ゴロー(T): 結婚仲介人
ボンゾ(Bs): 蝶々の叔父で僧侶
ケート(S): ピンカートンの母国の妻
ほか

【第1幕】
時は1890年代、舞台は長崎の港を見下ろす丘に立つ家。アメリカ海軍士官のピンカートンは、結婚仲介人ゴローの斡旋によって、現地妻として蝶々さんと結婚します。アメリカ総領事シャープレスが、ピンカートンの行為は軽率だと忠告しましたが、彼は聞く耳を持ちません。
 
蝶々さんは武士の家に生まれましたが、父が切腹するなど没落して芸者となっていました。このとき15才。結婚を心から喜んでいて、キリスト教に改宗までしました。しかし、その改宗に怒った叔父の僧侶ボンゾが、結婚式に怒鳴り込み、他の親戚もあきれて帰ってしまいます。悲しむ蝶々さんでしたが、ピンカートンが彼女をなぐさめ、二人は初夜を過ごしたのでした。
 
【第2幕】
結婚生活も束の間、ピンカートンがアメリカに帰ってしまって3年が経ちました。彼の帰りをひたすら待つ蝶々さん。ある日、総領事シャープレスがピンカートンの手紙を持って現れます。シャープレスはその手紙を蝶々さんに読んで聞かせようとしますが、ピンカートンの帰りを信じる蝶々さんを前に最後まで読むことができません。逆に、二人の間にできた3才の子を見せられ、ますます真実を話せなくなりました。シャープレスが帰ったあと、蝶々さんは長崎の港にピンカートンの所属する軍艦が入港したのを確認します。そして喜んで彼の帰りを待つのでした。
 
結局、一晩中寝ずに待っていましたが、彼は帰って来ません。朝、蝶々さんが子供と寝室で休んでいると、ピンカートンとその妻ケートが訪ねてきます。女中のスズキから蝶々さんの思いを聞いたピンカートンは深く反省し、耐えられずそこから立ち去りました。直後に蝶々さんが起きてきて、アメリカ人女性の姿を見たとき、彼女はすべてを悟ります。子供を預かるというケートの申し出に、蝶々さんは彼が迎えに来るなら渡すと言いました。
そして、ピンカートンが駆けつけたときには、すでに彼女は父の形見の短刀で自害していたのでした。



解説(ポイント)

【1】 長崎を舞台にしたオペラ
 
プッチーニは、世界のいろいろな都市を舞台としたオペラを書きました。例えば、『ラ・ボエーム』はパリ、『トスカ』はローマ、『トゥーランドット』は北京といった具合です。『蝶々夫人』は九州の長崎を舞台としたオペラ。世界中のオペラ作品の中でも、上演回数も多いこのオペラが、日本を舞台としているのはうれしいですよね。ただし、おかしな演出によって誤解されるのも困りものですが・・・。もちろん、日本でもとても人気のあるオペラの一つです。
 
【2】 日本色あふれる音楽
 
プッチーニはこのオペラの原作の戯曲をロンドンで観ました。このとき彼は戯曲の悲劇性に加え、蝶々さんの純粋な心に強く魅力を感じたそうです。このオペラの音楽を聴いていると、私たち日本人は、ヨーロッパの音楽とは何か違う懐かしい雰囲気を感じます。それもそのはず、プッチーニがオペラの中に日本の旋律を随所に取り込んだからです。例えば、「さくらさくら」や「君が代」などの旋律が隠されています。
 
【3】 蝶々さんのアリア「ある晴れた日に」
 
オペラのアリアで一番人気といったら、この「ある晴れた日に」かもしれません。第2幕の冒頭で、ピンカートンのことを想ってひたすら待つ蝶々さんが、「ある晴れた日に彼の乗った船がやってくる」と歌うこのアリアを聴くと、蝶々さんの切ない思いが痛烈に感じられるのです。耳慣れた旋律も、オペラ全体のストーリーを知っておくと、オペラ歌手のリサイタルなどでアリアを抜粋で聴いたときに、違った聴き方ができるのではないでしょうか。



おすすめディスク

【CD】
シノーポリ指揮
フィルハーモニア管弦楽団、アンブロジアン・オペラ・コーラス
フレーニ(S) カレーラス(T) ポンス(Br) ベルガンサ(Ms)
(録音1987年、Deutsche Grammophon)
 
タイトルロールの蝶々さんは、できれば日本人の歌手で聴きたいと思ってしまうのですが、その点を除いて数あるCDから選べば、このフレーニの歌唱が実にうまい。嫌われ役のピンカートンを歌うカレーラスは、彼の誠実な歌いぶりからこの役が少し合わないかもしれませんが、声は理想的です。ポンスのシャープレスも貫禄あり。


【CD】
パターネ指揮
ミュンヘン放送管弦楽団、バイエルン放送合唱団
キアーラ(S) キング(T) プライ(Br)
(録音1972年、BMG)
 
ピンカートンをキング、シャープレスをプライと、男声陣をドイツ系の歌手で固めています。たまにはこんな珍しい盤もいいかもしれません。キングは張りのある声を聴かせ、プライは柔らかな美声を披露しています。パターネの指揮はサクサク進みます。


【DVD】
オーレン指揮、ゼッフィレッリ演出
ヴェローナ野外劇場管弦楽団、合唱団
チェドリンス(S) ジョルダーニ(T) ポンス(Br)
(録画2004年、DENON)
 
ゼッフィレッリの演出で、衣裳デザインがワダ・エミという点で、視覚的に魅力的な舞台となっています。歌手も揃っていておすすめですが、蝶々さん役のチェドリンスについては、見る人によって好き嫌いが出そうです。







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