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パルジファル






オペラ・データ

【作曲】
リヒャルト・ワーグナー(1877〜82年)

【初演】
1882年7月26日 バイロイト、祝祭劇場

【台本】
作曲者ワーグナー自身による(ドイツ語)

【原作】
クレティアン・ド・トロワ『ペルシヴァル・ル・ガロワ:聖杯の物語』、ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ『パルジファル』、作者不明『マビノギオン』ほかの伝説

【演奏時間】
第1幕 120分
第2幕 70分
第3幕 80分  合計 約4時間30分



あらすじ

【時と場所】 
中世、スペインのモンサルヴァート城

【登場人物】
パルジファル(T): 純粋無垢の青年
クンドリー(S): 聖杯の騎士に仕える女性
アムフォルタス(Br): モンサルヴァート城の城主
クリングゾル(Bs): 聖槍を奪った魔導士
グルネマンツ(Bs): 老騎士
ティトゥレル(Bs): アムフォルタスの父
ほか

【第1幕】
時は中世、舞台はスペインのモンサルヴァート城。この城はキリストが十字架に架けられたとき、脇腹を突いた槍とその血を受けた杯……つまり聖槍と聖杯が奉納されていて、城主のティトゥレルと騎士たちによって守護されてきました。今では老いてしまった騎士グルネマンツが、城の近くの森の中で配下の小姓たちにこれまでの経緯を物語ります。
不思議な女性クンドリーは森で寝ていたところをティトゥレルに拾われ、騎士たちに仕えていました。彼女はかつてキリストに嘲笑を浴びせたことがあり、決して死ぬことを許されず時空を彷徨っていた呪われた女性でした。
あるとき、騎士団の一員になろうと邪悪な心を持つクリングゾルが城を訪ねてきます。その魂胆を城主ティトゥレルに見破られ入団を拒否されたクリングゾルは、城の側に魔法の花園をつくり、美女たちに騎士たちを誘惑させ次々と凋落していったのでした。
やがて城主の座は息子のアムフォルタスに引き継がれましたが、事態を重く見たアムフォルタスは、聖槍を携え、クリングゾルを討ちに行きます。しかし、魔法をかけられたクンドリーに誘惑され、聖槍を奪われ、そしてその槍で自らの脇腹に傷を負ってしまったのです。その傷跡は決して治癒することなく、アムフォルタスを今に至るまで苦しめ続けています。彼を救うことができるのは「聖なる愚者」だけだと予言されていました。
……と、ここまで老騎士グルネマンツが物語ったとき、森の中で何物かが白鳥を射落とします。その若者は自らの名前も、生い立ちも知らなかったのですが、不思議なことにクンドリーが彼の母が亡くなったことを告げると、彼は驚きます。老騎士グルネマンツは、純粋無垢な彼が聖なる愚者なのではないかと考え、城に連れて帰りますが、何も起こらなかったのでした。
 
【第2幕】
しかし、その後、この純粋無垢な青年は、聖槍を奪った魔導士クリングゾルの城に向かいました。クリングゾルはまたもやクンドリーに魔法をかけ、この青年を誘惑させます。青年抵抗しますが、クンドリーは彼の名「パルジファル」を叫び、彼にくちづけを与えました。そのとき、青年、つまりパルジファルの脳裏にはアムフォルタスの幻影が浮かび上がり、彼は決然とクンドリーを退けたのでした。
これを見た魔導士クリングゾルはパルジファルの命を奪おうと、聖槍を投げつけます。しかし、なんと聖槍はパルジファルの頭上でぴたりと静止したのです。パルジファルがその聖槍をつかみ十字を切ると、魔導士クリングゾルの城は崩れ落ちたのでした。
 
【第3幕】
時は経て、モンサルヴァート城の前城主ティトゥレルが亡くなると、その葬儀のため、息子のアムフォルタスは聖杯を開帳する役目となります。しかし彼は脇腹のその傷の苦しみに耐えきれず、配下の者たちに自分を殺せと命じます。
そのときパルジファルが聖槍を持って現れました。聖槍をアムフォルタスの傷口に当てると見事に快癒します。そして、パルジファルが聖槍を掲げ、聖杯に黙祷を捧げると、一羽の鳩が彼の頭上に舞い降りました。その光景を見ていたクンドリーはその場で息絶え、救済されたのでした。



解説(ポイント)

【1】 ワーグナー最後の作品
 
ワーグナーはその生涯のうちに、習作を除いて『さまよえるオランダ人』から計10作のオペラを残しています。10作といっても、そのどれもが傑作であり、それがもしそのうちの一つだけしか作曲していなかったとしても、後世に名を残す作曲家となったではないでしょうか。ワーグナーの最後の作品がこの『パルジファル』です。このオペラは、古今東西、他のオペラに比べて極めて難解な作品ですが、同時に素晴らしい作品でもあります。もし、クラシック音楽に興味があって、オペラに魅せられ、ワーグナーにまで辿り着いたのなら、絶対にこの『パルジファル』を聞き逃してはいけません。ワーグナー最後の作品という期待を裏切ることはないでしょう。
 
【2】 舞台神聖祝典劇
 
さて、オペラという名称ではなく楽劇という概念を打ち立てたワーグナーでしたが、この『パルジファル』という作品は「舞台神聖祝典劇」と銘打っています。オペラというよりもオラトリオ、いや、それはあたかも一つの絶対音楽のようなものだと位置づけたくなります。ワーグナーはバイロイトに建設した祝祭劇場の蓋付きのオーケストラ・ピットに寄せて、「目に見えない劇場を考案したいものだ。それに耳に聞こえないオーケストラも」と述べていたそうです。
 
【3】 神聖にして近寄りがたい音楽
 
台本としては、純粋無垢の青年パルジファルが魔導士クリングゾルに奪われた聖槍を取り返すというだけの話ですが、その登場人物はそれぞれ複雑な背景を持っていて、それらが物語られます。音楽面では、前奏曲の中にすでに「聖餐の動機」「聖杯の動機」「信仰の動機」など、極めて重要なライト・モティーフが現れ、オペラの核心に触れることができます。その音楽は神聖にして近寄りがたいものかもしれませんが、じっくりと耳を傾けるうちに、このワーグナーのサウンドから逃れることができなくなるでしょう。まずは前奏曲からじっくりと聴いてみてください。ちなみにドビュッシーも、この『パルジファル』の音楽をべた誉めしていたそうです。



おすすめディスク

【CD】
バレンボイム指揮
ベルリン・フィルハーモニー、ベルリン国立歌劇場合唱団
イェルサレム(T) マイアー(S) ファン・ダム(Br) フォン・カンネン(Bs)
(録画1990年、TELDEC)
 
いくつもの歴史的な名盤があるなかで、比較的新しい録音であるバレンボイム盤を取り上げました。イエス・キリスト教会で録音されたこのディスクは、このオペラのモティーフを余すことなく伝えてくれるでしょう。バレンボイムの指揮は巧く、歌手陣もむらがありません。

【DVD】
ナガノ指揮、レーンホフ演出
ベルリン・ドイツ交響楽団、バーデン・バーデン祝祭合唱団
ヴェントリス(T) マイアー(S) ハンプソン(Br) フォックス(Bs)
(録画2004年、Opus Arte)
 
ケント・ナガノの指揮が冴えるこのディスクは、音楽が非常に重要視されるこのオペラに最適です。私はこれを見て、ナガノが好きになりました。ベテランの域に達したマイアーのクンドリーのほか、ハンプソンのアムフォルタスなど芸術的と言える演技が盛り立てます。







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