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私の好きなオペラ歌手








古今東西、多くのオペラ歌手がいる中で、私が好きな歌手を厳選してみました。私はどちらかというとそれまで好きだった歌手のこと以上に、新しく出てきた歌手を好きになる傾向があります。なので、今後、「好きな歌手」は増えていく一方だと思いますので、個人的には大変です。もし新しく増えたときは、加筆していきます。(ちなみに嫌いなオペラ歌手というのもいることはいます)。


ソプラノ歌手

【バルバラ・フリットリ】
まずソプラノで一番好きな歌手は、バルバラ・フリットリ(1967-、イタリア)です。他の歌手を聴くつもりで買ったオペラのCDの中で共演していて、「おや?いい声のソプラノがいるなあ」と耳が釘付けになりました。
 
金切り声とは正反対の落ち着いた声。そして、最大の武器が完璧なソット・ヴォーチェで、弱音を出したときに、一気に客席を引き込みます。メータ指揮の紫禁城で録画した『トゥーランドット』のリューを歌ったDVDでは、野外の公演にも関わらず、繊細な声を披露していました。
 
日本でのデビューは、2005年のサン・カルロ歌劇場引っ越し公演の『ルイザ・ミラー』。ルイザ・ミラーは、ミラノ・スカラ座、メトロポリタン歌劇場、コヴェント・ガーデン等で歌っていて、現在この役はフリットリの独壇場となっています。
 
録音でおすすめしたいのは、ムーティ指揮ミラノ・スカラ座の『オテロ』で歌ったデズデーモナです。歌も演技もこれ以上を望みません。イタリアが生んだ待望のプリマドンナとして今後もさらにリリースが続くと思うので楽しみです。
 
【ノルマ・ファンティーニ】
次は日本でも新国立劇場に出演するなど、おなじみとなったノルマ・ファンティーニ(19??-、イタリア)です。ファンティーニの良さは、なんといってもその歌唱力。特にアリアの最後のキメのところで、最高のパフォーマンスを見せてくれます。これは聴いている方としてはたまらない。聴き終わって絶賛したくなるのがファンティーニです。
 
新国立劇場には、『仮面舞踏会』『トスカ』『アイーダ』等に出演しています。いずれも名演でした。
 
ところが録音となるとほとんどなく、最近、大野和士指揮モネ劇場の『アイーダ』のDVDがリリースされました。これは「能」を意識した演出になっていて、『アイーダ』の演出としては珍しいのですが、ファンティーニに合っていたかというと、疑問が残ります。今後の録音に期待したいです。
 
【アンナ・ネトレプコ】
最近、話題となったアンナ・ネトレプコ(1971-、ロシア)もすばらしいソプラノだと思います。リッツィ指揮ザルツブルク音楽祭の『椿姫』のDVDを見て驚きました。
 
その前にオペラ界の話題となったソプラノには、ステファニア・ボンファデッリがいました。私はボンファデッリにも注目していたのですが、ネトレプコにも惹かれます。
 
一見、若さで押し切るように見えますが、声の良さ、歌のうまさをちゃんと持っています。レパートリーの拡大に気をつけて、今後活躍していってほしいです。


メゾ・ソプラノ歌手

【チェチーリア・バルトリ】
 メゾ・ソプラノでは一人、チェチーリア・バルトリ(1966-、イタリア)を挙げておきたいと思います。バルトリについては、詳しく語る必要はないでしょう。私は、実は最初から注目していたわけではなかったのですが、CDの「古典イタリア歌曲集」を聴いて、耳にとまりました。そのテクニックはもちろんですが、声の響きの中の陰影に惚れ込んだのです。
 
私の手元にある映像では、フェッロ指揮ケルン歌劇場の『セヴィリャの理髪師』がお気に入りです。1988年の録画で、ロジーナを歌うバルトリはこのとき22才。爆発的な人気となる少し前ですが、私はロジーナというとこのバルトリのロジーナが思い浮かぶようになってしまいました。
 
それから10年後の録画で「ライブ・イン・イタリー」としてリリースしたテアトロ・オリンピコで歌ったコンサートも、とてもいい雰囲気が出ていて楽しめるコンサートです。


テノール歌手

【プラシド・ドミンゴ】
私は3大テノールの中では、プラシド・ドミンゴ(1941-、スペイン)が一番好きです。ドミンゴが好きな人の中でも、その全盛期はもう過ぎたと言っている人も多いかもしれません。私はその逆で、むしろ年齢を重ねたドミンゴに魅力を感じます。なぜでしょうか。
 
そもそも、常に高音の響きを要求されるテノール歌手にとって、「老い」はその声のために致命傷にもなります。しかもドミンゴはイタリア・オペラを真正面から歌い、劇的な歌唱を要求されます。けれど、確かにパワーは落ちてはいるのですが、それに代わるもっと大きな「何か」を放出しているように感じるのです。「芸術力」みたいなものです。
 
さっきソプラノ編で紹介したDVD、ムーティ指揮ミラノ・スカラ座の『オテロ』。オテロを歌っているのはドミンゴですが、このときすでに還暦を迎えていました。実際に公演時にはオーバーワークのためキャンセルが続いて、全公演のうち3日間しか歌っていないそうです。しかし、ここで見ることのできるドミンゴの歌唱は、私はもっとも理想的なオテロ像だと思います。
 
同じくドミンゴがオテロを歌ったミュンフン指揮パリ・バスティーユ歌劇場のCDもおすすめです。ドミンゴのヒステリックな表現が、オテロの性格を浮き上がらせています。
 
【ジュゼッペ・サッバティーニ】
今後この人以上のテノールは出ないと思えるほど、ある種の独特な地位を確保しているテノールに、ジュゼッペ・サッバティーニ(1957-、イタリア)がいます。この人も私の大のお気に入りです。
 
こんな声は他では絶対に聴くことはできません。音色は透明感があり、クリスタル・ヴォイスと言って何の違和感もありません。そして、制御されたピアニッシモを出されると、ただ声を出しているだけの歌手があまりに貧相に見えてきます。
 
こうした声を保つために、サッバティーニは次のように語っています。
 
《隠者の生活です。夜更かしをしない、煙草を吸わない。食事や性生活も無計画にはできません。私ののどは特殊で、歌う前の日に煙草の匂いのする場所やレストランなど騒がしい場所へ行くと、売りもののディミヌエンドやピアニッシモが汚くなるのです》
 
プロですね。こうした生活はつまらないという人にはわからないかもしれません。きっとこうした生活をしていても、サッバティーニのような声が出たら気持ちがいいでしょうね。
 
日本でもかなりおなじみとなりましたので、実演に接する機会は多いと思いますが、本人はそろそろ歌手生活の引退を考えているようです。本当に惜しい気がします。
 
ディスクもそんなに多くはないので、オペラの全曲盤をもっと増やしてほしいところです。CDでは、ダニエラ・デッシーと共演した『ラ・ボエーム』のロドルフォ、モーツァルトの珍しいオペラ『ポント王のミトリダーテ』のタイトルロール、マスネの『タイス』のニシアスがあります。DVDでは、日本で公演された『愛の妙薬』のネモリーノがあり、そのウーゴ・デ・アナの演出は、ネモリーノを画家のゴッホに見立てていて、大変おもしろい映像になっています。
 
その他、ヴェルディのアリアを集めたCDもありますが、1994年に津田ホールで行われたリサイタルを収めたイタリア歌曲集のCDが、ファンにはうれしい一枚です。
 
【ペーター・ザイフェルト】
ワーグナー・テノールの中では、私はずっとルネ・コロが好きだったのですが、現在の一番手はペーター・ザイフェルト(1954-、ドイツ)です。
 
彼の持ち味は、ワーグナーを歌うテノールであるにもかかわらず、非常にリリックな響きを持っているところにあります。あのワーグナーの音楽を、なんと美しく体現してくれるのでしょう。
 
CDでは、バレンボイムの指揮で、『タンホイザー』のタイトルロールと、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のヴァルターを歌ったものがおすすめです。
 
ザイフェルトの声は、こちらが身構えることなくただ自然に聴いているだけで、心地のいい気分にさせる甘美な声と言えます。


バリトン歌手

【ジェラール・スゼー】
私自身がバリトンであることもあって、バリトン歌手のお気に入りはかなり多いのですが、ここではすでに故人となった歌手を2人、紹介したいと思います。
 
まずジェラール・スゼー(1918-2004、フランス)。ビロードの声を称されたその声は、とてもかっこいい。最初に聴いたときは、なんていい声なんだろうと虜になってしまいました。
 
歌曲のスペシャリストでもあり、フランス歌曲では大きな功績を残しました。ソプラノのエリー・アメリングとのフォーレ歌曲全集など、現在でも第一級の評価を保っています。また、ドイツ歌曲においても、シューベルトの3大歌曲集を始め、ベートーヴェン、シューマン、ブラームスの歌曲等で録音があり、ドイツ人の歌手とはひと味違う魅力のある歌唱を聴くことができます。
 
オペラの全曲盤は、思いの外、少ないのですが、スゼーの最も重要なレパートリーであるドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』のゴローを歌っているものがクリュイタンスの指揮であります。
 
【ヘルマン・プライ】
そして、私が最も好きなバリトン歌手として、第一に挙げたいのは、ヘルマン・プライ(1929-1998、ドイツ)です。超有名どころなので、なんだと思われた方もいるかもしれませんが、私が思うのは、プライのような声は、他に聴くことができないということです。個性が強いというのは、ときに好き嫌いの分かれるところですが、私はプライの声を「美声」だと思っています。作って出せるようなものではなく、もうこれは持って生まれたものですね。
 
プライのCDでは、まずモーツァルト。ベーム盤で強烈なフィガロの印象がありますが、スウィトナー盤での伯爵も聴かせてくれます(ドイツ語歌唱)。また、パパゲーノは本人が一番好きな役と言っているように声がとてもよく合っています。
 
フィガロといえば、『セヴィリャの理髪師』の方のフィガロも、モーツァルトより歌いやすそうです。それから、C.クライバーが指揮した『こうもり』のアイゼンシュタインも聴いていて楽しくなります。
 
また、ワーグナーでは、DVDで『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のベックメッサー役を演じているのを見ることができます。
 
欲を言えば、『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロールや、『タンホイザー』のヴォルフラムの全曲盤があったらよかったのになあ・・・と思いました。特にヴォルフラムは、本人が好きな役の一つに挙げていた役です。

(2006/11/04)







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