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ルサルカ

Rusalka





オペラ・データ

【作曲】
アントニン・ドヴォルザーク(1900年)

【初演】
1901年3月31日 プラハ国民劇場

【台本】
ヤロスラフ・クヴァピル(チェコ語)

【原作】
アンデルセンのおとぎ話『人魚姫』、チェコの民謡など

【演奏時間】
第1幕 60分
第2幕 45分
第3幕 55分  合計 約2時間40分



あらすじ

【時と場所】 
チェコに伝わる民謡の世界

【登場人物】
ルサルカ(S): 水の精の一人
王子(T): 
水の精(Bs): 年老いた水の精
魔法使い(Ms): 
外国の公爵夫人(S): 王子を誘惑する既婚者
ほか

【第1幕】
時はある月夜のこと、舞台はチェコの森に囲まれた湖のほとり。水の精の一人ルサルカは、湖を訪れていた王子に恋をし、人間になりたいとの思いを年老いた水の精に打ち明けます。年老いた水の精は難色を示しつつも、魔女に相談するように言います。ルサルカは魔女に、人間になる薬を求めました。彼女の願いに魔女が出した条件は、人間になれるが口がきけなくなる、恋人に裏切られたときは湖の底に沈み呪われる、そしてその恋人も道連れになる、というものでした。ルサルカはこのすべてを受け入れます。
夜が明け、狩りをしていた王子は、白い牝鹿を追って湖のほとりまでくると、そこで美しい人間となったルサルカに出会います。王子はルサルカに魅了され、彼女を城に連れて帰りました。
 
【第2幕】
一週間後、城で王子とルサルカの婚礼の準備が進められていましたが、なぜか言葉を発しないルサルカに王子はいらだち、冷たい態度を取り始めます。そこに婚礼の客として招かれていた外国の公爵夫人が彼を誘惑しました。王子は夫人に夢中になり、彼女と抱き合います。ルサルカは深く傷つき絶望しました。
心配してルサルカの元に現れた水の精は、王子らの様子に激怒し、ルサルカを水の中へと連れ帰ることにします。水の精が王子に、魔女の呪いは避けられないと告げると、怯えた王子は夫人に助けを求めますが、彼女は彼のことを捨てて立ち去りました。
 
【第3幕】
再び月夜の湖のほとり。呪いを受けたルサルカは、助かる方法を魔女に尋ねます。魔女はナイフを取り出し、裏切った者を滅ぼせば救われる、と言いましたが、ルサルカはこれを拒絶します。
その後、森の中を何日も彷徨ってルサルカを捜していた王子が、湖のほとりに現れます。そこでルサルカを呼ぶと、湖の底から、呪われた精としてルサルカが姿を見せました。王子は許してくれるように請いましたが、彼女は、裏切りの代償は死であることを伝えました。王子はそれを受け入れ、ルサルカの口づけは王子の命を奪います。ルサルカはもう一度彼に別れの口づけを与えてから、湖の底に帰っていったのでした。



解説(ポイント)

【1】 ドヴォルザークの代表作
 
ドヴォルザークは、アメリカ時代に交響曲「新世界」を残して著名な作曲家となりましたが、チェコ国民楽派の一人として、その代表作であるオペラ『ルサルカ』も見逃せません。ドヴォルザークはオペラでの成功を望んでいましたが、思うように国際的な評価を得られませんでした。それまでに交響詩『水の精』や『真昼の魔女』などを作曲していたドヴォルザークは、このオペラの大部分を、人里離れた森と湖に近いヴィソカーの別荘で作曲しました。メルヘン的な世界観がチェコ音楽の情感で統一され、ドヴォルザークの才能が発揮された作品であると言えます。『ルサルカ』の成功はドヴォルザークを大変喜ばせたそうです。
 
【2】 チェコ語による台本と作曲
 
台本作家のヤロスラフ・クヴァピルは、このオペラの台本について、スラヴ圏で伝承されていた「ルサルカ」を素材とし、アンデルセンのおとぎ話とチェコの民謡から霊感を得たとしています。自国の民族主義を勃興しようとしていましたが、ハプスブルク帝国の支配下にあったボヘミア地方では、ドイツ語が公用語であり、チェコ語の使用は制限されていました。19世紀後半になって、プラハに国民劇場ができ、そこでの演目はチェコ語で公演されるようになります。クヴァピルの台本は、若手作曲家の間では誰も関心を示さず、ドヴォルザークの元へとたどり着いたようです。二人は相談しながら、このオペラを完成させました。
 
【3】 ルサルカのアリア「月に寄せる歌」
 
このオペラの聴きどころとしては、やはりルサルカが第1幕で歌うアリア「夜空に浮かぶ月よ」でしょう。この曲は、「月に寄せる歌」とも呼ばれ、どこか哀愁を帯びた音楽で親しまれています。チェコ語を歌うソプラノ歌手にとっては最重要のレパートリーです。さらにこのルサルカ役は、オペラであるにもかかわらず、途中で言葉を発することができなくなります。つまりは、歌唱力だけでなく、歌わない場面での演技力も問われる難しい役です。また、第3幕の最後、呪われた水の精ルサルカと、改心した王子による、ソプラノとテノールの心を打つ二重唱にも注目です。



おすすめディスク

【CD】
ノイマン指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、プラハ・フィルハーモニー合唱団
ベニャチコヴァ(S) オフマン(T) ノヴァーク(Bs) ソウクポヴァ(Ms)
(録音1983年、SUPRAPHON)
 
まだ全曲盤がそれほどなかったときに、20年ぶりのステレオ録音として出たチェコのレコード会社スプラフォンによるディスク。スロヴァキアの名花ベニャチコヴァの月に寄せる歌は、1996年のメトのガラ・コンサートの映像もおすすめです。
 
 
【DVD】
コンロン指揮、カーセン演出
パリ・オペラ座管弦楽団、合唱団
フレミング(S) ラーリン(T) ハヴラタ(Bs) ディアドコヴァ(Ms)
(録音2002年、TDK Core)
 
湖の底やベッドの位置、線対称の舞台作りなどが美しく、興味深い演出が楽しめます。そして、ここでもルサルカ役のフレミングが存在感を発揮しています。








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