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ジークフリート
『ニーベルングの指環』第2夜






オペラ・データ

【作曲】
リヒャルト・ワーグナー(1856〜71年)

【初演】
1876年8月16日 バイロイト、祝祭劇場

【台本】
作曲者ワーグナー自身による(ドイツ語)

【原作】
ドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの歌』、アイスランドの歌謡集『エッダ』等の伝説

【演奏時間】
第1幕 80分
第2幕 70分
第3幕 80分  合計 約3時間50分



あらすじ

【時と場所】 
神話の時代、ライン川近くの森と岩山

【登場人物】
さすらい人(Br): 神々の王ヴォータンの仮の姿
エルダ(A): 大地の母神、ブリュンヒルデの母
アルベリヒ(Br): ニーベルング族の小人
ミーメ(T): アルベリヒの弟
ファーフナー(Bs): 巨人族、大蛇に変身
ブリュンヒルデ(S): ヴォータンの娘、ワルキューレ
ジークフリート(T): ヴォータンの子ジークムントとジークリンデの子
森の小鳥(S)
ほか

【第1幕】
時は神話の時代、舞台は森の中のミーメの家。ミーメの家で育ったジークフリートは、実はジークリンデが双子の兄ジークムントとの間に宿した子で、ジークリンデ自身はジークフリートを産んですぐ亡くなっていました。ジークフリートは勇猛果敢に育ち、狭小なミーメの手に余る存在となります。ジークフリートは、ミーメの作った剣を次々と折っては、もっと立派な剣を要求しました。
そこにあったのが、母ジークリンデの残した名剣ノートゥングの破片。ミーメはどうやってもこの剣を鍛え直すことができなかったのですが、さすらい人としてそこに現れたヴォータンから、その剣を鍛え直すことができるのは「恐れ」を知らぬ者だけだと聞きます。そこでジークフリートは自らノートゥングを鍛え直し、ついに名剣はよみがえったのでした。
 
【第2幕】
神々から財宝を手に入れた巨人族のファフナーは、自らを大蛇と化して森の奥深くで眠っていました。そこへ恐れを知らぬ者ジークフリートがやってきて、ノートゥングを大蛇の心臓に突き刺し、その返り血を浴びます。その血を舐めると、ジークフリートは森の小鳥の声の意味がわかるようになっていました。小鳥の声に導かれて洞窟の中の財宝を手にすると、そこにミーメが現れます。ミーメはジークフリートを厄介払いしようという魂胆で、毒薬をなんとか飲ませようとしていました。しかし、大蛇の血を舐めたジークフリートはミーメの心の企みをも聞き取ることができたのです。ミーメを一刀両断にしたジークフリートは、森の小鳥が教えてくれた岩山で眠るブリュンヒルデのもとへと向かったのでした。
 
【第3幕】
ヴォータンは大地の母神エルダを呼び、神々の不安を取り去る手立てを問いますが、彼女は答えずに立ち去ります。岩山にかけつけたジークフリートが現れたので、ヴォータンは彼に「かつてこの槍がお前のその剣を砕いた」と告げます。親の仇(かたき)に出会えたと喜んだジークフリートは一撃でその槍を真っ二つにし、ヴォータンは姿を消しました。
岩山の頂にたどり着いたジークフリートは、炎の壁を越え、そこに横たわるブリュンヒルデの傍らに座りました。このとき、ジークフリートは自らの震える手とためらいを感じ、初めて「恐れ」を知ることとなります。くちづけによってブリュンヒルデが眠りからさめると、二人は即座に恋に落ち、結ばれたのでした。



解説(ポイント)

【1】 ヒーロー・ジークフリート
 
第2夜『ジークフリート』は、そのタイトルのとおりジークフリートを主人公とする冒険物語です。ワーグナーはコジマとの間の子にも「ジークフリート」と名付けています。ジークフリートという名は、英雄としての意味合いが強かったのでしょう。このジークフリートという役、オペラ全体で約4時間の演奏時間の中で、最初から最後まで出ずっぱりで歌い続けます。テノールの諸役のうちでも、歌いきるのが最も困難な役であるとされ、日本初演でこのタイトルロールを歌った大野徹也さんは、終盤では声がへとへとの状態になったと語っています。
 
【2】 15年の歳月を費やした作曲
 
同じワーグナーの管弦楽作品に『ジークフリート牧歌』という曲がありますが、このオペラ『ジークフリート』と同じ素材が使用されています。『牧歌』の方は、妻コジマの誕生日プレゼントとしてワーグナーが密かに準備を進めたものです。誕生日の朝、演奏者たちを自宅に呼びコジマを驚かしたそうです。オペラ『ジークフリート』の方はというと、最初『若きジークフリート』というタイトルで作曲が進められました。しかし、途中で作曲を中断し、その間にワーグナーは『トリスタンとイゾルデ』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』という2大オペラを完成させ、そして『ジークフリート』の第3幕の作曲を再開させました。作曲に15年を要し、その間、オペラでジークフリートが成長していくように、ワーグナーも大作曲家へと変貌していったのです。
 
【3】 バイロイト祝祭劇場
 
ワーグナーがバイロイトに自らのオペラを上演する祝祭劇場を建設した話は有名です。世界中の支持者に募金を募り建設を始めますが、資金難のため一時中止に追いこまれます。そこに現れたのがバイエルン王のルートヴィヒ2世。多額の国費を支出して祝祭劇場は完成しました。1876年、第1回のバイロイト音楽祭が開催され、そこで『ニーベルングの指環』の4部作すべてが初演されました。



おすすめディスク

【DVD】
レヴァイン指揮、シェンク演出
メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱団
モリス(Br) イェルサレム(T) ベーレンス(S) ノーマン(S)
(録画1989、90年、Deutsche Grammophon)
 
読み替え演出が多くなる一方で、このDVDは最もオーソドックスな手法をとっています。そのためオペラをたまに見るくらいの人には、最適な映像かもしれません。レヴァイン率いるメトロポリタン歌劇場の実力も安定しており、歌手にも有名どころを揃えています。

【DVD】
バレンボイム指揮、クプファー演出
バイロイト祝祭劇場管弦楽団、合唱団
トムリンソン(Br) イェルサレム(T) エヴァンス(S) エルミンク(T)
(録画1991、92年、Teldec)
 
レーザー光線を利用した有名なクプファー演出版。バレンボイムの意欲的な指揮が魅力で『指環』の定盤となっています。充実したバイロイトの息吹が感じられるような完成度。一部歌手で見劣りすることもありますが、このときのベストを集結させています。







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