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シモン・ボッカネグラ

Simon Boccanegra





オペラ・データ

【作曲】
ジュゼッペ・ヴェルディ 1857年に作曲

【初演】
1857年3月12日 ヴェネツィア、フェニーチェ座
(改訂稿 1881年3月24日 ミラノ、スカラ座)

【台本】
フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ(イタリア語)

【原作】
アントニオ・ガルシア=グティエレスの戯曲『シモン・ボカネグラ』

【演奏時間】
プロローグ 30分
第1幕 50分
第2幕 30分
第3幕 30分  合計 約2時間20分



あらすじ

【時と場所】 
14世紀半ば、ジェノヴァ

【登場人物】
シモン・ボッカネグラ(Br): 海賊
アメーリア(S): シモンの娘
フィエスコ(Bs): ジェノヴァの貴族
ガブリエーレ(T): ジェノヴァの貴族
パオロ(Bs): 金糸職工
ほか

【プロローグ】
時は14世紀半ば、舞台はイタリアの港町ジェノヴァ。平民階級のパオロは、明日の総督選挙のために、貴族にも対抗できる海賊のシモンを推薦します。しかし、当のシモンは総督の地位に興味を示しません。パオロは、総督になればマリアを救えるかも、とシモンにささやきました。シモンとマリアは愛し合う仲でしたが、マリアの父フィエスコがそれに反対し、娘を館に閉じ込めていたのです。そして、不運にもマリアはこのとき命を落とします。
マリアに会わせてほしいというシモンに、フィエスコは、マリアとの間にもうけた子供を引き渡すように求めます。シモンは、子供はある老婆の手で養育されていたが、老婆が亡くなると子供の行方がわからなくなったと語りました。フィエスコが立ち去った後、シモンは館の扉が開いているのに気づき、中に入ります。すると、そこには亡きマリアが安置されていました。シモンは悲しみに打ちひしがれる中、選挙の結果、自分が総督に選ばれたことを知りました。

【第1幕】
時は経て、プロローグから25年後、同じく港町ジェノヴァ。グリマルディ家の娘アメーリアには、貴族の青年ガブリエーレという恋人がいました。ジェノヴァの総督シモンは、グリマルディ家の財産を没収するため、忠臣のパオロをアメーリアと結婚させようとします。シモンはアメーリアと話しているうちに、なんとお互いが生き別れた父と娘だったことに気が付きました。
シモンから結婚話を帳消しにされたパオロは、シモンを逆恨みします。パオロは部下を使いアメーリアを誘拐しますが、まだ何も知らないガブリエーレはシモンの仕業と勘違いしました。
 
【第2幕】
次にパオロは、シモンに毒を盛ります。眠りに落ちたシモンをガブリエーレは短剣で刺そうとしますが、アメーリアに止められます。ここでガブリエーレは二人が父娘ということを聞きました。時すでに遅く、貴族派の群衆が決起して総督シモンの宮殿を取り囲み、今にもシモンをその地位から引きずり降ろそうとしていました。貴族の一員としてガブリエーレは自らが貴族派を説得し、和平を導こうとします。シモンは、その成功の暁にはアメーリアとの結婚を許すと言いました。
 
【第3幕】
騒乱は収まり、ガブリエーレとアメーリアの婚礼の式が始まります。その中でパオロは反乱軍に加わった罪で極刑を受けて連行されました。他方、シモンは、パオロに盛られた毒が体中にまわり、今にも力尽きそうになります。そこに、この25年間、姿を隠していたフィエスコが、昔のうらみを晴らそうとシモンの前に現れました。フィエスコは、自らを死んだことにして、偽名を使ってグリマルディ家でアメーリアの養育にたずさわっていたのでした。
生死の境にあるシモンはフィエスコに対し、アメーリアがマリアの産み落とした娘だということを打ち明け、すべてのうらみと憎しみに終止符を打ちます。シモンはアメーリアにも、フィエスコが実の祖父であることを伝え、そしてガブリエーレには総督の地位を譲ることを宣言し、息絶えたのでした。



解説(ポイント)

【1】 ヴェルディの隠れた名作
 
ヴェルディのオペラ『シモン・ボッカネグラ』がヴェネツィアのフェニーチェ座で1857年に初演されたときは、ヴェルディ本人も認めるほど大失敗に終わったそうです。しかし、その音楽は、専門家たちに好意的に受けとめられていました。後年、ヴェルディは、ボーイトによって改訂された台本を使用して改訂版を作曲しました。これは、24年後の1881年にミラノ・スカラ座で初演されて成功します。この改訂版はちょうどヴェルディが『アイーダ』を作曲した後、『オテロ』までの16年の空白期間に書かれています。成熟した作曲技法によって新たな改訂を施し、『シモン・ボッカネグラ』は、ヴェルディの輝かしいオペラ群のなかでも、玄人好みの隠れた名作として支持されています。
 
【2】 複雑な構造をもつドラマ
 
このオペラの特徴は、史実を基にした複雑な構造をもつドラマにあると言えるでしょう。舞台は北イタリアの海洋都市ジェノヴァ。タイトルロールのシモン・ボッカネグラは、14世紀半ばにこの地で活躍した海賊であり、総督になって貴族の権力を抑えようとします。宴会の席で毒を盛られて殺害されたとも伝えられています。プロローグでシモンとマリアの娘が行方不明であることや、マリアの父フィエスコとシモンの確執などが描かれます。次の第1幕では、プロローグから25年の歳月が過ぎています。母マリアの名を継いだ娘マリアはアメーリアと名乗り、貴族グリマルディ家で養育されています。その養育者は、これもアンドレアと偽名を使ったフィエスコ。すなわち娘マリアの祖父に当たります。25年の歳月が複雑な関係性を生み、ドラマを作り出しました。
 
【3】 力強い男声陣、そして紅一点のソプラノ
 
熟練した作曲技法を得た後年のヴェルディの手によって改訂された音楽は、海風を受けるジェノヴァの町の息吹と、緊張感に満ちた人間ドラマを描き出すことに成功しています。タイトルロールのシモンはバリトン、フィエスコはバス、そしてこのオペラの真の悪役であるパオロはバリトンと、男性の低声域の役がぶつかり合います。その中でアメーリアは、主役の中で紅一点のソプラノの役。アリアとしての見せ場は少ないかもしれませんが、シェーナやモノローグ、またはアンサンブルといった形で、緊迫した力強い歌唱が重なり合うところに、このオペラの魅力が詰まっています。



おすすめディスク

【CD】
アバド指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
カップッチルリ(Br) フレーニ(S) ギャウロフ(Bs) カレーラス(T) ファン・ダム(Br)
(録音1977年、Deutsche Grammophon)
ヴェルディの数々のオペラの中でもアバドが得意としたのがこのオペラであり、ミラノ・スカラ座を率いてのこのディスクが名盤として不動の位置にあります。カップッチルリ、ギャウロフ、ファン・ダムの男性の低声域は強烈です。


【CD】
アバド指揮
ウィーン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
ブルゾン(Br) リッチャレッリ(S) ライモンディ(Bs) ルケッティ(T) スキアーヴィ(Br)
(録音1984年、RCA)
同じアバド指揮でも、こちらはウィーン国立歌劇場のライヴ録音です。ライヴでも音楽に勢いがあってかなり良いディスク。歌手は上記のスカラ座のときとガラリと入れ替わっていますが、タイトルロールのブルゾンをはじめ、こちらも強力な布陣となっています。


【DVD】
アバド指揮、シュタイン演出
フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団、合唱団
グエルフィ(Br) マッティラ(S) コンスタンティノフ(Bs) ラ・スコーラ(T) ガッロ(Br)
(録画2002年、TDK CORE)
せっかくなので、映像の推薦盤もアバド指揮の『シモン・ボッカネグラ』を選んでみました。オーソドックスで見やすい映像。ガッロのパオロ役が異色の出来だと思います。







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