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タンホイザー






オペラ・データ

【作曲】
リヒャルト・ワーグナー(1843〜45年)

【初演】
1845年10月19日 ドレスデン、ザクセン州立歌劇場(ゼンパー・オーパー)

【台本】
作曲者ワーグナー自身による(ドイツ語)

【原作】
中世の詩『ヴァルトブルクの歌合戦』ほか

【演奏時間】
第1幕 45分
第2幕 70分
第3幕 55分  合計 約2時間50分



あらすじ

【時と場所】 
13世紀初頭、ドイツのチューリンゲン

【登場人物】
タンホイザー(T): 中世の騎士、吟遊詩人
エリーザベト(S): ヘルマンの姪、タンホイザーの恋人
ヴォルフラム(Br): タンホイザーの旧友、吟遊詩人
ヘルマン(Bs): チューリンゲンの領主
ヴェーヌス(Ms): 官能の愛の女神
ほか

【第1幕】
時は13世紀初頭、舞台はドイツの森に囲まれたチューリンゲン。騎士であり吟遊詩人であるタンホイザーは、禁断の地とされていたヴェーヌスベルクで、愛の女神ヴェーヌス(ヴィーナス)と官能のひとときを過ごしていました。しかし、そんな生活にも飽きてしまったタンホイザーは、ヴェーヌスの誘惑を振り切って禁断の地をあとにします。
帰ってきたタンホイザーは、仲間からどこに行っていたのかと尋ねられますが、それに答えられずまた旅立とうとします。しかし旧友ヴォルフラムが「君の恋人エリーザベトが帰りを待っている」と言うのを聞いて、思いとどまります。
 
【第2幕】
本当はヴォルフラムもエリーザベトのことを愛していたのですが、タンホイザーを彼女のところに案内して、再会を喜ぶ二人を見守っていました。
舞台はヴァルトブルク城の大広間で行われる「歌合戦」となります。大勢の貴族や騎士たちが集まる中、領主ヘルマンは歌合戦の課題を「愛の本質」とし、勝者にはエリーザベトから賞が与えられると宣言します。歌合戦では、まずヴォルフラムが、「精神的な愛」こそ愛の本質だと歌いましたが、それをタンホイザーは否定して、愛の本質は「快楽」にあると歌い、官能の女神ヴェーヌスを賛美しました。
その歌で、タンホイザーが禁断の地ヴェーヌスベルクにいたことを知った人々は、口々に彼を国から追放せよと罵倒しましたが、エリーザベトが割って入り、一番傷ついているのは自分なのだと言いながら彼をかばいます。そこで、領主ヘルマンはタンホイザーに、罪を償い許しを請うためにローマ教皇のもとへ行くよう命じました。
 
【第3幕】
時が経ち、ローマから帰る巡礼者の中にタンホイザーを見つけられないエリーザベトは、ヴォルフラムの制止を振り切って、闇夜に天国へと続く道へ旅立ちます。
彼女が去ったあと、ヴォルフラムのもとにタンホイザーが帰ってきて、ローマで許しを得ることができなかったと嘆きます。自暴自棄になったタンホイザーは、止めるヴォルフラムを振り切って、禁断の地ヴェーヌスベルクに行こうとしますが、そこにエリーザベトの棺が運び込まれます。彼女の死に絶望したタンホイザーはそこで息絶えるのですが、魂は救済されます。エリーザベトの死が、彼の魂を救ったのでした。



解説(ポイント)

【1】 最もわかりやすいワーグナーのオペラ
 
ワーグナーのオペラは、長くて、しかも難解で、なかなか取っつきにくいようにも思えますが、この『タンホイザー』という作品は、ワーグナーのオペラの中でも、最もわかりやすい作品です。ワーグナーのオペラのテーマである「愛」「死」「救済」といった概念が、この作品を鑑賞することで、よく理解できるでしょう。
 
 
【2】 聴きやすい序曲
 
音楽はとても聴きやすく、有名なメロディーも出てきます。特に序曲は、オペラ全体に出てくるモティーフが随所に織り込まれていて、それはあたかもオペラ全体のハイライトのような作り。この序曲をよく聴いておけば、その後にオペラが進行していっても、スムーズに音楽が耳に入ってくると思います。
 
 
【3】 渋いヴォルフラムの存在
 
もちろん主役はタイトルにもなっているタンホイザーと、ヒロインであるエリーザベトの二人なのですが、もう一人、ヴォルフラムの存在も忘れられません。彼は、エリーザベトを愛しながら、そのことを胸に秘めて二人を見守ります。それは、第2幕の「歌合戦」でヴォルフラム自身が歌う「精神的な愛」そのものでしょう。このヴォルフラムには、エリーザベトを想って歌う「夕星の歌」というとっておきのアリアが第3幕に用意されています。



おすすめディスク

【CD】
シノーポリ指揮
フィルハーモニア管弦楽団、コヴェント・ガーデン王立歌劇場合唱団
ドミンゴ(T) ステューダー(S) シュミット(Br) サルミネン(Bs) バルツァ(Ms)
(録音1989年、Deutsche Grammophon)
 
なんといってもこのオペラの官能的な音楽を、指揮者シノーポリがオーケストラから見事に引き出しています。また、イタリア系の声を持つドミンゴが、ワーグナーを歌ったときの際どさが、タンホイザーという退廃的な役にもマッチしています。ヴォルフラム役のシュミットは安定した歌いぶり。

【CD】
バレンボイム指揮
ベルリン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
ザイフェルト(T) イーグレン(S) ハンプソン(Br) パーペ(Bs) マイアー(Ms)
(録音2001年、Teldec)
 
ワーグナー・テノールの名をほしいままにしてるザイフェルトが、その美声をよく聴かせています。また、マイアーのヴェーヌス役は完璧な歌唱で、聴く者を引きつけ放しません。ヴォルフラム役のハンプソンの歌は、彼の感情がよく伝わってきます。







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