古典から現代作品まで幅広く取り上げて意欲的な舞台を手掛けている東京室内歌劇場が、紀尾井ホールで共催公演するシリーズの一貫として、モンテヴェルディの歌劇『オルフェーオ』を上演しました。『オルフェーオ』と言えば、現在、上演されるオペラの中では、最も古い作品。オペラの第一歩と言ってもいいでしょうか。この古典的名作を堪能しようとゆったりとした気持ちで鑑賞に臨みました。
普段、劇場や大ホールでオペラを観ていると、紀尾井ホールのような客席数800席のシューボックス・タイプのホールで、きめ細やかな舞台を味わうことは、これもまた実に贅沢だなと感じます。今回の鈴木敬介演出の『オルフェーオ』は、動きの少ない中で、このオペラの豊かな叙情性を活かし、落ち着いたいい演出だったと思います。
でも2階バルコニーに「音楽の精」役がずっと表に出ていたのは大変そうでした。その割に、あまり効果がないような気もしたので、この演出はなくてもよかったかもしれません。
贅沢といえば、歌手陣。この東京室内歌劇場は、いつも日本のトップクラスの歌手で末端の役まで固めていて、しかも2日公演にもかかわらずダブルキャストになっています。一体、どういう予算で運営しているのだろうかと不思議に思いますが、贅沢なのは客席にとってうれしい限りですので、文句はありません。ただほんの少しの出番だったり、衣裳も似ていたりして、誰が何の役を演じているのか少し不明瞭になりました。ここは字幕で役名に触れるよう配慮するなど、工夫してほしかったところです。
贅沢な脇役に比べて、最初から最後まで永遠と歌い続けるタイトルロールは、今回のチケット代程度にお金を取って聴かせるには多少無理があったかもしれません。人選の問題なので惜しい気がします。
(2006/02/21)
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