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ローマ歌劇場『トスカ』


プッチーニ「トスカ」
2006.09.30 Sat. 16:00 NHKホール
ジェルメッティ(指揮)
ボロニーニ、ディ・マッティーア(演出)
ローマ歌劇場o.cho.
 トスカ  デッシー S
 カヴァラドッシ  アルミリアート T
 スカルピア  スーリアン Br


久々に見た力勝負
 
 『トスカ』といえば、舞台はローマであって、そして、初演は1900年1月14日にローマのコスタンツィ劇場、現在のローマ歌劇場・・・というように、この歌劇場の名物とも言えます。
 
 1994年9月の愛知県芸術劇場で行われたローマ歌劇場引っ越し公演と同様、原演出はマウロ・ボロニーニ、舞台装置はアドルフ・ホーエンシュタインの初演時のプランによるものです。
 
 今となっては、めったにお目に掛かることができないオーソドックスな演出。トスカ役のダニエラ・デッシー(S)がプログラムのインタビューの中で、
 
《今回の『トスカ』は故ボロニーニ氏がこだわった初演のプランに基づく伝統的な演出法によるもので、21世紀の現在では、かえって特別な趣向になっているものと思います》
 
と話しているように、本当に「かえって特別な趣向」の舞台を、久しぶりに見せてもらいました。
 
 こういったオーソドックスな演出で真っ向勝負の舞台を、きっちりと見せられると、現在、多くのオペラ公演で採用されている読み替え演出による舞台が、小手先だけの「技」を提供されているように感じてなりません。そこに「安さ」を感じるようになるのです。
 
 誤解のないように付け加えておけば、読み替えの演出による舞台について、私は、私の周囲の人達よりも受け入れており、その可能性に期待もしていて、新たな発見に大喜びすることもあります。何の工夫もなしに作られた舞台より、何倍もおもしろくなっているものも多くあります。
 
 ただ、今回のローマ歌劇場が見せたオーソドックスな演出による力勝負は、やはりオペラ鑑賞における醍醐味の一つとして捨てがたいものだと思うのです。
 
 
力があった音楽
 
 こうした舞台を用意したとして、もちろん中身の音楽がよくなければ、公演は成功しません。力勝負なのですから、力が強くなければ勝てません。
 
 タイトルロールのトスカ役を歌ったデッシーは、これぞプリマ・ドンナというような王道を行く歌唱。もともとトスカには合っていたと思いますが、きっちり仕事をしてくれたという印象です。
 
 カヴァラドッシ役には、デッシーの夫であるファビオ・アルミリアート(T)。ビデオの映像などで聴くかぎりでは、声は出ると思っていましたが、その線の細さは、実際に生で聴いてみたらどうだろうと、不安でした。しかし、生で聴いても申し分ありません。やはり気持ちよく高音部が出るのはうれしいことです。この頃はなかなかこのようなテノールに出会えません。
 
 そして、音楽面で大きな力を提供したのは、指揮者のジャンルイージ・ジェルメッティだったでしょう。がっちりとした音楽を構築しました。それでいて流れも悪くありません。
 
 舞台と同様に音楽も充実し、ハードもソフトも機能した公演でした。
 
 
けれどサービスは・・・
 
 今回、私はチケットを購入したとき、トスカ役をデッシーではない別の歌手の日を選択したつもりでした。けれど、いざNHKホールに行ってみると、配役表にデッシーの名前があります。最初に宣伝したときから変更になったのです、知らぬ間に。HP等では公表されていましたから、もう当然ということかもしれませんが、当日、説明すべきことだと思います。場合によっては払い戻しもするべきです。もちろん、私はデッシーで良かったですけどね。いや、そういう話ではないと思うのです。
 
 開場時間も遅れて入口前に長蛇の列ができました。開演時間も席に着いてから15分経ってはじめてあと5分、つまり20分遅れることが説明されました。
 
 これだけの価格のチケットを購入して、これだけのサービスというは、少し残念な気がします。S席5万5,000円という設定自体も疑問です。
 
 
                             (2006/10/01)





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