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DVD『ドン・ジョヴァンニ』


モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」
録画1999.06. アン・デア・ウィーン劇場
ムーティ(指揮) デ・シモーネ(演出)
ウィーン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
 ドン・ジョヴァンニ  アルバレスBr
 レポレッロ  ダルカンジェロBs
 ドンナ・アンナ  ピエチョンカS
 ドン・オッターヴィオ  シャーデT
 ドンナ・エルヴィラ  アントナッチS
 ツェルリーナ  キルヒシュラーガーMs
 マゼット  レガッツォBs
 騎士長  ゼーリヒBs


あの新国立劇場の公演

 1999年6月、アン・デア・ウィーン劇場でリッカルド・ムーティ指揮、ロベルト・デ・シモーネ演出で上演されたこのプロダクションは、2000年1月と2001年11月に新国立劇場でも「ウィーン国立歌劇場との共同制作」と銘打たれて上演されました。
 
 いわくの多かったこの新国立劇場の公演は、例えば、契約書には「共同制作」ではなく「協力」となっていたり、ウィーン国立歌劇場のホーレンダー総裁が《ただの協力で、衣裳と装置を貸してくれと言うから貸しただけだ》と述べていたりしていました(佐々木忠次『だからオペラは面白い』)。
 
 また、ほとんどの歌手が入れ替わっているのにも関わらず、ウィーン公演の写真を宣伝に多用し、また、タイトルロールの降板を伏せていたことなど、誠実さに欠けた点が指摘されていました(寺倉正太郎「何かおかしいぞ新国立劇場と日本のオペラ」)。
 
 このときウィーン国立歌劇場の制作部長として来日したトーマス・ノヴォラツスキーが、その後、新国立劇場の芸術監督に就任することを考えると、何かの因縁を感じます。
 
 実際の公演は、2000年のときはレポレッロ役のイルデブランド・ダルカンジェロ(Bs)が、2001年のときはタイトルロールのフェルッチョ・フルラネット(Bs)が、すばらしい歌唱を聴かせてくれて、私はとても楽しめました。
 
 
アン・デア・ウィーン劇場という空間
 
 今回のDVDにも帯に「ウィーン国立歌劇場1999」という文字があります。確かにウィーン国立歌劇場の制作ですが、場所はアン・デア・ウィーン劇場。私は、本当は、あのウィーン国立歌劇場が制作するソフトを、アン・デア・ウィーン劇場という座席数1000という小さな空間(しかも、あのシカネーダーが開場した場所)で、モーツァルトのオペラを観るということが、本当に贅沢だと感じます。だから、ウィーン国立歌劇場を前面に出すのではなくて、特別な意味を込めて「ウィーン祝祭週間」を謳った方がいいのではないかと思うのです。このDVDでオペラが始まる前に客席が映りますが、それは本当にうらやましい空間です。
 
 
ウィーンの歌手陣
 
 新国の舞台を観ていたため、やはりウィーンの公演はどうだったかは気になります。DVDのリリースを喜び、見てみました。
 
 さすがに歌手陣は充実しています。ソリスト全員にここまで完璧に歌われると非の打ち所がありません。このプロダクションの売りはデ・シモーネの演出で、登場人物の衣裳が次々と変化していき時代を下っていくところにありますが、この演出はそれ以上でもそれ以下でもありません。どちらかというと、歌手の演技力で助けられているのではないでしょうか。衣裳の変化は客席を視覚的に飽きさせず、これはこれで成功していると思います。
 
 
ムーティのドン・ジョヴァンニ
 
 特筆すべきは、ムーティの指揮です。私はこのDVDを、新国の舞台を思い出すために購入しましたが、ムーティの『ドン・ジョヴァンニ』として、オペラ・ファンにはぜひおすすめしたくなります。ムーティの指揮は確固たる信念に貫かれているかのように自信に満ちていて、『ドン・ジョヴァンニ』の音楽をがっちりと構築しています。歌手陣の健闘とともに音楽面でかなり聴き応えのあるディスクでした。
 
 
                             (2005/01/02)





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