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7.予習をしてから観に行こう






オペラには字幕があるけれど

さて、無事オペラのチケットも取れた、あとは当日に劇場・ホールに向かうだけ・・・というもいいのですが、オペラを楽しむポイントとしては、事前に「予習」をしておくことが肝心です。このことはオペラ・ファンの間では、よく知られていることです。
 
別に予習せずにオペラを観ても、わからないということはありません。現在、日本で上演されているオペラには、ほとんどの場合において「字幕」がついています。舞台の袖や上部に電光掲示できるパネルを置いて、まるで映画のように字幕を読みながらオペラを鑑賞することができるのです。そのため、何の準備をしておかなくてもストーリーを理解することができます。
 
しかし、オペラを十分に楽しむためには、字幕が障害になることがあります。私たちは字幕を読んでストーリーを知るためにオペラを観に行くわけではありません。音楽を聴き、歌を聴き、そして、舞台の上で繰り広げられるドラマを「感じる」ことを望んでいるのではないでしょうか。
 
そのため舞台に集中する必要があります。それなのに、字幕を追いかけるために、チラリチラリと目線を動かしていては、慌ただしいですし、もしかすると歌手の一瞬の表現を見損なう、聴き損なう可能性があります。
 
2003年に来日したミラノ・スカラ座の公演で、指揮者ムーティは字幕を付けませんでした。原語(このときはイタリア語)で歌われるのに、字幕を付けないという選択肢もあるのです。それだけ舞台に集中することが大切なことだと言えます。
 
字幕は補完的に活用するということにして、事前に「予習」をしておき、その公演を観に行く前に、オペラ作品のことを理解してしまいましょう。



事前に「あらすじ」をチェック

オペラの予習として最低限やっておきたいことは、「あらすじ」を読んでおくことです。簡単なものでかまいません。もしよろしければ、このサイトのコンテンツ「オペラ・データベース」の「3分で読めるオペラのあらすじ」を利用してください。
 
すでにストーリーを知っているオペラでも、劇場に出掛ける前にはもう一度あらすじをチェックしておきたいものです。というのも、以前に観たオペラが、演出によって少し筋が変えられている可能性があります。変えるまでいかなくても、解釈の違いは、必ずありえます。「あれ、前と違うな?」と思って、どっちが本来の筋にそったものなのかわからなくなる前に、ゼロに戻す意味で、あらすじにさらっと目を通しておくことをおすすめします。もしかしたら、そのことによって新しい発見もあるかもしれません。
 
演出の時代と呼ばれる現在では、様々な舞台に出会うことでしょう。そのため、「オペラ作品のもともとの形はどうなっているのか」を知っておいてから実際にオペラを観る、というスタンスが非常に大切なこととなってきます。



積極的な鑑賞のために

あらすじとともに知っておきたいのが、そのオペラ作品の見どころ、聴きどころです。上演時間が2時間から3時間かかるオペラの場合、やはりずっと集中し続けていることは不可能です。あるいはその日の体調によっては、どうしても眠くなることもあるでしょう。
 
ちょっと気を抜いたところで、肝心の見どころ、聴きどころを逃してしまったらもったいない! というわけで、あらかじめ「この場面を集中して見てみよう」「このアリアをじっくり聴いてみよう」という部分を自分なりに設定しておくことをおすすめします。
 
こうした設定は、受け身でない積極的な鑑賞姿勢をうながします。これはオペラを鑑賞する上で、とても重要なことです(もっとも、芸術全般に通用する話かもしれません)。
 
もちろんオペラの持つ力は、たとえ私たちが受け身だったとしても私たちを圧倒してくる力を持っていることでしょう。しかし、私たちが積極的に、その芸術作品から「何かを感じたい」「何かを得たい」という思いを持つことは、きっとただ受け身でいたときとは違うもの、多くのものに出会うことができるはずです。
 
そして、その新しい出会いが、少しずつ私たちの生き方に影響してくる・・・、そういったオペラとの付き合い方って素敵ですよね。



DVDで予習する

オペラを観に行く前に、CDを聴いたりDVDを見たりして予習しておくこともおすすめします。「せっかくオペラを観に行くのに、同じオペラを事前に全部見てしまったら、楽しみが減ってしまうのでは・・・」と思う人もいるかもしれませんが、実は違います。そのオペラをよく知っている方が、実際に観に行ったときに内容がよく理解できて、その公演を楽しめるのです。
 
最近はDVDが普及して、オペラのDVDも多く発売されています。一つのオペラにたくさんの種類のDVDが出ていて、一体どれを選んだらいいのか迷うこともあると思います。私もお店で初老のご夫婦が両手に2つのディスクを手に取り、どちらを買ったらいいのか悩んでいる姿を見かけたことがあります。オペラの予習として購入するのであれば、はっきり言って何を選んでもそんなに変わりありません。重要なのは事前に見ておく、聴いておくことです。
 
しかし、DVDを購入するときに注意したいことは、「日本語字幕」がついていることを確認するということです。最近では輸入盤のDVDも多く店頭に並ぶようになりました。これらのDVDには日本語字幕がないことが多いのです。これでは予習をする目的を果たせません。
 
全体的におすすめできるのは、TDK CORE という会社から発売されている「TDK Collection DVD Classics」のシリーズのDVDです。このシリーズのDVDなら、何を見ても十分楽しむことができるでしょう。もちろんすべて日本語字幕がついていますし、解説書も付属しています。



CDで予習する

さて、オペラの予習には、映像で見ることができるDVDがとても便利なのですが、以前はCDを聴いて耳から予習しておく方法が主流でした。CDに付属している日本語対訳を片手に、じっくりとオペラを聴きます。こちらの方が、より詳細にオペラを知ることができますし、極端な演出のDVDを見て固定観念を持ってしまうよりもいいという人もいます。
 
CDを購入するときも、「日本語対訳」がついていることを確認してください。輸入盤にかかわらず、残念ながら最近では国内版にも日本語対訳がついていないCDが多くなっています。日本語対訳なしのCDは予習には適しません。
 
音楽を覚えてしまうと、よりオペラ鑑賞を楽しむことができます。覚えるといっても、何も難しいことではありません。普段の生活の中で、CDを「たれ流し」にしておくのです。例えば、読書をしているとき、料理をしているとき、ドライブをしているとき、バックミュージックとしてCDを流しておきます。そうすると意識せずに、そのオペラの音楽が「聴いたことのある」音楽になっているはずです。この程度、その音楽に精通しておけば、オペラを観に行ったとき、存分に楽しむことができるでしょう。
 
これらオペラのDVDやCDは、大きなディスク・ショップで買うことができます。小さなお店だと、あまりにも種類が少なく、お目当てのオペラが見つからないこともあるので、都市部のタワーレコードやHMVといった大型店のクラシック・コーナーに行く必要があります。東京であれば、銀座の山野楽器、秋葉原の石丸電気などにもたくさん揃っています。
 
もし近くに大型店がなければ、インターネットを使って購入することもできます。前述のタワーレコードやHMV、また最近ではアマゾンや楽天といったサイトでも多くの種類のディスクを買うことができるようになりました。
 
 
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