2023年新刊
名作オペラをやさしく解説
面白いほどわかる!
オペラ入門
名アリア名場面はここにある
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,800円+税
詳しくはこちら
|
オペラのことをいちから学ぶ
声、歌、音楽、演出について
オペラ鑑賞講座 超入門
楽しむためのコツ
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,600円+税
詳しくはこちら
|
「オペラ情報館」が
本になりました
オペラにいこう!
楽しむための基礎知識
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,600円+税
詳しくはこちら
|
|
【作曲】
フランチェスコ・チレア 1898~1902年頃に作曲
【初演】
1902年11月6日 ミラノ、リリコ劇場
【台本】
アルトゥーロ・コラウッティ(イタリア語)
【原作】
ウジェーヌ・スクリーブとエルネスト・ルグヴェの戯曲『アドリエンヌ・ルクヴルール』
【演奏時間】
第1幕 35分
第2幕 35分
第3幕 25分
第4幕 45分 合計 約2時間20分
|
【時と場所】
1730年、パリ
【登場人物】
アドリアーナ・ルクヴルール(S): コメディ・フランセーズの女優
マウリツィオ(T): ザクセンの伯爵
ブイヨン公爵夫人(Ms): マウリツィオのかつての愛人
ブイヨン公爵(Bs)
ほか
【第1幕】
時は1730年、舞台はパリ。演劇の殿堂コメディ・フランセーズの人気女優アドリアーナ・ルクヴルールは、今夜の終演後、久しぶりに戦地から帰還したマウリツィオと逢う約束をしていました。しかし、マウリツィオはその夜、ブイヨン公爵夫人から、政治的な話をつける機会を持ちます。彼は恋人より仕事を優先し、公爵夫人に会いに行きます。
【第2幕】
実はマウリツィオは、公爵夫人のかつての愛人でした。公爵夫人は、すでに心が離れているマウリツィオを引き戻そうと彼を別荘に呼んだのです。そのとき、公爵夫人の夫の公爵が多くの客人たちと別荘に到着しました。公爵は別荘にコメディ・フランセーズの役者を招いてパーティを開こうとしたのです。客の中にはアドリアーナもいました。アドリアーナに会ったマウリツィオは、政治的な理由で一人の女性を秘密の扉から外に逃してほしいと頼みます。しかも、顔を見ないように、と。暗闇の中で、二人の女性はお互いが恋敵であることに気づきました。
【第3幕】
公爵夫人は、自分のことを別荘から逃した恋敵が誰なのかわからず、思案していました。後日、アドリアーナの声を聞いたときに、恋敵が彼女だと感づきます。一方のアドリアーナも、あの時の女性が落とした腕輪が公爵夫人のものだとわかりました。
【第4幕】
3月のある夕暮れ、アドリアーナは自宅で療養中で、公爵夫人に恋人を奪われたと思い、悲しみに沈みます。そこにマウリツィオからとして、小さなすみれの花がしおれた姿で届きます。それはかつてアドリアーナが彼に渡したものでした。しかし、そこにマウリツィオ本人が現れて、花を送ったことを否定します。実は、その花は公爵夫人が送ったもので、毒が仕込まれていました。マウリツィオに求婚されつつ、アドリアーナはその毒で命を奪われたのでした。
|
【1】 名女優アドリアーナ・ルクヴルール
アドリアーナ(アドリエンヌ)・ルクヴルール(1692-1730)は、ルイ14世時代のパリで活躍した実在の名女優です。マウリツィオのモデルであるザクセン伯モーリスと熱烈な恋愛をし、夫の公爵と40も離れていたブイヨン公爵夫人との三角関係も、当時から噂されていました。アドリアーナ・ルクヴルールは、国立劇場コメディ・フランセーズの公演中に舞台で突然倒れて、その2週間後に37歳の若さで亡くなりました。フランス演劇界で人気のあった台本作家スクリーブは、この実話を見事に悲劇とし、名女優を主役としたこの戯曲は、サラ・ベルナールなど後の名女優たちに演じられて成功を収めます。
【2】 アカデミックな作曲家チレアによるオペラ
楽譜出版のソンゾーニョ社は、この戯曲『アドリエンヌ・ルクヴルール』のオペラ化をフィレンツェの音楽院で教鞭をとっていたチレアに依頼します。チレアは、フィレンツェ、パレルモ、ナポリの音楽院で教職につくなど、アカデミックな手法と叙情的で上質な音楽を特徴としています。パリ社交界を舞台に、一人の男性をめぐり二人の女性が真っ向からぶつかり合う壮絶なドラマを、チレアは見事にオペラとして描きました。その時代に一世を風靡したヴェリズモの激しさとはまた異なる、激しくも美しい音楽を聴くことができます。
【3】 名女優が歌う名歌
聴きどころとしては、ぶつかり合う二人の女性が歌うアリアに注目です。まず第1幕でアドリアーナが歌う登場のアリア「私は創造の神の慎ましい僕(しもべ)です」"Io
son l'umile ancella del Genio creator"は、真の演技に身を捧げた女優の芸術性を歌で表現しています。チレアの特徴がよく出た美しい名歌です。対する公爵夫人も第2幕のアリア「苦しみという快楽」"Acerba
voluttà"で、離れていく恋人を求める激しい気持ちをぶつけます。そして、第3幕、しおれたすみれの花を受け取ったアドリアーナが、すべては終わったと歌うアリア「可哀想な花」"Poveri
fiori"では、毒が仕込まれた花の香りを吸い込み、悲劇的な結末が導かれます。
|
【CD】
レヴァイン指揮
フィルハーモニア管弦楽団、アンブロジアン・オペラ・コーラス
スコット(S) ドミンゴ(T) オブラスツォワ(Ms) ルッカルディ(Bs)
(録音1977年、SONY) |
|
|
アドリアーナにスコット、これに対する公爵夫人にオブラスツォワと万全の歌手陣。フィルハーモニア管の演奏も艶やかで良い。
【DVD】
ブリニョーリ指揮、プッジェッリ演出
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
デッシー(S) ラーリン(T) ボロディナ(Ms) ジュゼッピーニ(Bs)
(録画2000年、TDK) |
|
|
オーソドックスな演出で安心して見られるミラノ・スカラ座の舞台。初演時にはフレーニとコッソットが競演していたとのこと。ラーリンの強いテノールの声も十分な出来。
|
|