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【作曲】 リヒャルト・シュトラウス(1929〜32年)
【初演】 1933年7月1日 ドレスデン、ザクセン州立歌劇場
【台本】
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール(ドイツ語)
【演奏時間】
第1幕 60分
第2幕 45分
第3幕 45分 合計 約2時間30分
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【時と場所】 1860年の謝肉祭の火曜日、ウィーン
【登場人物】
アラベッラ(S): ヴァルトナー伯爵の長女
ズデンカ(S): ヴァルトナー伯爵の次女、男性として育つ
マンドリカ(Br): クロアチアの大地主
ヴァルトナー伯爵(Bs): 退役騎兵大尉
マッテオ(T): 若い士官
ほか
【第1幕】
時は1860年、舞台はウィーン。退役騎兵大尉であるヴァルトナー伯爵一家は豪華なホテルに住んでいるものの、伯爵の賭けごと好きの度がすぎて財産を使い果たしていました。女の子を貴族の娘として育てるには大変なお金がかかるので、伯爵の次女ズデンカは男の子として育てています。一方の長女アラベッラは美しい令嬢で多くの貴族に求婚されました。求婚者の一人マッテオはアラベッラへの想いが届かず、今にも自殺しそうな勢いです。実はそのマッテオを愛しているのは男同士の友人という立場だった妹のズデンカの方でした。アラベッラは自分にふさわしい人との結婚を望みます。
ヴァルトナー伯爵は、昔の軍隊時代の旧友でクロアチアの大地主マンドリカに、娘の写真を入れた手紙を出していました。大金持ちのマンドリカがアラベッラに求婚すれば、もうお金には困らないと算段していたのです。そこへ見知らぬ男が訪ねてきます。その男はマンドリカと名乗ります。伯爵の旧友はすでに亡くなっており、その財産と家来の全てを継いだ甥っ子がアラベッラの写真に魅せられ、彼女に求婚するためにはるばる旅をしてきたのです。伯爵は二つ返事で娘を紹介することを承諾します。
【第2幕】
場面はウィーンの舞踏会場。父にマンドリカを紹介されたアラベッラは、異国の求婚者に惹かれていきます。マンドリカは若くして妻に先立たれたことを話し、自分の広大な土地に来ていっしょに住んでほしいとアラベッラに伝えます。そして、その土地には、花嫁がグラス一杯の清き水を花婿に婚約の誓いとして渡す風習があることを話しました。アラベッラも彼に永遠の愛を誓います。
アラベッラは娘時代に別れを告げるとしてひとまずマンドリカと離れます。求婚者たちに別れを告げると、その一人マッテオは絶望し、軍隊に入り死を選ぼうとします。それを思いとどませようとズデンカは、アラベッラからと言って、自分の部屋の鍵を渡しました。マッテオは鍵を渡されて驚きますが、その一部始終を見ていたマンドリカはさらに驚き、アラベッラが裏切ったと思って逆上しました。
【第3幕】
その晩、ヴァルトナー伯爵一家の住むホテルの階段にいたマッテオは、今さっき暗い部屋で愛を確かめたアラベッラが外からホテルに入ってきたので困惑します。そこに伯爵夫妻とマンドリカも飛び込んできます。混乱の中、当然アラベッラは身の潔白を主張しますが、それでもマンドリカは彼女が裏切ったと罵り彼女を強く非難します。アラベッラはその屈辱をはっきりと拒絶しますが、その中でマンドリカはマッテオに決闘を申し込みます。
そのとき、女性の姿をしたズデンカが部屋から出てきて、死を選ぶと言いながら皆にすべてを告白しました。マッテオはズデンカが女性と知って、また、その純愛に心を打たれます。二人は結婚を誓います。自制を失って恥じ入るマンドリカに、アラベッラはすべてを忘れましょうと声をかけました。見物人も含め、皆は自身の部屋に戻っていきます。
そして、アラベッラも、マンドリカの家来に水を一杯、持ってくるように頼んで部屋に戻ります。一人になって打ち沈むマンドリカ。そこにグラス一杯の水を持ったアラベッラが現れます。アラベッラは、この夜に私の娘時代が終わると言って手にしたグラスをマンドリカに捧げたのでした。
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【1】 R.シュトラウスとホーフマンスタールの最後の作品
『エレクトラ』以来、ホーフマンスタールの台本にR.シュトラウスが作曲する形で、計6作のオペラが生まれましたが、この『アラベッラ』はその最後の作品です。R.シュトラウスは、早くから第2の『ばらの騎士』を作曲したいと考え、『アラベッラ』は同じウィーンを舞台とする喜劇的オペラとして、『ばらの騎士』の姉妹作とも言える傑作です。二人は相談しながら台本を作成していきましたが、第1幕の最終稿をR.シュトラウスに送付したホーフマンスタールは、その一人息子が自殺すると、その後を追うように亡くなってしまいます。第2幕、第3幕は暫定的な草稿でしたが、これを使用して、R.シュトラウスはオペラを完成させました。
【2】 圧倒的な音楽の力
全体的に喜劇的なストーリーに合わせたR.シュトラウスの豊かな音楽が続きますが、第2幕のアラベッラとマンドリカの婚約の二重唱と、第3幕のラストで同じくアラベッラとマンドリカによるグラス一杯の水をめぐるやりとりは、その場で美しい音楽によってまるで時間が止まったかのように感じられる瞬間を味わうことができます。また、第1幕のアラベッラとズデンカの二人のソプラノによる二重唱も、民謡風の旋律に導かれて、美しい場面を作り出しています。
【3】 登場人物たちの様々な感情
貴族の女の子を育てるにはお金がかかるので男の子としてズデンカを育てるという設定は、まったく現実離れした創作ですが、その設定が第3幕のカオスを生み出します。さっきは同じ部屋にいたはずのアラベッラが外からホテルのロビーに入ってきて驚くマッテオ、あらぬ疑いをかけられて当然拒絶するアラベッラ、彼女のことを信じたいが信じられない状況しか見えないマンドリカ、それまでだらしがない行動をしてきたものの、ここは娘を信じる父親としてふるまうヴァルトナー伯爵など、それぞれの気持ちについて納得することができます。登場人物たちの様々な感情を味わうことができるでしょう。
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【CD】
サヴァリッシュ指揮
バイエルン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
ヴァラディ(S) マティス(S) フィッシャー=ディースカウ(Br) ベーメ(Bs) ホプファーヴァイザー(T)
(録音1977年、Golden Melodram) |
ヴァラディとフィッシャー=ディースカウのコンビによるアラベッラ。二人の声の技術が堪能できます。
【DVD】
ティーレマン指揮、シェンク演出
メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱団
テ・カナワ(S) マクローリン(S) ブレンデル(Br) マッキンタイア(Bs) キューブラー(T)
(録音1994年、Deutsche Grammophon) |
テ・カナワが美しく表情豊かなアラベッラを打ち出しています。マンドリカのブレンデルも存在感のある堅実な歌いぶり。マッキンタイアはコミカルな役をうまく演技していて秀逸な出来です。オーソドックスな演出で安心して見られます。
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