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【作曲】 ピエトロ・マスカーニ(1888〜90年)
【初演】 1890年5月17日 ローマ、コンスタンツィ劇場
【台本】 タルジョーニ=トッツェッティとグィード・メナーシ(イタリア語)
【原作】
ジョヴァンニ・ヴェルガの小説『カヴァレリア・ルスティカーナ』と同名の戯曲
【演奏時間】 全1幕 約1時間10分
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【時と場所】 1890年頃、イタリアのシチリア島
【登場人物】
サントゥッツァ(Ms): 若い村娘
トゥリッドゥ(T): 兵隊帰りの青年
ルチア(Ms): トゥリッドゥの母
アルフィオ(Br): 馬車屋
ローラ(Ms): アルフィオの妻
ほか
【第1幕】
時は1890年頃、舞台はイタリアのシチリア島にある村。復活祭の朝、村娘のサントゥッツァは、恋人のトゥリッドゥの母である居酒屋の女将ルチアに会いに行きます。そして、恋人のトゥリッドゥはどこに行ったのかと問いました。実はサントゥッツァは昨夜、彼が昔の恋人ローラの家の近くにいたことを聞いていたのです。ローラはトゥリッドゥが戦争に行っているときに馬車屋アルフィオの妻となってしまい、トゥリッドゥはその気晴らしにサントゥッツァと付き合っていました。それはそれでうまくいっていたのですが、嫉妬深いローラは人妻にもかかわらず、再び彼に接近して彼の気を奪ったのでした。
トゥリッドゥを奪われたサントゥッツァは悲しみますが、彼の母ルチアとしても何もできません。やがて礼拝の時間となり、ルチアを始め人々は教会に入っていきます。サントゥッツァは結婚の前に男性と関係を持ったため教会には入れず、外にひとり残されました。
そこへトゥリッドゥがやってきます。サントゥッツァは彼に昨夜の居場所を問い詰めましたが彼は聞く耳を持ちません。それどころかそこへやって来たローラとともに教会に入っていこうとします。サントゥッツァは彼にすがりつきましたが、突き倒されました。
サントゥッツァが地に伏せて悲しんでいると、そこにローラの夫アルフィオが通りかかります。激昂していたサントゥッツァは、アルフィオに事の次第を打ち明けました。アルフィオはそれを聞いて激怒しトゥリッドゥへの復讐を誓いますが、我に返ったサントゥッツァはトゥリッドゥの命を心配して後悔しました。
教会から出てきたトゥリッドゥは、母ローラの居酒屋で友人達と酒を飲んでいました。そこへアルフィオが現れたので、トゥリッドゥは彼にも酒を勧めましたが、アルフィオはそれを拒みます。異様な雰囲気からトゥリッドゥは全てを察し、アルフィオに決闘を申し込みます。トゥリッドゥは酔ったふりをして母ルチアに別れを告げて、もし死んでしまったらサントゥッツァの面倒をみてほしいと頼み、決闘の場へ向かいました。
決闘の結果、人々の悲鳴と共に「トゥリッドゥが殺された」と村娘が叫ぶ声が聞こえ、母ルチアとサントゥッツァは気を失い、地に倒れたのでした。
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【1】 オペラ作曲コンクールの優勝作
イタリアの楽譜出版社ソンツォーニョ社は、同じ楽譜出版社リコルディ社に対抗するために、一幕もののオペラを懸賞募集しました。1889年、その第2回選考会で一等に当選したのが、当時26才のマスカーニが作曲した『カヴァレリア・ルスティカーナ』でした。その翌年に初演されることとなりましたが、興奮した客が叫び立つほど大成功を収め、マスカーニは若くして世界的な名声を手に入れました。この後もマスカーニはオペラを作曲し15の作品を残しましたが、この『カヴァレリア・ルスティカーナ』ほどのヒットを飛ばすことはできませんでした。
【2】 シチリアの薫り
このオペラは写実主義と呼ばれるヴェリズモ・オペラの代表作です。日常生活に密着した現実の生々しさを見事に表現しており、このオペラの成功は、その後、同傾向の作品を生む一種のブームを作りましたが、結局、成功したのはわずかのオペラでした。『カヴァレリア・ルスティカーナ』を訳せば、「田舎の騎士道」という意味。ここでは、イタリア南部の息吹が強烈に表現されています。余談ですが、マスカーニはオペラの最後の場面「トゥリッドゥが殺された」と村娘が叫ぶ部分から作曲し始めたそうです。
【3】 劇的な表現の裏に美しい音楽
ヴェリズモ・オペラらしく、この『カヴァレリア・ルスティカーナ』というオペラは、全編を通して劇的な描写に富んでいますが、それに加えて流麗な旋律が効果的に存在するところに人気の秘密がありそうです。例えば、前奏曲でハープの伴奏にのってトゥリッドゥによって歌われるシチリアーナはこのオペラの雰囲気に客席を一気に引き込みますし、サントゥッツァのリードから始まる敬虔で壮麗な合唱も感動的です。そして何と言っても劇的なラストシーンの直前に置かれた間奏曲は、「カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲」としてクラシック音楽の中でも最も人気のある曲として知られています。
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【CD】
プレートル指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
オブラスツォワ(Ms) ドミンゴ(T) バルビエリ(Ms) ブルゾン(Br) ガル(Ms)
(録音1983年、PHILIPS)
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人気オペラにもかかわらず、案外、新しいディスクでおすすめが見つからないのがこのオペラの惜しいところ。トゥリッドゥ役をドミンゴが歌ったこのディスクは、全体的にも音楽的なバランスが取れており、安心して聴くことができます。
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