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さまよえるオランダ人






オペラ・データ

【作曲】
リヒャルト・ワーグナー(1840〜41年)

【初演】
1843年1月2日 ドレスデン、ザクセン州立歌劇場(ゼンパー・オーパー)

【台本】
作曲者ワーグナー自身による(ドイツ語)

【原作】
ハインリヒ・ハイネの小説『フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想』ほか

【演奏時間】
第1幕 50分
第2幕 55分
第3幕 25分  合計 約2時間20分
(全体を1幕として通して上演されることも多い)



あらすじ

【時と場所】 
18世紀、ノルウェー

【登場人物】
オランダ人(Br): 呪われた船の船長
ゼンタ(S): ダーラントの娘
エリック(T): 猟師、ゼンタの恋人
ダーラント(Bs): ノルウェーの船長
ほか

【第1幕】
時は18世紀。舞台はノルウェーの海岸。その昔、嵐に襲われた船のオランダ人船長が、その荒波に対して「私は永遠に止まることなく乗り切ってみせる」と豪語したために、その船は悪魔に呪われてしまい、オランダ人船長は死ぬことも許されずに、永遠に海をさまよい続けることになりました。この呪いを解くためには、7年に1度許される上陸の機会に、オランダ人船長に「永遠の愛」を誓う女性が現れなければなりません。
そして時は過ぎ、7年の周期にあたるある日、オランダ人の船は船長ダーラントの乗るノルウェー船に出会います。オランダ人はダーラントにひとりの娘がいることを聞き、結婚を申し込みます。ダーラントはオランダ人の船に積んであった財宝の数々に目がくらみ、娘との結婚を快諾。2隻の船はダーラントの故郷に向かいました。
 
【第2幕】
さまよえるオランダ人の伝説は人々によく知られていました。ダーラントの娘ゼンタは、自分こそがオランダ人を救う聖なる女性なのだと信じていました。そこへ、航海を終えた父ダーラントが見知らぬ男を連れて帰ってきたのです。オランダ人との結婚による利益を説く父を尻目に、ゼンタはオランダ人と運命によって引きつけられたことに感動しつつ、永遠の愛を誓うのでした。
 
【第3幕】
2隻の船が停泊する港では、ノルウェー船の水夫やその妻たちが無事に帰還できたことを祝っています。しかし、呪われたオランダ人の船からは、暗い運命を嘆く歌が聞こえてきます。
さて、ゼンタには、実はエリックという恋人がいました。エリックはゼンタが自分を裏切ったことを責めます。かつて自分たちは愛し合っていたのに……、と。このとき、その話を物陰から聞いていた者がいました。オランダ人です。所詮永遠の愛など存在しないのだと絶望したオランダ人は、船に乗り込み出航します。オランダ人の船が岸から遠のくときゼンタは、オランダ人に対する真の愛を誓って海に身を投げました。すると、呪われた船は海に沈み、オランダ人とゼンタの体は、空から一条の光を浴びて、天に昇っていきます。ゼンタの死とともに、オランダ人は呪いから救済されたのでした。



解説(ポイント)

【1】 ワーグナーはオペラのスペシャリスト
 
ワーグナーは、初期の習作で上演機会の少ない『妖精』『恋愛禁制』『リエンツィ』の3作品のオペラを書いた後、10作品のオペラを残しています。この10作品すべてが名作というように、名実とともに大オペラ作曲家だったわけですが、『さまよえるオランダ人』は、その10作品の中の第一作目に当たります。ワーグナー28才のときの作品です。
 
【2】 ワーグナーのオペラ、入門編
 
この『さまよえるオランダ人』は、ワーグナー最初期の作品というだけあって、作曲に使っている手法もより易しく、初めてワーグナーのオペラを観る人にも最適なオペラです。アリア、二重唱、合唱などの聴きどころも、しっかりとクローズアップされているので、音楽を堪能することができます。また、「呪われたオランダ人の動機」や「ゼンタの救済の動機」など、ワーグナー作品の特徴である示導動機(モティーフ)にも慣れることができるでしょう。
 
【3】 オランダ人のモノローグ
 
このオペラで、注目すべき登場人物といえば、やはりタイトルにもなっている「オランダ人」でしょう。オランダ人の役を歌う歌手の出来によって、オペラ全体の成功も左右されます。特に第1幕での登場シーンでは、自分の呪われた運命を歌う長大なモノローグ(一人語り)が用意されています。この作品を書いた後、オペラに憑(つ)かれたワーグナーの人生の始まりをも象徴するかのような独白です。



おすすめディスク

【CD】
レヴァイン指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱団
モリス(Br) ヴォイト(S) ヘップナー(T) ローテリング(Bs)
(録音1994年、SONY CLASSICAL)
 
メトロポリタン歌劇場の望みうる最高のキャストが揃ったディスク。レヴァインがオーケストラをうまく操っているのはさすがです。アメリカを代表するモリスのオランダ人が、最高の聴きどころ。エリック役のヘップナーの丁寧な歌唱も印象的です。







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