2023年新刊
名作オペラをやさしく解説
面白いほどわかる!
オペラ入門
名アリア名場面はここにある
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,800円+税
詳しくはこちら
|
オペラのことをいちから学ぶ
声、歌、音楽、演出について
オペラ鑑賞講座 超入門
楽しむためのコツ
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,600円+税
詳しくはこちら
|
「オペラ情報館」が
本になりました
オペラにいこう!
楽しむための基礎知識
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,600円+税
詳しくはこちら
|
|
【作曲】 リヒャルト・シュトラウス(1909〜10年)
【初演】 1911年1月26日 ドレスデン、宮廷歌劇場
【台本】
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール(ドイツ語)
【演奏時間】
第1幕 70分
第2幕 60分
第3幕 65分 合計 約3時間15分
|
【時と場所】 18世紀中頃、マリア・テレジア治下のウィーン
【登場人物】
元帥夫人(S): 陸軍元帥の妻、貴婦人
オックス男爵(Bs): 好色な田舎貴族
オクタヴィアン(Ms): 伯爵家の若き貴公子
ゾフィー(S): オックス男爵の婚約者
ファーニナル(Br): 新興貴族、ゾフィーの父
ほか
【第1幕】
時は18世紀中頃、舞台はウィーンの陸軍元帥の館。元帥夫人は夫の留守中、寝室にまだ若く、そして美しき貴公子オクタヴィアンを招き入れ、一夜を過ごしていました。早朝、そこへ突然オックス男爵が訪ねてきます。元帥夫人のいとこである男爵は、好色で知れた田舎貴族。女装をして小間使いに変装したオクタヴィアンをも口説こうとします。そんなオックス男爵が元帥夫人を訪ねてきたのは、彼が裕福な新興貴族ファーニナルの娘ゾフィーと婚約したので、彼女に「銀のばら」を贈る「ばらの騎士」を紹介してほしいと頼みにきたからでした。元帥夫人はばらの騎士としてオクタヴィアンを推薦します。オックス男爵は納得して帰っていきました。
元帥夫人は若かった昔のことを思い出しながら、時の移ろいに憂いを感じていました。そして、オクタヴィアンに、いずれ私より若く、美しい人のために私のもとをから立ち去るでしょうと話します。オクタヴィアンはそれを否定しましたが、すっかり拗(す)ねてしまって館をあとにしました。
【第2幕】
正装したオクタヴィアンは裕福な新興貴族ファーニナルの館を訪れ、娘のゾフィーに銀のばらを贈ります。このときオクタヴィアンとゾフィーはお互いに一目惚れしていました。
続いてオックス男爵の登場です。彼は婚約者のゾフィーに下品な物言いをし続けたので、ゾフィーはすっかりこの結婚が嫌になってしまいました。そして彼女はオクタヴィアンに助けを求めます。オックス男爵の下品な態度に怒ったオクタヴィアンは成り行きでとうとう剣を抜き、彼と決闘となりました。もともと弱虫の男爵は、ちょっと怪我をしただけで大げさに騒ぎます。ゾフィーの父ファーニナルはこんな事態になったことに怒り、娘を叱りつけました。
騒ぎが一時おさまったとき、オックス男爵に一通の手紙が届きます。それは元帥夫人の小間使いからのお誘い。実はオクタヴィアンの仕組んだものでしたが、男爵は喜んで会いに行きました。
【第3幕】
郊外にある居酒屋の一室に、オックス男爵と小間使いに扮して女装をしたオクタヴィアンがいます。オクタヴィアンは散々、男爵をからかった後にその醜態をゾフィーの父ファーニナルに見せたので、ファーニナルも愛想を尽かしました。
そこへ元帥夫人がやってきます。元帥夫人は男爵にこれ以上の醜態をさらすことなく立ち去るように言い、オックス男爵は引き下がりました。
そこに残ったのは、元帥夫人とオクタヴィアン、ゾフィーの3人。2人の女性の間でオクタヴィアンは戸惑います。そのとき、元帥夫人は身を引くことを決心し、静かに立ち去ったのでした。その後二人になったオクタヴィアンとゾフィーは、抱き合いながら愛を誓い合ったのでした。
|
【1】 R.シュトラウスとモーツァルト
『サロメ』と『エレクトラ』の2つのオペラで成功したR.シュトラウスは「次はモーツァルト・オペラを書く」と言って、『エレクトラ』でタッグを組んだホーフマンスタールに再び台本を書いてもらって作曲に取りかかりました。音楽評論家の吉田秀和氏は一番好きなオペラは何かと聞かれて、モーツァルトを除けば『ばらの騎士』であると答えています。ちなみに婚約した相手に「ばらの騎士」が「銀のばら」を贈るという習慣は、このオペラの作り話です。しかし、それが物語の大きな起点となっています。
【2】 オペラの到達した最高傑作
元帥夫人とオクタヴィアンの関係は、モーツァルトの『フィガロの結婚』に出てくる伯爵夫人とケルビーノを思い起こさせます。また、R.シュトラウスは、オックス男爵を単なる喜劇の登場人物とせず、その人間性までも描ききっていて、ヴェルディの『ファルスタッフ』に劣らない魅力を持たせています。音楽面では、ワーグナーの管弦楽法をさらに進め、さらにワルツを取り込んだところにJ.シュトラウスの『こうもり』とも比較されます。『ばらの騎士』は、過去の傑作オペラの延長線上に到達された最高点だったのではないでしょうか。
【3】 美しい場面の連続
具体的には、まず憂いを深める元帥夫人の存在が大きいです。元帥夫人の思いを込めた歌の部分に、このオペラの主題でもある「時の移ろい」が強く感じられ、オペラを一層深いものとしています。また、ばらの騎士オクタヴィアンと若い娘ゾフィーが一目で恋に落ちるシーンはオペラの真骨頂とも言えるでしょう。そして、R.シュトラウスの葬儀でも使われた(注)第3幕最後の場面での美しい三重唱や、それに続く恋人たちの二重唱など、うっとりとするようなオペラらしい美しい場面が連続しています。
(注)R.シュトラウスの遺言によってゲオルグ・ショルティの指揮によって演奏されました。元帥夫人はマリアンヌ・シェシュ、オクタヴィアンはモード・クーニッツ、ゾフィーはゲルダ・ゾンメルシュー。歌手たちは次々と涙にくれてその歌声はとぎれがちだったそうです。(ショルティの自伝より)
|
【CD】
カラヤン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
トモワ=シントウ(S) モル(Bs) バルツァ(Ms) ペリー(S)
(録音1982年、Deutsche Grammophon) |
|
|
オペラとして完成度の高い作品だけあって、多くの名盤が存在します。ここでは、帝王カラヤンの完璧な演奏を採ってみました。オールマイティの良さを味わいたいところです。歌手陣も安定しています。
【DVD】
ショルティ指揮、シュレジンジャー演出
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
テ・カナワ(S) ハウグランド(Bs) ハウェルズ(Ms) ボニー(S)
(録音1985年、Warner Classics) |
|
|
貴婦人としてテ・カナワの堂々とした存在。田舎貴族を嫌みなほど見せつけるハウグランドの男爵役。若くして心の強さを持つボニーのゾフィーなど、この映像は歌手のバランスがとてもいい。コヴェント・ガーデンの豪勢な舞台も魅力的です。
【DVD】
ビシュコフ指揮、カーセン演出
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
ピエチョンカ(S) ハヴラタ(Bs) キルヒシュラーガー(Ms) パーション(S)
(録音2004年、DENON) |
|
|
このカーセンの演出は、設定を21世紀初頭に読み替えています。センスのいい舞台です。キルヒシュラーガーをはじめとした主役の歌手たちの歌唱、演技とも楽しめます。
|
|