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カルメル会修道女の対話

Dialogues des carmélites





オペラ・データ

【作曲】
フランシス・プーランク 1953~1956年に作曲

【初演】
1957年1月26日 ミラノ、スカラ座

【台本】
作曲家自身(フランス語)

【原作】
ジョルジュ・ベルナノスの戯曲『カルメル会修道女の対話』

【演奏時間】
第1幕 65分
第2幕 45分
第3幕 40分  合計 約1時間50分



あらすじ

【時と場所】 
フランス革命期、パリとコンピエーニュ

【登場人物】
ブランシュ(S): 侯爵家の娘
修道院長(A): カルメル会の修道女 
新修道院長(S): カルメル会の修道女 
マザー・マリー(Ms): カルメル会の修道女
コンスタンス(S): カルメル会の修道女
フォルス侯爵(Br): ブランシュの父
騎士フォルス(T): ブランシュの兄
ほか

【第1幕】 
時は1789年、舞台はパリ、そしてコンピエーニュにあるカルメル会修道院。侯爵家の娘ブランシュは、生まれたときに母を亡くし、内気で怖がりに育ちました。フランス革命期の不穏な世にあって、ブランシュは、コンピエーニュにあるカルメル修道会に入会します。そして、修道院で同じ若い修道女コンスタンスと知り合いました。その頃、修道院の院長が重い病で亡くなります。ブランシュは、死への怖れと闘う院長の最期を見届けました。

【第2幕】 
新しい修道院長は、修道女たちを前にした挨拶で、教会にとって平和な時代が終わりつつあると述べます。革命の足音が迫る中、ブランシュの兄の騎士フォルスは、外国に逃れることにしますが、密かに妹と面会し、ブランシュに父の元に戻るように言いました。修道院もすでに安全ではないと説得しましたが、ブランシュはこれを拒否し、修道院に残ります。しかし、フランス立法議会は、すべての宗教施設の閉鎖を決定し、コンピエーニュの修道院も例にもれず、修道女たちは立ち退きを命じられました。

【第3幕】 
ブランシュはパリの侯爵家の屋敷に戻りましたが、父の侯爵はすでに数日前、処刑されていました。そこに修道女のマザー・マリーが訪れてきて、ブランシュに修道女たちの秘密集会の場所を教えます。しかし、ブランシュは怖がり、そこには行けないと断りました。
その後、ブランシュは、修道女たちが逮捕されたことを知ります。1794年7月17日、修道女たち15人は、次々と断頭台に上がりました。最後の修道女コンスタンスが台に上がったとき、群衆をかきわけて向かってくるブランシュと目が合います。ブランシュは驚く群衆を後目に、信じられないほど平静に、自身も16人目の修道女として断頭台へと上がったのでした。



解説(ポイント)

【1】 宗教的な主題、本格的オペラ
 
プーランクは独学で作曲を学び、特に多くの歌曲、声楽曲の傑作を残しました。「声」の扱いが巧みだったプーランクは、当然オペラに関心がありました。オペラ1作目の『ティレジアスの乳房』で軽妙な、そして、シュールな世界を描き出し、オペラ界に新鮮な空気を吹き込んだ後、2作目のオペラとして取り組んだのがこの『カルメル会修道女の対話』です。1953年、リコルディ社からミラノ・スカラ座のためにオペラを委嘱されます。同年8月から作曲を始めたプーランクは、作曲に熱中し、精神的にも病みつつ、前作と正反対の宗教的な重い主題を持つ作品を完成させました。
 
【2】 フランス革命期の殉教者たち
 
原作は、女流作家ゲルトルート・フォン・ル・フォールの小説『断頭台の最後の一人』からジョルジョ・ベルナノスが戯曲化したもので、実話に基づきます。フランス革命期の恐怖政治で貴族のほかに教会や宗教者の富の独占に対しても抗議が起こり、教会は抑圧され、宗教者は追放もしくは殺害されました。カトリック教会のカルメル修道会も例にもれず、コンピエーニュにあった修道院は閉鎖されます。信心深い修道女たちは秘密裏に集会を重ねていましたが、見つかり逮捕され、16人の修道女は処刑されました。そのとき集会に出ていなかった一人(オペラでは、マザー・マリー)が回想録を残したことからドラマが生まれました。オペラではブランシュが悩み、戸惑いながらも、殉教の道を選ぶことが描かれています。
 
【3】 断頭台の露と消える衝撃のラスト
 
歌を知り尽くしたプーランクの作曲技法により、この抽象的で内面的なオペラが引き立ちます。その意味では、ドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』にも通ずる心理オペラとなっています。繊細なオーケストラ部分もそれを補完しています。注目は、何と言っても有名な最終場面。断頭台に上がる修道女たちの祈りの歌と、断頭台の刃の音との強烈な表現は、いつ聴いても圧倒的です。



おすすめディスク

【CD】
ナガノ指揮
リヨン・オペラ座管弦楽団、合唱団
デュボス(S) ヴァン・ダム(Br) ヴィアラ(T) フルニエ(S) デュピュイ(Ms)
(録音1990年、EMI CLASSICS)
ケント・ナガノのシャープな指揮が冴えわたるリヨン・オペラの演奏。ヴァン・ダムをはじめ、歌手陣も手堅く、名盤の一つ。


【DVD】
ロレル指揮、ピィ演出
フィルハーモニア管弦楽団、シャンゼリゼ劇場合唱団
プティボン(S) ロワヨン(Br) レーティプ(T) ピオー(S) コッホ(Ms)
(録画2013年、ERATO)
シンプルで、静かな舞台に、鬼気迫る音楽で、このオペラの理想的な上演になっています。特にすごいのは女声の歌手陣。プティボン、ピオー、コッホ、ジャンスとフランスの名花が勢ぞろいしています。







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