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【作曲】 リヒャルト・ワーグナー(1862〜67年)
【初演】 1868年6月21日 ミュンヘン、宮廷歌劇場
【台本】 作曲者ワーグナー自身による(ドイツ語)
【原作】 実在の人物ハンス・ザックスの関連書
【演奏時間】
第1幕 80分
第2幕 60分
第3幕 120分 合計 約4時間20分
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【時と場所】 16世紀中頃、ドイツのニュルンベルク
【登場人物】
ザックス(Br): 靴屋、マイスタージンガー
エーファ(S): ポーグナーの娘
ヴァルター(T): 若い騎士
ベックメッサー(Br): 市の書記官、マイスタージンガー
ダーヴィット(T): ザックスの徒弟
ポーグナー(Bs): 金細工師、マイスタージンガー
ほか
【第1幕】
時は16世紀中頃、舞台はドイツのニュルンベルク。この街にやって来た騎士ヴァルターは、聖カタリナ教会でエーファと出会い、二人は互いに惹かれ合いました。しかし、エーファの父で金細工の親方ポーグナーは、明日、聖ヨハネ祭で行う歌合戦の優勝者に全財産とエーファを与えることとしていました。そこでヴァルターは靴屋の徒弟ダーヴィットから急いで「歌の規則」を学びますが、あまりに厄介な規則に閉口します。それでもヴァルターは歌合戦に出場するための資格試験を受け、堂々と自分の歌を歌い始めました。このとき試験の記録係をしていた市の書記官ベックメッサーは、自身もエーファとの結婚を狙っていました。彼はヴァルターというライバルの出現を快く思わず、厳格に採点して失格にさせます。そのとき靴屋の親方ザックスは、ヴァルターの歌に新しい可能性を感じていました。
【第2幕】
ヴァルターが試験に落ちたことを知ったエーファは、親方ザックスに相談しようとしますが、彼は話をはぐらかします。実はこのザックスも、遠い昔に妻を亡くし、エーファに愛情を持っていた一人でした。しかし、彼は若いヴァルターとエーファのことを考え、自分の想いを諦めることとします。一方で、彼は二人が駆け落ちしようとするのをさりげなく邪魔します。彼にはある考えがあったのです。
かたや書記官ベックメッサーはというと、エーファにセレナーデを捧げようと、その夜、夢中で歌います。その歌の記録係を買って出たザックスは、「歌の規則」から逸脱する度に靴底をハンマーで叩いてその誤りを指摘しました。
【第3幕】
翌朝、自らの家にヴァルターを招き入れたザックスは、ヴァルターが見た夢を歌にするように勧め、「歌の規則」に従って一つの歌を完成させます。二人がその場を去った後、そこにベックメッサーが現れて、歌が書かれた紙を見つけます。ザックスが戻り、ほしいなら進呈しようと言うと、ザックス作だと勘違いしたベックメッサーは喜んでもらい受けます。
そして、ペグニッツの野原で歌合戦が始まります。親方たちや民衆が集まる中、まずベックメッサーが、ザックスからもらった歌を歌いました。しかしそれは他人の作品。「歌の規則」は間違えるし、歌詞もうろ覚えで、大失敗します。このときザックスは、この歌の真の作者としてヴァルターを迎え入れます。ヴァルターはその歌「朝はばら色に輝き」を歌い、民衆を感動させ、優勝しました。
ヴァルターは、エーファとの結婚を実現させましたが、彼女の父ポーグナーから親方(マイスタージンガー)の称号を譲ろうと言われたのを拒否します。しかし、ザックスは彼に伝統芸術を継承する大切さを説きました。人々はザックスの徳を讃えたのでした。
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【1】 ワーグナーの唯一の喜劇オペラ
このオペラは、初期の習作的な作品を除いて、ワーグナーのオペラの中で唯一の喜劇的なオペラとなっています。前作の『トリスタンとイゾルデ』が半音階的な手法、つまり滑らかな流れの中で淡い感じの音楽なのに比べ、『マイスタージンガー』は全音階的な手法により、はっきりとした明るい音楽を持ち味にしています。演奏時間も4時間半に及び、第3幕の歌合戦に向けて、壮大なドラマが作られます。このように祝典的な輝かしいオペラにもかかわらず、登場人物が靴屋だったり、市の書記官だったりと地味なところもおもしろいですね。
【2】 実在したハンス・ザックス
中世ドイツでは商工業が発展して、織物工、パン屋などあらゆる職業分野において同職組合が組織されていきます。それぞれの職種で、職人として研鑽を積み、試験に合格することで、晴れて親方の地位が手に入りました。マイスタージンガー(職匠歌人)もその組合の一つで、例えば、靴工、板金工、理髪師などの職人が入っていて、毎月一度のコンテストでその歌の技術を競い合っていました。親方試験に合格するとマイスタージンガーの称号を得たのです。ザックスは実在したマイスタージンガーで、6000を超える作品があります。本人も50代で妻に先立たれていますが、実際はその後再婚したそうです。
【3】 ワーグナーの目指した芸術
このオペラで、貧乏くじを引くことになるベックメッサーは、当時、ワーグナーを批判の対象として攻撃していたハンスリックという音楽批評家をモデルとしていました。ワーグナーは守旧派としてハンスリックを自分のオペラに登場させ、ヴァルターという新しい芸術を体現するものがそれに打ち勝つという構図を作って、自らの芸術を賛美しています。それを実証するかのように、ヴァルターの歌はとても見事なものです。そして、もう一つ、ワーグナーは最後にドイツの伝統芸術のすばらしさをも主張しています。ワーグナー自身の芸術、そしてドイツの芸術のすばらしさを、オペラそのもので歌い上げた作品なのです
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【CD】
バレンボイム指揮
バイロイト祝祭管弦楽団、合唱団
ホル(Bs) マギー(S) ザイフェルト(T) シュミット(Br)
(録音1999年、TELDEC) |
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歌合戦がメイン・イベントのこのオペラでは、やはり主役テノールにがんばってもらいたいものです。このディスクでは、ヴァルター役のザイフェルトがすばらしい声を持って次から次へと歌を折り重ねていきます。ホルの安定したザックス役も、この演奏時間の長いオペラを安心して聴かせてくれます。指揮者バレンボイムの手腕も見事。
【DVD】
シュタイン指揮
バイロイト祝祭管弦楽団、合唱団
ヴァイクル(Br) ヘガンダー(S) イェルザレム(T) プライ(Br)
(録音1984年、Deutsche Grammophon) |
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ヴォルフガング・ワーグナーの演出で、正統派の舞台を見ることができます。ドイツを代表するザックス歌いのヴァイクルと、好敵手ベックメッサーを当たり役としているプライという組み合わせが完璧。ヴァルター役のイェルザレムも巧い。(輸入盤)
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