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【作曲】
リヒャルト・シュトラウス 1906〜08年に作曲
【初演】
1909年1月25日 ドレスデン、ザクセン州立歌劇場
【台本】
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール(ドイツ語)
【原作】
ソフォクレスの悲劇『エレクトラ』
【演奏時間】
全1幕 約1時間45分
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【時と場所】
ギリシャ神話の時代、ミケーネの王宮
【登場人物】
エレクトラ(S): アガメムノンの長女
クリテムネストラ(Ms): アガメムノンの妻
エギスト(T): クリテムネストラの情夫
クリソテミス(S): アガメムノンの次女
オレスト(Br): アガメムノンの長男
ほか
【全1幕】
時はギリシャ神話の時代、舞台はミケーネの王宮の中庭。トロイ戦争の英雄であり、ギリシャ側の総大将アガメムノンの娘エレクトラは、亡き父の復讐を誓います。アガメムノンはミケーネに帰還後、妻クリテムネストラとその不倫相手エギストによって、入浴中に殺害されていたのです。
他方、エレクトラの妹クリソテミスは、女性として幸せな暮らしをしたいとして、母への復讐に反対します。このような妹をエレクトラは嘲笑し、追い払いました。
母でもあり、女王でもあるクリテムネストラは、毎夜、行方知らずとなっていた子オレストに殺される悪夢を見続けていました。エレクトラは、その母に対し、弟のオレストが父の命を奪った手斧を振って復讐を実現するだろうと脅します。
しかし、侍女から耳打ちされたクリテムネストラは、勝ち誇った顔で王宮の中に帰ってしまいました。エレクトラは、妹のクリソテミスから、見知らぬ老人と青年の二人が、オレストが死んだという知らせを持ってきたと聞きました。実はその青年自身がオレスト本人であり、彼は身分を隠して帰郷していたのです。妹の言うことが信じられないエレクトラは、自分で手斧を握り、復讐に向かおうとします。
そのときエレクトラは、王宮の中庭で、知らせを持ってきた青年と出会います。会話を交わした二人は、お互いが父の復讐を果たそうとする姉と弟であることに気がつきました。オレストが生きていたことに歓喜するエレクトラ。オレストは、同行していた老人とともに王宮の中に入ると、王宮の中からクリテムネストラの断末魔の叫び声がします。そこに駆けつけたエギストも王宮に入りますが、彼も叫び声をあげます。
クリソテミスが王宮から出てきて、オレストが敵を討ったことを姉に伝えました。勝利にエレクトラは狂喜乱舞します。そして、そのまま倒れ、動かなくなったのでした。
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【1】 R.シュトラウスとホーフマンスタールの最初の作品
トロイ戦争のギリシャ側の英雄アガメムノンは、都市国家ミケーネの王であり、多くの伝説が残っています。アガメムノンは、クリテムネストラの夫を殺して自分の妻としていました。クリテムネストラは、10年続いたトロイ戦争の間にエギストと通じ、戦争から帰還したアガメムノンを殺害したのです。父を敬愛していた娘のエレクトラは幽閉され、息子のオレストは乳母とともに国外に逃れました。そして姉弟は、時機を見て、敵のエギストと実の母を討つことになったのです。この物語をホーフマンスタールは『「ソフォクレスによる」1幕ものの悲劇』として戯曲を創作し、これは成功作となりました。R.シュトラウスは、これをオペラ化したいと提案します。このときからR.シュトラウスとホーフマンスタールは6つのオペラを共同で創作し、オペラ史に大きな功績を残しました。
【2】 夜と光のエレクトラ
R.シュトラウスは、ホーフマンスタールに『エレクトラ』のオペラ化を申し出て作曲に取りかかったものの、前作の『サロメ』と似たような内容である『エレクトラ』を題材として果たして新鮮な音楽を書くことができるのか、不安に感じたようです。このときホーフマンスタールは、両者が似ている点は全く外形的なものに限り、「サロメの色彩は赤紫と青紫のような沈鬱な雰囲気、これに対してエレクトラは、夜と光、暗闇と光明の混合」であると説明しました。オペラ『サロメ』で成功したR.シュトラウスにとって、聴衆や評論家たちの期待に応えるべく次作にかける思いは強かったと想像できます。『サロメ』に勝るとも劣らないオペラ『エレクトラ』が完成し、初演以降、世界中で上演され、成功を収めました。
【3】 巨大な音楽と難役
『エレクトラ』の音楽は、『サロメ』よりもまたさらに前衛的で、その音響効果には当時も騒がれました。すでにR.シュトラウスの作曲技法は成熟していたと言えるでしょう。オーケストラの規模も大きく、圧力がかかりますが、歌手の歌う言葉はシュプレヒゲザングの手法により歌い、語られます。最初から最後まで舞台に出ずっぱりのエレクトラ役は、ドイツ系ソプラノ歌手にとってかなりの負担を強いる難役です。また、敵対する母クリテムネストラも、メゾ・ソプラノ歌手の力量が試されます。オペラの最後では、エレクトラは倒れ、その後、クリソテミスが王宮の扉を叩きながらオレストを呼びますが、王宮内で敵を討ったオレストの反応はなく、そこで幕となることから、演出上も様々な解釈が提示されています。
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【CD】
ショルティ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
ニルソン(S) リザネック(Ms) コリアー(S) クラウゼ(Br) シュトルツェ(T)
(録音1966年、DECCA) |
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『指環』の録音を終えたショルティとニルソンで、今度は『エレクトラ』を実現。はっきりとした輪郭のある音楽でわかりやすい。
【CD】
シノーポリ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
マルク(S) シュヴァルツ(Ms) ヴォイト(S) レイミー(Br) イェルザレム(T)
(録音1995年、Deutsche Grammophon) |
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マルクとヴォイトの迫力ある歌唱に圧倒されそうです。ここでも、シノーポリが最良の音楽を引き出しています。
【DVD】
ウェルザー=メスト指揮、ワリコフスキ演出
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団(ザルツブルク音楽祭)
ストゥンディーテ(S) バウムガルトナー(Ms) グリゴリアン(S) ウェルトン(Br) ローレンツ(T)
(録画2020年、UNITEL) |
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ザルツブルク音楽祭100周年の公演。現代に読み替えたかなり刺激的な演出ですが、すべての歌手陣が歌唱力だけでなく、リアルな容姿と行動で良い舞台となっています。
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