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エウゲニ・オネーギン






オペラ・データ

【作曲】
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1877〜78年)

【初演】
1879年3月29日 モスクワ、マールイ劇場(アマ)
1881年1月23日 モスクワ、ボリショイ劇場(プロ)

【台本】
作曲者本人、 コンスタンティン・ステバノヴィチ・シロフスキー(ロシア語)

【原作】
アレクサンドル・セルゲエヴィチ・プーシキンの小説『エウゲニ・オネーギン』

【演奏時間】
第1幕 70分
第2幕 40分
第3幕 40分  合計 約2時間30分



あらすじ

【時と場所】 
1820年代、ロシアの田舎とサンクトペテルブルク

【登場人物】
エウゲニ・オネーギン(Br): 都会のインテリ青年
タチヤーナ(S): 大地主の娘
オリガ(Ms): タチヤーナの妹
レンスキー(S): オリガの婚約者
グレーミン公爵(S): 退役軍人
ほか

【第1幕】
時は1820年代、舞台はロシアの人里離れた片田舎。その土地の地主の娘タチヤーナは物静かな性格で、淡い恋の物語を夢見る乙女でした。一方、妹のオリガは、タチヤーナとは逆に明るく快活な娘で、このオリガにはすでにレンスキーという婚約者がいました。ある日、レンスキーは友人のエウゲニ・オネーギンを連れて彼女たちの邸宅を訪問しました。
都会で身につけた知的な雰囲気を持つオネーギンに出会ったタチヤーナは、一目で恋に落ちます。その夜、タチヤーナは自分の部屋の机に向かい、一晩掛けてオネーギンへの手紙を書きました。そしてオネーギンに届けましたが、彼は「今は結婚したくありません。あなたのことは妹のように愛します。軽率な行為は慎みなさい」と、逆にタチヤーナのことを上からの物言いでたしなめたのでした。
 
【第2幕】
タチヤーナの邸宅で舞踏会が開かれた日。レンスキーに誘われたもののこの舞踏会で退屈したオネーギンは、その腹いせにレンスキーの婚約者オリガに手を出そうとします。それを本気で怒ったレンスキーは、ついにオネーギンに決闘を申し込むまでに至ってしまったのです。
どうしてこんな展開になってしまったのか。二人の友は、互いに苦しみながらも果たし合い、レンスキーが命を落としてしまいました。
 
【第3幕】
決闘の苦しみと憂いを晴らすため数年間放浪の旅を続けたオネーギンは、サンクトペテルブルクに戻り、知り合いのグレーミン公爵が開いた舞踏会にやってきました。そこで出会ったのが、なんとグレーミン公爵の夫人となっていたタチヤーナ。しかも、あの田舎の乙女とはうって変わって洗練された女性へと成長した姿だったのです。
今度はオネーギンが求愛する番となりました。オネーギンの情熱的な言葉にタチヤーナは一時は彼に惹かれます。しかし、彼女はきっぱりと彼のことを拒絶し、去っていったのでした。



解説(ポイント)

【1】 ロシア・オペラの代表作
 
「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」という3大バレエや、オーケストラのコンサートでも人気の高い交響曲第5番、第6番「悲愴」などの作曲者として知られるチャイコフスキー。彼のオペラでの代表作がこの『エウゲニ・オネーギン』です。オペラ全体から眺めてみても、この作品はオペラの代表作と言ってもいいくらいの傑作として知られています。ロシアのリアリズム文学を築き上げたプーシキンの小説を原作に、もちろんロシア色の強いロシア・オペラの代表作でもあります。
 
【2】 オペラではなく叙情的情景・・・
 
チャイコフスキーは、このオペラの作曲に着手する前年、パリでビゼーの『カルメン』を観て、そのリアリスティックな手法に影響を受けました。新作オペラのために台本を探していたチャイコフスキーは、あるとき付き合いのあった女性オペラ歌手に『エウゲニ・オネーギン』の存在を気付かされ、この題材に飛びついたのです。それまで大きな世界観を描いてきたオペラに比べ、登場人物のリアルな感情の揺れ動きを中核に据えたこの作品のことを、チャイコフスキーはオペラではなく「叙情的情景」と呼んでいます。
 
【3】 こてこてのロマンティック・オペラ
 
テレビで女優の檀ふみさんが、好きな作曲家は?と問われて「それはもうチャイコフスキーです」と、とろけるように答えていたのを覚えています。『エウゲニ・オネーギン』もロマンティックな音楽が折り重なるように出てきて、特にタチヤーナの有名な「手紙の場」や、レンスキーのアリアなど聴きどころが満載です。タイトルロールのオネーギンはロシアのエリートで厭世的でどこかニヒルな考え方を持っています。どちらかというとチャイコフスキーはこうしたオネーギンよりも、夢見がちな乙女タチヤーナに親近感を持っていたようです。物語はオネーギン的、しかし、音楽はタチヤーナ的と言えるのではないでしょうか。



おすすめディスク

【CD】
ビシュコフ指揮
パリ管弦楽団、サンクトペテルブルク室内合唱団
ホロストフスキー(Br)フォチーレ(S) ボロディナ(Ms) シコフ(T) アニシモフ(Bs)
(録音1992年、PHILIPS)
 
タイトルロールのホロストフスキーがやはり当たり役であり、それが堪能できるうれしいディスク。対するシコフのレンスキー役もこれまた彼の真骨頂で、かつ、女声陣も充実した歌唱を聴かせてくれます。

【DVD】
ゲルギエフ指揮、カーセン演出
メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱団
ホロストフスキー(Br)フレミング(S) ヴァルガス(T)
(録音2007年、DECCA)
 
舞台空間を広く使い、ほとんど装置のないなかで、歌手の力量だけで見せてくれます。オネーギン役が当たり役のホロストフスキーとフレミングによる最後の二重唱などは最高の場面です。







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