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ファルスタッフ






オペラ・データ

【作曲】
ジュゼッペ・ヴェルディ(1890〜92年)

【初演】
1893年2月9日 ミラノ、スカラ座

【台本】
アリーゴ・ボーイト(イタリア語)

【原作】
ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ヘンリー4世』第1部、第2部と『ウィンザーの陽気な女房たち』

【演奏時間】
第1幕 30分
第2幕 45分
第3幕 45分  合計 約2時間



あらすじ

【時と場所】 
ヘンリー4世治下(1399-1413)、ウィンザー

【登場人物】
サー・ジョン・ファルスタッフ(Br): 老騎士でも気は若く、太った無頼漢
アリーチェ(S): フォードの妻
フォード(Br): お金持ちの市民
ナンネッタ(S): フォードの娘
フェントン(T): 青年紳士、ナンネッタの恋人
メグ(Ms): アリーチェの友達
ほか

【第1幕】
時は英国国王ヘンリー4世治下、舞台は中部イングランドのウィンザー。居酒屋ガーター亭で酒を飲んでいた老騎士ファルスタッフは勘定を払うお金に困ります。そこで、裕福な二人の夫人アリーチェとメグに恋文を送り、どちらかをうまく誘ってお金に困らない生活をしようと企てました。
しかし、アリーチェとメグは、恋文を手にして喜んだのも束の間、二人が出会ったときに恋文を読み比べると、全く同じ文章であるのがわかり、二人はファルスタッフを懲らしめようと意気投合します。
またアリーチェの夫フォードは、自分の妻にファルスタッフの恋文が届けられたことをひそかに知って、こっちはこっちで憤慨していました。
 
【第2幕】
アリーチェは、夫の留守中の家にファルスタッフを呼び寄せます。そしてそこにメグが現れます。ここまでは作戦どおりで、二人でいざファルスタッフを懲らしめようとしたところ、メグはアリーチェに「本当にアリーチェの夫フォードが帰ってきた」と伝えます。フォードは妻とファルスタッフが逢引しているらしいと聞いて、怒って帰ってきたのです。
驚いたのはファルスタッフ。彼は、アリーチェに促されるまま洗濯かごの中に隠れます。しかしそのアリーチェ、今度は「その洗濯かごを窓から川に放り投げて」と召使いに命じました。川に落ちてずぶぬれになったファルスタッフを見て、ご婦人たちも満足、フォードも満足でした。
 
【第3幕】
ここで実はもう一つ問題がありました。フォードは自分の娘ナンネッタを、医者のカイウスと強引に結婚させようとしていたのです。ナンネッタにはフェントンという恋人がいました。
さて、アリーチェとメグは、もう一度、ファルスタッフを懲らしめるため、アリーチェが真夜中のウィンザー公園で逢引しようと彼に持ちかけます。懲りないファルスタッフが喜んで真夜中の公園に行くと、妖精に仮装した村人に囲まれます。妖精を見ると命がないという迷信を信じていた彼はその場に身を伏したのですが、妖精たちにさんざん突っつかれました。
このときどさくさに紛れてフォードは、娘のナンネッタと医師カイウスを結婚させようと村人に認知させようと画策していたのですが、それを察知したフォードの妻アリーチェ、(つまりナンネッタの母)の機転で、逆にナンネッタは恋人のフェントンと結婚することを皆に示すことができました。フォードも仕方なくこの結婚を承諾しました。
小突かれてさんざんな目にあったファルスタッフも事の次第をすべて理解し、「この世はすべて冗談、最後に笑った者こそが本当に笑うのだ」と皆といっしょに歌って、そして笑ったのでした。



解説(ポイント)

【1】 巨匠ヴェルディの最後の作品
 
オペラ『ファルスタッフ』はヴェルディ最後の作品で、初演の時には79才になっていました。ヴェルディは若いときには1日10時間も作曲していたそうですが、このときは1日に2時間ずつ、彼自身「自分の楽しみのために作った」と言っています。こうしてできたオペラは喜劇として最高の傑作となりました。それまで数多くの「悲劇」の傑作を書き続けたヴェルディは、最後にこの「喜劇」を残すことによって、また大きな印象を後世に残しました。
 
【2】 ファルスタッフの人物像
 
ヴェルディは、ファルスタッフの描かれた絵を部屋に飾るほど、この人物に惚れ込んでいました。『ファルスタッフ』の作曲を勧めたのは前作『オテロ』の台本を手がけたボーイト。彼からシェイクスピアの戯曲『ウィンザーの陽気な女房たち』を基にした草案を見せられたとき、ファルスタッフの人物像を膨らませるために、ファルスタッフが登場するシェイクスピアのもう一つの戯曲『ヘンリー4世』をも参照しました。その老いを達観したキャラクターがヴェルディ自身と重なったのでしょうか。この作品を最後にオペラ作曲をやめたヴェルディは、ファルスタッフと同じように、最後はこの世を笑い飛ばしていたのかもしれません。
 
【3】 完璧なアンサンブル・オペラ
 
ヴェルディは終幕のフーガの部分から書き始めたといわれるように、このオペラは精密なアンサンブルを主体としています。オペラ界全体にワーグナー旋風が巻き起こっていたこの頃、ワーグナーの音楽を否定していたヴェルディですが、晩年には次第にその真価を評価するようになり、『トリスタンとイゾルデ』を絶賛したりしていました。とはいえ、ヴェルディはワーグナーに飲み込まれることなく、独自の手法を崩さず、自らの語法を発展させていくことによってワーグナーの衝撃を克服し、後に続くイタリア・オペラに多大な影響を及ぼします。『ファルスタッフ』はヴェルディが残したイタリアの遺産であるのです。



おすすめディスク

【CD】
カラヤン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
タッデイ(Br) パネライ(Br) カバイヴァンスカ(S) ペリー(S) アライサ(T)
(録音1980年、Deutsche Grammophon)
 
円熟期のカラヤンが、このとき64才のタッデイをタイトル・ロールに迎え、完成度の高い演奏を実現しました。フォード役にもイタリア人の歌手パネライを起用し、その他のキャストはインターナショナルな陣容となりました。


【CD】
アバド指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送合唱団
ターフェル(Br) ハンプソン(Br) ピエチョンカ(S) レッシュマン(S) シュトーダ(T)
(録音2001年、Deutsche Grammophon)
 
カラヤン盤から20年。新しいタイトル・ロールとして、ターフェルが堂々とその地位に登り詰め、現代のファルスタッフを提示しました。その他のキャストにも理想的な歌手が集まりました。アバドのタクトも洗練され、新しい定盤と言えます。


【DVD】
ムーティ指揮、カップッチョ演出
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
マエストリ(Br) フロンタリ(Br) フリットリ(S) ムーラ(S) フローレス(T)
(録音2001年、TDK CORE)
 
ヴェルディ没後100年を記念して生地のブッセートで上演された公演。1913年にトスカニーニがヴェルディ生誕100年祭のときに上演した舞台を再現しています。このディスクは、女声陣が非常に充実していて、フリットリを筆頭にムーラ、アントナッチ(Ms)とアンサンブルでさらに強力な歌唱を味わえます。








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