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【作曲】 ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
【初演】
1724年2月20日 ロンドン、キングズ・シアター
【台本】 ニコラ・フランチェスコ・ハイム(イタリア語)
【原作】 ジャコモ・フランチェスコ・ブッサーニ『エジプトのジュリオ・チェーザレ』
【演奏時間】
第1幕 90分
第2幕 60分
第3幕 60分 合計 約3時間30分
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【時と場所】 紀元前48~47年、エジプト
【登場人物】
ジュリオ・チェーザレ(cT): ローマの将軍
コルネーリア(Ms): ポンペーオの妻
セスト(Ms): ポンペーオの息子
クレオパトラ(S): エジプトの女王
トロメーオ(cT): クレオパトラの弟、エジプトの王
アキッラ(Bs): 将軍、トロメーオの側近
ほか
【第1幕】
時は紀元前48~47年、舞台はエジプト。ローマの将軍ジュリオ・チェーザレは、ローマで覇権を争った政敵ポンペーオを追ってエジプトに入ります。この地の王トロメーオの側近のアッキラは、ポンペーオの首をチェーザレに差し出しました。政敵とはいえ、チェーザレやローマの人々は、エジプト王の残忍なやり方に嫌悪します。また、ポンペーオの妻コルネーリアとその息子セストは、エジプト王への復讐を誓いました。
エジプト王トロメーオと共同統治していた姉のクレオパトラは、弟とは対立しており、チェーザレの力を借りたいと考えます。彼女は、リディアという侍女に変装してチェーザレに近づくと、チェーザレも彼女に夢中になります。
【第2幕】
クレオパトラはチェーザレを私室に招き入れてひと時を過ごしますが、そこにトロメーオの軍がローマ人たちを強襲しているとの報が入ります。その混乱の中でクレオパトラは自分が変装したリディアではなく、女王であることをチェーザレに明かし、彼に逃げるように言います。しかし、チェーザレは戦いの渦中に入っていきました。
他方、エジプト王トロメーオは、未亡人となったコルネーリアを寝室に呼びつけ、彼女に言い寄ります。そのとき、息子のセストが現れ、王の命を狙おうとしますが、王の側近アキッラに阻まれます。その上、アキッラは王に、チェーザレは海に逃れたものの、おぼれ死んだと報告します。
【第3幕】
クレオパトラも、トロメーオの軍に捕らわれの身となります。しかし、チェーザレはまだ生き延びていました。王から満足のいく報酬を得られないアッキラはローマ側に寝返り、王宮に忍び込む道を教えます。その道からチェーザレは王宮に入り、クレオパトラを救出しました。また、セストも王宮に入り、母コルネーリアに欲望のまま襲い掛かろうとしたトロメーオを刺し殺し、復讐を果たします。
クレオパトラは、トロメーオの王冠と王笏をチェーザレに差し出しますが、チェーザレはそれらをクレオパトラに返します。ローマ皇帝に従うエジプトの偉大な女王として、クレオパトラは王冠と王笏を受け取ったのでした。
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【1】 イギリスにおけるイタリア・オペラの開祖
バッハと同年に生まれたバロック音楽の巨匠ヘンデルはドイツ生まれですが、イタリアに渡り、イタリア・オペラの作曲法を手中に収めます。その後、イギリスで初演されたオペラ『リナルド』がこの地で大成功を収めました。ここからイギリスでは、イタリア・オペラを上演することが主流となり、また、ヘンデル自身もイタリアから多くの歌手をイギリスに呼び、多くのイタリア・オペラを作曲します。その一つが『ジュリオ・チェーザレ』です。約30年間、イタリア・オペラを作り続けましたが、次第に人気が衰えてきた頃にオペラに見切りをつけ、今度は英語で歌われるオラトリオを中心に作曲活動を進めました。こうして『メサイア』など傑作オラトリオが誕生することになります。
【2】 ダ・カーポ・アリアの名作
声楽の学習者が最初に手に取る「古典イタリア曲集」(パリゾッティ版)には、バロック・オペラの中の名アリアが編曲されて入っています。ヘンデルのオペラ『セルセ』から「オンブラ・マイ・フ(懐かしい木陰よ)」"Ombra mai fu"や、オペラ『リナルド』のアリア「私を泣かせてください」"Lascia ch'io pianga"はよく知られており、このような名曲を耳にしてオペラに関心を寄せた人もいるのではないでしょうか。これらヘンデルのオペラのアリアは、当時のイタリア・オペラの主流であったダ・カーポ形式で作られています。ダ・カーポ形式とは、記譜される対比的な2つの節AとBを演奏した後、最初に戻ってAの部分を反復します。その反復部分で歌手が変奏して歌いますが、そこで当時のカストラートが実力を発揮していました。『ジュリオ・チェーザレ』は、このダ・カーポ・アリアの連続で出来上がっています。
【3】 カエサルとクレオパトラ
このオペラは、古代ローマの共和制末期に活躍し、『ガリア戦記』を著したガイウス・ユリウス・カエサル(イタリア語名:ジュリオ・チェーザレ)によるエジプト遠征をもとにした物語です。登場人物の多くは実在しますが、その役回りはほとんど創作されたものになっています。カエサルは、偉大な将軍だったグナエウス・ポンペイウス(ポンペーオ)と対立し、命令に背いてルビコン川を渡るとき、「賽は投げられた」と述べる言葉が有名です。この対立がオペラの起点となります。絨毯に包まれて贈り物としてカエサルの前に現れたと伝えられるクレオパトラのアリア「もし私に哀れみを下さらなければ」 "Se pietà di me non senti"にも注目です。
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【DVD】
ボルトン指揮、ウォーナー演出
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
メータ(cT) アルダー(S) デュモー(cT) バードン(Ms) アルディッティ(cT)
(録音2021年、UNITEL) |
キース・ウォーナーの現代的な演出が、バロック・オペラに新たな息吹をもたらしました。感覚が刺激される舞台に出来上がっています。
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