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【作曲】 エンゲルベルト・フンパーディンク(1890〜93年)
【初演】 1893年12月23日 ヴァイマール、宮廷歌劇場
【台本】 アデルハイト・ヴェッテ(作曲者の妹)(ドイツ語)
【原作】 グリム兄弟の童話『ハンスとグレーテル』
【演奏時間】
第1幕 30分
第2幕 30分
第3幕 40分 合計 約1時間40分
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【時と場所】 昔々、ドイツ
【登場人物】
ヘンゼル(Ms): 兄
グレーテル(S): 妹
ペーター(Br): 父、ほうき職人
ゲルトルート(Ms): 母
魔女(A、T): お菓子の家の魔女
ほか
【第1幕】
昔々、舞台はドイツ。貧しいけれど元気な兄妹ヘンゼルとグレーテルが、留守番中のお手伝いを放り出して遊んでいたところへ、急に母親ゲルトルートが帰ってきます。騒いでいた二人を追いかけるうちに、大切なミルクの入った壺(つぼ)を落として割ってしまった母親は、いらいらして子供たちに「森へ行って苺(いちご)を取ってきなさい」と怒りました。
二人が出かけた後、父親ペーターが帰ってきます。子供たちが森に行ったと聞いて驚きました。その森には魔女が住むとの噂(うわさ)があったのです。両親はあわてて子供たちを捜しに行きました。
【第2幕】
深い森の中で、苺をいっぱい取って満足なヘンゼルとグレーテルの二人。いざ帰ろうと思ったとき、いつの間にか辺りは暗くなり、帰り道がわからなくなっていました。そこに「眠りの妖精」が現れて、二人を眠らせてしまいます。
しばらくして、次に「暁(あかつき)の妖精」が現れて、眠った二人を起こすと、二人の目の前にびっくりするものがあったのです。
【第3幕】
目を覚ました二人の前に現れたのは、お菓子でできた家でした。二人は喜んで家のはしっこからお菓子を食べ始めます。このとき夢中で食べている二人の背後に忍びよったのが、魔女でした。魔女は魔法の杖を使って二人を生け捕りにしてしまい、ヘンゼルを檻(おり)に入れ、グレーテルに食事の準備をするように命令します。そして「ヘンゼルにたくさん食べさせて太らせよ」と言うのです。
しかし、子供たちも負けてません。魔女がヘンゼルに無理やり食べさせている隙に、グレーテルは魔法の杖を奪います。そして、魔女がヘンゼルを釜戸(かまど)の火の中に放り込もうとしているのを逆手にとって、二人で協力して魔女を釜戸に押し込み、ふたをして、魔女をやっつけたのでした。
すると、お菓子の家からたくさんの子供たちが出てきました。この子供たちは、魔女によってお菓子にされていたのですが、魔法が解けたのです。そこにヘンゼルとグレーテルの両親も駆けつけました。みんなで喜んでいたところ、釜戸の中の魔女はというと・・・、すっかり焼き上がっておいしいお菓子になっていたのでした。
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【1】 クリスマスの定番オペラ
このオペラは、有名なグリム童話をもとにして、大人でも、子供でも楽しめる内容になっています。作曲者のフンパーディンクは、自分の実妹から家庭用の音楽劇を作ってほしいと依頼されて作曲を始めました。途中、ひとまず出来上がった作品を、自分の婚約者にクリスマス・プレゼントとして贈ったりしています。初演はクリスマスの前々日に、あのR.シュトラウスの指揮によって演奏されましたが、これが大成功して、クリスマスの定番のオペラとなりました。
【2】 ワーグナーの弟子の成功作
作曲者のフンパーディンクは、あのワーグナーの弟子です。ワーグナーによって、オペラ界はドイツ・オペラの時代となりましたが、次の時代はというと、ヴェリズモ(現実主義)・オペラを成功させたイタリアの時代となりました。そうした中で、フンパーディンクは、ワーグナーの後継者としてその技法を受け継ぎ成功した、ほとんど唯一の作曲家とも言えます。そのため、この『ヘンゼルとグレーテル』は、物語はおとぎ話の世界ではありますが、音楽は大変すぐれたものであり、大人でも十分楽しむことができます。
【3】 大人には癒しを、子供には芸術を
ワーグナーの影響を受けたフンパーディンクの音楽は、全体的に聴き応えがありますが、最初、家庭用の音楽劇を念頭に置いていたためか、非常に聴きやすい音楽に仕上がっています。特に児童合唱を擁したラスト・シーンなどは、ワーグナーのオペラとは、全く正反対の美しさを持っていて、現代社会においては、癒しの音楽とも言えるのではないでしょうか。もし子供にオペラを見せるのなら、ヘタに子供用にしたものを見せるのではなく、この『ヘンゼルとグレーテル』や、モーツァルトの『魔笛』など、本格的なオペラをきっちり見せた方が、子供たちも芸術の楽しみを味わえるのではないでしょうか。
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【CD】
ショルティ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン少年合唱団
ファスベンダー(Ms) ポップ(S) ベリー(Br) ハマリ(Ms) シュレム(Ms)
(録音1978年、DECCA) |
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歌手陣に実力者を揃え、ショルティがまとめ上げました。ウィーン・フィルの響きで、贅沢なクリスマス・オペラを楽しむのもいいかもしれません。ウィーン少年合唱団も美しい。
【DVD】
ウェルザー=メスト指揮、コルサロ演出
チューリヒ歌劇場管弦楽団、児童合唱団
ニキテアヌ(Ms) ハルテリウス(S) ムフ(Br) レヒナー(Ms) フォーゲル(T)
(録音1998年、TDK CORE) |
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チューリヒ歌劇場のライブ映像。しっかりとしたオーソドックスな演出に程よく味付けされた点もいい。ニキテアヌ、ハルテリウスの両タイトルロールはうまいし、さらにフォーゲルの魔女ぶりがおもしろい。
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