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カーチャ・カバノヴァー

Káťa Kabanová





オペラ・データ

【作曲】
レオシュ・ヤナーチェク 1919~1921年に作曲

【初演】
1921年11月23日 ブルノ、国民劇場

【台本】
ロシア語の原作をヴィンツェンツ・チェルヴィンカがチェコ語に訳したものを作曲者が一部修正(チェコ語)

【原作】
アレクサンドル・ニコラエヴィチ・オストロフスキーの戯曲『嵐』

【演奏時間】
第1幕 40分
第2幕 30分
第3幕 30分  合計 約1時間40分



あらすじ

【時と場所】 
1860年代、ロシアの町カリノフ

【登場人物】
カーチャ(S): カバノフ家の嫁
ボリス(T): 両親を亡くした青年
チホン(T): カバノフ家の長男、カーチャの夫
カバニフ(A): カバノフ家の当主
ヴァルヴァラ(Ms): カバノフ家の養女 
ほか

【第1幕】
時は1860年代、舞台はロシアのヴォルガ河畔の町カリノフ。美しいカチェリーナ(愛称カーチャ)は、裕福な商人のカバノフ家に嫁ぎましたが、夫のチホンは母カバニハの言いなりでダメな男でした。姑のカバニハは、嫁のカーチャを𠮟りつけ、いびり、侮辱します。古い封建的な家に束縛されているカーチャは、この家の養女であるヴァルヴァラに、夫以外の男性と恋に落ちていることを打ち明けました。

【第2幕】
夫のチホンがカザンの市場に出かけている間、カーチャはヴァルヴァラから庭の木戸の鍵を受け取ります。深夜、カバノフ家の庭に呼ばれたのはボリス。彼はモスクワで教育を受けましたが、両親に先立たれ、この町の大商人家の叔父のところに世話になっていました。そして、カーチャと愛する仲になっていたのは彼でした。二人は、庭の木戸の鍵を開け、二人きりとなります。

【第3幕】
10日後、夫のチホンが帰宅すると、カーチャは不貞をはたらいた自責の念に駆られて錯乱します。罪の意識に耐えられず、彼女は、夫と姑に全てを告白してしまいました。他方のボリスは、叔父の命令でシベリアにいくことになったとカーチャに伝え、去っていきます。カーチャは古い家から決して逃れられないことを悟り、ヴォルガ河に身を投げたのでした。



解説(ポイント)

【1】 閉ざされた社会からの脱出
 
出世作『イェヌーファ』でオペラ作曲家としての確固たる地位を築くことができたヤナーチェクは、65歳を過ぎて4作の後期代表作を残しますが、このオペラ『カーチャ・カバノヴァー』はその1作目、ヤナーチェクにとっては6作目のオペラです。古い封建主義の残る閉ざされた社会から意識的にも、無意識的にも脱出を試みる人間が描かれ、ロシアの家長制度が痛烈に批判されます。
 
【2】 封建社会の縮図のような人物たち
 
ヤナーチェクは、この封建的な社会の縮図のような登場人物たちを丁寧に特徴づけています。家長を代表する姑のカバニハ役はアルト、大商人家のヂコイ役はバスが歌います。母に従うだけの夫チホン役はキャラクター・テナーを、新しい考えをもつ存在としてのヴァルヴァラ役、この役はカーチャの行動に大きな影響を与えますが、これにはメゾを当てています。カーチャの相手役、インテリ青年で、一時の情熱で人妻を愛するボリス役はやはりテノールが受けもち、若々しい声を響かせます。
 
【3】 カーチャの心理描写
 
このオペラのタイトルロールのカーチャが、抑圧された関係性の中で、不倫に手を染める様子が刻々と描かれています。それは現代社会においても普遍的に通じる躊躇と後悔の心理ではないかと思います。カーチャの心境の変化を描き出している第1幕のカーチャとヴァルヴァラの対話「私が何を考えついたかわかる?」"Vis co mi napadlo?"、第2幕のカーチャとボリスの愛の二重唱「あなたですか、カチェリーナ・ペトロヴナ?」"Jste to vy, Katěrino Petrovno?"、そして、第3幕の最終場面でのカーチャのアリア「あの人に会いたい、別れを言いたい」"Vidět se s nim"が見どころ・聴きどころです。



おすすめディスク

【CD】
マッケラス指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
ゼーターシュトレーム(S) ドヴォルスキー(T) クニプロヴァー(A) クレイチーク(T) マーロヴァー(Ms)
(録音1976年、DECCA)
マッケラスとウィーン・フィルによるヤナーチェクのオペラ・シリーズ。このディスクがその第1弾です。マッケラスは1951年にこのオペラのイギリス初演も手がけています。


【DVD】
フルシャ指揮、コスキー演出
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィンターズ(S) バット・フィリップ(T) ヘルリツィウス(A) ブジェジナ(T) バラジョヴァー(Ms)
(録画2022年、UNITEL CLASSICA)
ザルツブルク音楽祭の公演。フェルゼンライトシューレにおいて、後ろ姿の群衆のみが背景にあるほぼ何もない舞台ですが、歌手の歌唱力、演技力でこの心理ドラマを描き出します。特にカーチャ役のウィンターズの熱演に注目です。







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