2023年新刊
名作オペラをやさしく解説
面白いほどわかる!
オペラ入門
名アリア名場面はここにある
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,800円+税
詳しくはこちら
|
オペラのことをいちから学ぶ
声、歌、音楽、演出について
オペラ鑑賞講座 超入門
楽しむためのコツ
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,600円+税
詳しくはこちら
|
「オペラ情報館」が
本になりました
オペラにいこう!
楽しむための基礎知識
神木勇介 著
青弓社 発行
定価1,600円+税
詳しくはこちら
|
|
【作曲】 ジョアッキーノ・ロッシーニ(1816〜17年)
【初演】 1817年1月25日 ローマ、ヴァッレ劇場
【台本】 ヤーコポ・フェッレッティ(イタリア語)
【原作】 シャルル・ペロー『童話集』(イズアール作曲、エティテンヌ台本の歌劇『サンドリヨン』に基づく)
【演奏時間】
第1幕 90分
第2幕 50分 合計 約2時間20分
|
【時と場所】 18世紀頃、南イタリア
【登場人物】
チェネレントラ(Ms): いわゆるシンデレラ
ドン・ラミーロ(T): 王子
ダンディーニ(Br): 王子の従者
ドン・マニフィコ(Bs): 男爵、チェネレントラの継父
アリドーロ(Bs): 賢者、王子の家庭教師
ほか
【第1幕】
時は18世紀頃、舞台は南イタリアの田舎町。チェネレントラはマニフィコ男爵家の三女でしたが、贅沢に生活する二人の異母姉と継父マニフィコ男爵に、まるで召使いのように虐げられていました。
あるとき男爵家に乞食が物乞いに来ます。二人の姉は見向きもしませんが、チェネレントラはこっそり食べ物を与えてやります。実はこの乞食、王子の家庭教師アリドーロが変装した姿で、王子の理想の花嫁を見定めていたのでした。
そこへ王子に変装した従者ダンディーニと、従者に変装した王子ラミーロがやって来ます。二人はわざとお互いの身分を交換していました。そうとは知らず、二人の姉たちは偽王子に媚びを売ります。その間に、従者に変装した王子ラミーロとチェネレントラは、お互いに惹かれ合っていたのでした。
マニフィコ男爵家は、王子が主催する舞踏会に招待されました。チェネレントラも行きたいと男爵に頼みますが、留守番にさせられます。二人の姉たちが豪華に装い出掛けた後、みすぼらしい姿で落ち込むチェネレントラの前に、あの乞食が現れます。そして、お城の舞踏会に連れて行こうと言うのです。
舞踏会では、着飾った二人の姉が、偽の王子の気を引こうと躍起になっていました。そこに突如として現れたのが、美しいドレスを身にまとったチェネレントラでした。
【第2幕】
チェネレントラの美しさに偽王子は、彼女を花嫁として迎えようとします。しかし、チェネレントラは、王子の従者に恋をしていると言ってこれを断ります。この一部始終を物陰で聞いていた本物の王子ラミーロは喜びました。そして彼女に従者として結婚を申し込みます。チェネレントラとしては、この美しいドレスを身にまとった姿は、仮の姿。彼女は、自分の腕輪の片方を渡し、「右手にこれと同じ腕輪をしている私を捜してください。私を捜し当て、そのとき私のことが嫌でなければ、あなたのものとなります」と言って、お城から立ち去りました。
男爵家では、またいつもの日常が始まり、チェネレントラは召使いのようにこき使われていました。ある日、激しい嵐によって馬車が転覆したため、男爵家に王子と従者がやって来ました。今度は本当の姿です。男爵と二人の姉たちが驚いたのは当然のこと、チェネレントラも恋した従者が実は王子だったことに驚きます。そして、チェネレントラは王子の妃となったのでした。
|
【1】 油が乗った時期のロッシーニ
ロッシーニの代表作『セヴィリャの理髪師』は、ローマのアルジェンティーナ劇場で初演されて、オペラ作品として不朽の名作となりました。この頃、同じローマにあったライバルのヴァッレ劇場でも、ロッシーニのオペラ・ブッファを上演したいと思っていました。『セヴィリャの理髪師』から1年、この間、すでにナポリで『新聞』と『オテロ』という2つのオペラを完成させ、油が乗った時期だったロッシーニは、オペラ『チェネレントラ』をわずか24日間で完成させたといいます。ちなみに序曲はオペラ『新聞』のものと全く同一だったりします。
【2】 進化した童話『シンデレラ』
このオペラは、おなじみの童話『シンデレラ』が原作であり、その趣旨はほぼ同様であると言えます。ところが、あのシンデレラのガラスの靴は「腕輪」になり、魔法使いは「賢者にして王子の家庭教師」となっています。この変更はロッシーニが幻想的な童話の要素を嫌ったためだとも言われますが、子供向きよりローマの聴衆の趣味に合わせたためだとも言われています。また、王子と従者が身分を交換しているところなど、ブッファのための「仕掛け」が凝らされていて、こうした工夫によって、単なる童話にとどまらず、オペラという芸術作品として楽しめるものになったのだと思います(ただし、これらの童話との違いは、ロッシーニのオペラ以前にも例がありました)。
【3】 バランスの取れた登場人物
さすがと言えるのはやはりロッシーニの音楽。このオペラは、姉二人とチェネレントラの女声陣、そして男声陣にテノールの王子ドン・ラミーロ、バリトンの従者ダンディーニ、バスの男爵ドン・マニフィコと、きれいに役者が揃いバランスが取れています。ロッシーニはこれらの登場人物を自由に操り、生き生きとした音楽を完成させました。見事な五重唱、六重唱、そしてフィナーレは圧巻です。また、この喜劇を傍観者として支える賢者アリドーロの存在は、このオペラの形を整える上で重要な役割を担っています。
|
【CD】
シャイー指揮
ボローニャ歌劇場管弦楽団、合唱団
バルトリ(Ms) マッテウッツィ(T) コルベッリ(Bs) ダーラ(Bs) ペルトゥージ(Bs)
(録音1992年、DECCA) |
|
|
シンデレラといえば、現代の歌姫バルトリを推挙せざるをえません。チェネレントラは高度なテクニックを要求される難役の一つですが、バルトリな難なくこなし、当たり役としています。シャイーのタクトも軽快。アリドーロ役に実力者ペルトゥージを据えているところも魅力的なディスクです。
【CD】
リッツィ指揮
ボローニャ歌劇場管弦楽団、プラハ室内合唱団
ガナッシ(Ms) フローレス(T) デ・カンディア(Br) プラティコ(Bs) ウリヴィエリ(Bs)
(録音2000年、ROF) |
|
|
ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバルのライブ録音。今やポスト3大テノールの筆頭に躍り出たフローレスの王子ドン・ラミーロ役が最大の聴きどころ。他の男性陣もしっかりしているし、タイトルロールのガナッシもうまい。
|
|