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【作曲】 ジュゼッペ・ヴェルディ(1861〜62年)
【初演】
1862年11月10日 サンクトペテルブルク、ロシア帝室歌劇場(後のマリインスキー劇場)
(改訂版は1869年2月27日、ミラノ、スカラ座)
【台本】
フレンチェスコ・マリア・ピアーヴェ(イタリア語)
(改訂版はアントニオ・ギスランツォーニ)
【原作】
リヴァス公アンヘル・デ・サーヴェドラの戯曲『ドン・アルヴァーロ、または運命の力』
【演奏時間】
第1幕 20分
第2幕 50分
第3幕 60分
第4幕 40分 合計 約2時間50分
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【時と場所】
18世紀中頃、スペインのセヴィリャとイタリアのヴェッレトリ
【登場人物】
レオノーラ(S): カラトラーヴァ侯爵の娘
ドン・アルヴァーロ(T): レオノーラの恋人
ドン・カルロ(Br): レオノーラの兄
カラトラーヴァ侯爵(Bs): レオノーラの父
グァルディアーノ神父(Bs): 修道院の僧院長
ほか
【第1幕】
時は18世紀中頃、舞台はスペインのセヴィリャ。カラトラーヴァ侯爵の娘レオノーラは恋人ドン・アルヴァーロと駆け落ちをしようとしています。アルヴァーロはスペインに滅ぼされたインカの血を引く者で、カトリック信仰を守る由緒正しき侯爵の家柄にそぐわず、結婚に反対されていたのです。しかし、二人で家を出ようとしたとき、父・侯爵に見つかってしまいます。アルヴァーロは無抵抗を示すために、持っていたピストルを床に投げ出すと、その衝撃で弾が暴発して侯爵に当たってしまい、侯爵は息絶えます。二人は、運命におののきながらその場を逃げ出したのでした
【第2幕】
逃走中にはぐれてしまった二人は、お互いに死んだものと思っていました。レオノーラの兄ドン・カルロは、父を殺した二人に復讐するため、二人を捜しています。その兄に見つかりそうになりながらもレオノーラは修道院に辿り着きます。彼女はそこでグァルディアーノ神父に真実を話し、修道院裏の洞窟で世を捨てて生きる道を選びます。
【第3幕】
舞台は変わってイタリアのある戦場。レオノーラの死を信じたアルヴァーロは偽名を使って士官となり戦場で戦っていました。同じくカルロも偽名を使い士官となっていて、二人は偶然にも出会い、お互い正体を知らずに友情を誓う間柄となっていました。
あるときアルヴァーロは戦場で重傷を負ってしまいます。彼はカルロに「自分が死んだらこれを焼き捨ててほしい」と小箱を渡します。何かを感じたカルロがその小箱の中を開けてしまうと、そこにはレオノーラの肖像画が入っていました。親友と思っていた彼が、実は捜していた敵だったのです。
【第4幕】
決闘を望むカルロに対し、アルヴァーロは修道院に身を隠していました。5年後、居場所を突き止めたカルロが修道院に現れます。そして、決闘に勝利したのはアルヴァーロの方でした。
アルヴァーロは洞窟の隠者にカルロの最期を見届けてもらおうと洞窟に入ります。なんとそこにいたのはレオノーラ。しかし、二人が再会を喜んだのも束の間でした。最後の力を振り絞ったカルロが、近づいたレオノーラを剣で刺したのです。
絶望するアルヴァーロ。レオノーラは、そこに駆けつけた神父に見守られながら、静かに息を引き取ったのでした。
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【1】 「運命」に翻弄される恋人
『運命の力』・・・そのタイトルのとおり、このオペラのストーリーは、あたかも定められた運命であるかのように偶然が重なり、悲劇が積み重なっていきます。始まりはピストルの暴発。いずれにせよ順調ではなかった恋人二人の運命は、ここから狂い始め、終幕の悲劇へとつながっていくのです。
【2】 サンクトペテルブルクでの初演と改訂版
このオペラは、ヴェルディ後期の作品へとつながる重要なオペラです。その頃、イタリアの国会議員まで務めていた作曲家ヴェルディは、しばらくオペラの作曲から遠ざかっていましたが、『イル・トロヴァトーレ』の成功に沸いていたサンクトペテルブルクのロシア帝室歌劇場から依頼がきて作曲したのが、この『運命の力』です。初演は成功を収めましたが、このときは、オペラのラストで絶望したアルヴァーロが崖から飛び降りて自殺し、主役が全員死亡するというようなあまりに陰鬱な終わり方でした。初演から1年後、ヴェルディは「オペラの結末と第3幕の最後の部分を変えたいと思っている」と言っていて、6年後イタリア・ミラノで上演されるときに、ヴェルディ自らの手で改訂を施しました。
【3】 ドラマティックな音楽と祈り
迫り来る悲劇を予感するかのような序曲は、ヴェルディのオペラ作品の中でも最も有名な序曲となっています。声楽面でも非常に充実していて迫力のある音楽を聴くことができます。また、そのヴェルディの大きな音楽作りの中でも、第4幕でレオノーラが歌うアリア「神よ、平和を与えたまえ」は、彼女の崇高で敬虔な祈りを表現していて、屈指の名歌としてこのオペラの中心となっています。
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【CD】
モリナーリ=プラデルリ指揮
ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団、合唱団
テバルディ(S) デル・モナコ(T) バスティアニーニ(Br) マイオニカ(Bs) シエピ(Bs)
(録音1955年、LOMDON) |
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なんといってもテバルディ、デル・モナコ、バスティアニーニ、シエピ、また、それに加えてメゾ・ソプラノのシミオナートと強力な歌手陣で、このオペラを力業でねじ伏せます。往年の名歌手を堪能できる名盤。
【CD】
ゲルギエフ指揮
サンクトペテルブルク・キーロフ歌劇場管弦楽団、合唱団
ゴルチャコーワ(S) グリゴリアン(T) プチーリン(Br) アブドラザコフ(Bs) キット(Bs)
(録音1995年、PHILIPS) |
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こちらのディスクは、サンクトペテルブルクでの初演版を使った演奏。ちょうど初演された地の歌劇場による蘇生はうれしいところ。ロシア勢で固めた歌手陣でしっかりと仕上がっており、ゲルギエフの指揮の下、充実した歌を聴かせてくれます。
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