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2023年新刊
名作オペラをやさしく解説
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L'Enfant et les Sortilèges
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【作曲】
モーリス・ラヴェル(1920~25年)
【初演】
1925年3月21日 モンテカルロ歌劇場
【台本】
シドニー=ガブリエル・コレット(フランス語)
【原作】
台本作家による創作
【演奏時間】
全1幕 40分
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【時と場所】
フランス、ノルマンディ地方の田舎家
【登場人物】
子ども(Ms): 6、7歳くらいの男の子
母親(A): 子どもの母
リス(Ms): 子どものペット
ほか
【第1幕】
舞台は、フランスのノルマンディ地方の、とある田舎家。6、7歳くらいの子どもが宿題をやっていますが、彼は遊びに行きたい、お菓子を食べたい、と不平不満の様子。母親にちゃんとやるように言われても、まったく気にしません。
母親が部屋から出ていくと、子どもはティーポットとカップを投げて壊し、飼っているリスをペンで刺し、猫のしっぽをひっぱり、火にかけたヤカンを蹴とばし、置時計の振り子を外し、本やノートを破ってしまいます。そして、自由だ、と叫ぶ始末。
しかし、今度はこれらのモノや、動物や、火や、本の内容が、子どもに襲いかかります。みんな子どもに仕返しをするのです。怖くて頭を抱えて逃げまどう子どもは、無意識のうちに「ママ」と叫びました。
子どもに襲いかかったもの達は、みんな自分が子どもを罰したいと、お互い同士で争い始めます。そんな押し合いへし合いの大混乱のさなか、小さなリスが放り出されてしまいました。
負傷したリスの周りで、みんなは自分たちが争っていた愚かさを恥じ入ります。その中で子どもは、自分のしていたリボンをとり、それをリスの傷ついた足に巻いて手当てをしてあげました。子ども自身は、疲れ切って、その場で倒れてしまいます。
子どもの優しさに気がついたみんなは、力を合わせて「ママ」と声を出しました。母親が来たその気配に気がついた子どもは、母に向かって手を伸ばし、一言「ママ」と呼んだのでした。
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【1】 母への想いと『子どもと魔法』
『子どもと魔法』は、ラヴェルによって「ファンテジ・リリック」と名づけられた一幕もののオペラで、『スペインの時』とともに、ラヴェルがオペラ史に残した傑作の一つです。パリ・オペラ座の監督ジャック・ルーシェは、女性作家コレットにバレエの脚本を書くように依頼しました。そして、この台本をラヴェルに作曲してもらおうとします。ちょうどその頃、第一次世界大戦が始まり、ラヴェルは志願して戦争に赴きます。1916年からトラック輸送兵として任務につきました。翌1917年には、最愛の関係として知られる母を亡くします。1918年にラヴェルは『子どもと魔法』の台本を手にしました。
【2】 小さくて優しいオペラ
その後、作曲は進みませんでしたが、オペラ『スペインの時』を上演して成功をおさめていたモンテカルロ歌劇場から次作を初演したいという要望が寄せられます。そこで、ラヴェルは『子どもと魔法』の作曲に本腰を入れて取り組み、1925年に初演されました。その後、パリ・オペラ座でも上演され、世界各国で上演されています。誰もが持つ幼少期の心のひだに優しく触れるようなこの作品は、子どもから大人まで、いや、大人にこそ味わってほしいオペラです。1幕もののオペラとして、例えば同じラヴェルの『スペインの時』と同時に上演される(ダブルビル)こともあります。
【3】 それはあたかも子どもの遊びのように
小さい全1幕のオペラの中に、さまざまなモノ、動物、その他が現れます。ルイ15世時代の安楽椅子、中国の茶碗、羊飼い、おとぎ話のお姫様、教科書から出てきた数字など、もちろんそれらすべてが配役されていて、オペラ歌手が歌います。猫の二重唱も有名です。ラヴェルはこれらを登場させながら、マスネやプッチーニ風の音楽を差し込みます。ラヴェルの作曲技術が冴えわたるだけでなく、それはあたかも子どもの遊びのような楽しさに感じられてきます。
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【CD】
マゼール指揮
フランス国立放送管弦楽団
オジェアス(Ms) コラール(A) ベルビエ(S) セネシャル(T) モラーヌ(Br)
(録音1960年、Deutsche Grammophon) |
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『スペインの時』とともに、レコード芸術の歴史に残る名盤の一つです。フランスの名歌手たちが揃っているところも、今からすると大変贅沢。
【CD】
小澤征爾指揮
サイトウ・キネン・オーケストラ
レナード(Ms) ネフ(A) クリスティ(S) フーシェクール(T) マドア(Br)
(録音2013年、DECCA) |
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サイトウ・キネン・フェスティバル松本での公演をライブ収録。ひとつひとつの音が際立っていて面白い演奏です。グラミー賞受賞ディスク。
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