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フィガロの結婚






オペラ・データ

【作曲】
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト 1785〜86年

【初演】
1786年5月1日 ウィーン、ブルク劇場

【台本】
ロレンツォ・ダ・ポンテ(イタリア語)

【原作】
ピエール・ド・ボーマルシェの戯曲『たわけた一日、あるいはフィガロの結婚』

【演奏時間】
第1幕 45分
第2幕 45分
第3幕 40分
第4幕 40分  合計 約2時間50分



あらすじ

【時と場所】 
18世紀半ば、スペインのセヴィリャ

【登場人物】
アルマヴィーヴァ伯爵(Br): 領主
伯爵夫人(S): 伯爵の妻
スザンナ(S): 伯爵家の女中
フィガロ(Bs or Br): 伯爵の従者
ケルビーノ(Ms): 伯爵邸に住む少年
バルトロ(Bs): 伯爵家お抱えの医者
マルチェリーナ(Ms): 伯爵家の女中がしら
バジリオ(T): 伯爵邸の音楽教師
ほか

【第1幕】
時は18世紀、舞台はスペイン、セヴィリャのアルマヴィーヴァ伯爵の館。伯爵の従者フィガロと、同じく伯爵家の女中スザンナの結婚式当日の話です。フィガロはスザンナから驚きの事実を聞きます。それは、二人の主人である伯爵が、手先の音楽教師バジリオを使って、スザンナを誘惑しているというのです。フィガロは怒って、伯爵をこらしめる作戦を考えます。
 
【第2幕】
その作戦とは、伯爵に仕える少年ケルビーノにスザンナの服を着せて、伯爵がスザンナと夜こっそり会おうとしたときに、彼を差し向けて驚かせようというものでした。事情を知った伯爵夫人の協力のもと、スザンナが少年ケルビーノに女装をさせます。そこへ急に伯爵が現れて大混乱。結局、フィガロの作戦は失敗します。その上、フィガロにお金を貸していた女中マルチェリーナおば様が、弁護人バルトロといっしょにやって来て、「借金を返さないなら、フィガロは私と結婚する約束だったわ」と言い出します。フィガロとスザンナの結婚のゆくえはわからなくなりました。
 
【第3幕】
ところが大変な事実が発覚します。捨て子だったフィガロ、実は、マルチェリーナおば様と弁護人バルトロの二人が若かりし頃、恋の火遊びをした結果、できてしまった子供だったのです。つまり、父母、息子の関係でした。この3人にスザンナを加えた4人はすっかり意気投合。無事、フィガロとスザンナは結婚式を挙げることができました。
さて、一方の伯爵はというと・・・、まだこりずにスザンナを誘惑しようとしています。見かねた伯爵夫人は、今度は自分がスザンナの服を着て、密会の現場に行くことを決心します。
 
【第4幕】
その夜、屋敷の裏庭。伯爵は、スザンナと秘かに会えるのを楽しみにやってきます。そして、スザンナの服を着た伯爵夫人をスザンナと勘違いして、甘い言葉をささやくのです。これで証拠は押さえられました。伯爵夫人は何も知らない伯爵に正体を明かします。スザンナと思って近寄った伯爵は、実はそれが自分の妻だったことを知って驚きます。深く反省した伯爵のことを、夫人は温かく許してあげたのでした。



解説(ポイント)

【1】 何度観ても楽しい、喜劇の傑作
 
オペラ『フィガロの結婚』は、日本でもよく公演が行われています。このオペラ、実にいろいろな伏線が仕掛けられていて、一度観ただけでそのすべてを理解するのは難しいほどです。そしていたる所に「笑い」が仕込まれています。あらすじに書かれたことは物語のほんの一部です。いろいろな登場人物の視点から物語を追ってみると、同じ『フィガロの結婚』でも今までとは違ったオペラに見えてくるはず。何度観ても、新しい発見に驚かされることでしょう。ぜひ実際に鑑賞して「奥深さ」を味わってみてください。
 
【2】 モーツァルトの生き生きとした音楽
 
有名な序曲に続いて、フィガロのアリア「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」、ケルビーノのアリア「恋ってどんなものかしら」など、このオペラはモーツァルトのすばらしい音楽であふれています。そして、どの曲もとても軽やか。日頃のストレスなど吹き飛んでしまうような、生命力のある音楽を聴くことができます。圧巻は、第2幕のフィナーレ。非常に大規模なこのフィナーレでは、次々に舞台の上に登場人物が現れ、音楽的にも転調を繰り返し、テンポも速くなり・・・、モーツァルトの音楽の勢いに圧倒されるはずです。

 
【3】 ケルビーノは女?男?女?
 
伯爵に仕える少年ケルビーノ、15才くらいでしょうか。この役は、メゾ・ソプラノ、つまり女性がズボンをはいて男装して演じます。オペラでは男性の役を女性が演じることもよくあり、こうした役は「ズボン役」と呼ばれています。そして、『フィガロの結婚』では、物語の中でズボン役のケルビーノが「女装」する場面があるのです。女性歌手が男役として演技をしながら、女装して女役の演技をする・・・。見てる方も、演じている方も、わけがわからなくなりそうですね。



おすすめディスク

【CD】
ベーム指揮
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団、合唱団
ディースカウ(Br) ヤノヴィッツ(S) マティス(S) プライ(Br) トロヤノス(Ms)
(録音1968年、Deutsche Grammophon)
 
ディースカウとプライというお互いライバルの名バリトンが、伯爵とフィガロという対立する二人を歌っています。この二人のやり取りは見もの。二人は声も歌もはっきり違うのに、優劣がつけられないのです。どちらもすばらしい歌唱。『フィガロの結婚』の定盤とも言うべきCDです。


【CD】
ヤーコプス指揮
コンチェルト・ケルン、コレギウム・ヴォカーレ・ヘント
キーンリーサイド(Br) ジェンス(S) チョーフィ(S) レガッツォ(Br) キルヒシュラーガー(Ms)
(録音2003年、harmonia mundi)
 
ヤーコプスが、時代考証と演奏効果を絶妙に組み合わせて、新しい『フィガロの結婚』を実現させました。その音楽をよく聴いていると、耳が刺激されて本当に楽しい。いろいろな発見があります。歌手陣も現在活躍中の旬の歌手を揃えていて、特にキーンリーサイドの伯爵が魅力的。ケルビーノをキルヒシュラーガーが歌っているのもうれしいところです。


【DVD】
ベーム指揮、ポネル演出
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
ヴァイクル(Br) ヤノヴィッツ(S) ポップ(S) プライ(Br) バルツァ(Ms)
(録画1980年、NHK)
 
ベーム最後の来日公演の映像。同じベーム指揮で映画版のDVDがありますが、こちらのディスクは実際の舞台で見られるのがうれしい。昔のNHKテレビ放送をDVDにしたものなので、字幕などの操作はできません。昔からのオペラ・ファンが見てきたオーソドックスな『フィガロの結婚』がここにあります。


【DVD】
アーノンクール指揮、グート演出
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
スコウフス(Br) レッシュマン(S) ネトレプコ(S) ダルカンジェロ(Br) シェーファー(Ms)
(録画2006年、Deutsche Grammophon)
 
何かと話題になった2006年のザルツブルク音楽祭のライブです。注目されたのはスザンナ役のネトレプコでしたが、相手役のフィガロを歌ったダルカンジェロも実力を発揮しており、いい仕上がり。グートの演出では、台本にはない「天使ケルビム」を舞台に出現させており、このDVDはどちらかというとオペラ鑑賞に慣れている人向きと言えます。







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