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トロイの人々

Les Troyens





オペラ・データ

【作曲】
エクトル・ベルリオーズ(1856〜58年)

【初演】
1863年11月4日 パリ・リリック劇場(3〜5幕)
1890年12月6日 カールスルーエ(ドイツ語版)

【台本】
作曲者ベルリオーズ自身による(フランス語)

【原作】
ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』

【演奏時間】
第1幕 65分
第2幕 30分
第3幕 45分
第4幕 60分
第5幕 50分  合計 約4時間10分



あらすじ

【時と場所】 
ギリシャ神話の世界、トロイとカルタゴ

【登場人物】
アエネアス(T): トロイの英雄
カサンドラ(S): トロイの予言者
コロエブス(Br): カサンドラの婚約者
ディド(S): カルタゴの女王
ほか

【第1幕】
時は古代ギリシャ神話の時代、舞台はトロイ。10年続いたトロイ戦争からギリシャ人たちは、巨大な木馬を海岸に置いたまま撤退していました。トロイの王女カサンドラは、トロイの破滅と木馬の不吉を予言しますが、婚約者であるコロエブスですら信じてくれません。トロイの人々は、木馬を戦利品として城内に引き入れてしまいました。
 
【第2幕】
木馬の中に潜んでいたギリシャ人は城内に火を放ち、トロイは陥落しました。その中で英雄アエネアスはトロイを船で脱出し、トロイ再建を目指してイタリアの地に向かいます。一方、カサンドラは、この戦いで婚約者のコロエブスを失い、ギリシャ人に襲われる前に短刀で自らの命を絶ちました。
 
【第3幕】
北アフリカのカルタゴでは、女王ディドが国づくりを進め、7年間統治していました。そこにイタリアを目指して海を彷徨っていたトロイの人々が漂着します。カルタゴにアフリカ人の軍が攻め込んできたとき、水夫の変装を脱ぎ捨てたアエネアスはカルタゴと共に戦うことを申し出ます。彼はトロイの人々を率いて戦いに向かいました。
 
【第4幕】
アフリカ人の軍は退却し、狩の女神ディアナの装いをしたディドは、英雄アエネアスをカルタゴに迎え入れます。月夜の海を背景に二人は寄り添い、お互いの愛を確かめあいました。
 
【第5幕】
しかし、アエネアスはカルタゴを去り、イタリアに向かう運命を自覚します。トロイ戦争で亡くなった英雄たちの霊が次々と現れ、アエネアスにカルタゴからの出航を求めたのです。アエネアスは愛するディドに別れを告げ、イタリアに出発しました。残されたディドは、アエネアスの残した剣や武具を燃やし、自らも剣で自刃します。ディドはそのとき、「カルタゴの滅亡」と「不滅のローマ」を予言したのでした。



解説(ポイント)

【1】 ベルリオーズの歴史絵巻
 
このオペラ『トロイの人々』は、ロマン派の代表的な作曲家ベルリオーズが残した大作オペラです。そのスケールの大きさはしばしばワーグナーの『ニーベルングの指環』に匹敵する作品として、また、その内容は『トリスタンとイゾルデ』に並ぶ傑作として、オペラ史に大きな足跡を残しています。ベルリオーズの生前には、1863年に、『カルタゴのトロイ人』というタイトルで、第3幕から第5幕が上演されました。1890年にようやく、ドイツ語でしたが、オペラ全編が初演されます。そして、死後1世紀を経て、1969年にフランス語で初めて全編が上演されました。
 
【2】 カサンドラの予言の力
 
このオペラの意味するところを理解するには、ギリシャ神話の伝説を知っておく必要があります。それはトロイの王女カサンドラの予言の逸話です。トロイの英雄ヘクトールやパリスの妹である美しき王女カサンドラは、オリンポス12神の一人アポロンに見初められます。アポロンは彼女に、恋人になった暁には、必ず当たる予言の力を与えようと言います。こうして予言の力を得たカサンドラでしたが、アポロンが彼女のことを捨てて去っていく未来が見えてしまい、彼の愛を受け入れることをやめます。怒ったアポロンは、カサンドラの予言を誰も信じなくなる呪いをかけたのです。こうしてカサンドラの警笛は無視され、トロイの木馬が城内に引き込まれます。作曲家のベルリオーズは少年の頃から、ヴェルギリウスの叙事詩『アエネイス』をはじめ、トロイの題材に親しんでいたそうです。
 
【3】 ベルリオーズの作曲技法
 
4時間を超える長編オペラは、ベルリオーズの魅力的なオーケストレーションに支えられ、聴衆である私たちをギリシャ神話の世界へと誘ってくれます。ベルリオーズは珍しい楽器をも使用して、オペラの舞台である古代地中海世界の雰囲気を作り出しているのです。第4幕は、有名な交響詩「王の狩と嵐」で始まり、狩の女神ディアナの姿のディドとトロイの英雄アエネアスをはじめ、カルタゴの森が描かれます。また、この幕の最後は、ディドとアエネアスの限りなく美しい二重唱で終わり、このオペラのハイライトの一つだと言えるでしょう。



おすすめディスク

【CD】
デュトワ指揮
モントリオール交響楽団、合唱団
レイクス(T) ヴォイト(S) キリコ(Br) ポレ(S)
(録音1993年、LONDON)
 
デュトワとモントリオール響によるオペラ録音は、第1弾の『ペレアスとメリザンド』に続き、この『トロイの人々』が選ばれました。このコンビは、『ファウストの劫罰』『レクイエム』『キリストの幼時』など他にも多くのベルリオーズ作品の名盤を残しています。
 
 
【DVD】
レヴァイン指揮、メラーノ演出
メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱団
ドミンゴ(T) ノーマン(S) モンク(Br) トロヤノス(S)
(録音1983年、Deutsche Grammophon)
 
以前、LD(レーザーディスク)として、パイオニアからリリーズされていたメトロポリタン歌劇場の公演。その後、DVDになったり、DGからの販売となったりと、その重量級の公演はずっと親しまれてきました。








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