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【作曲】 モーリス・ラヴェル(1907年)
【初演】 1911年5月19日 パリ、オペラ・コミック座
【台本】 フラン・ノアン(フランス語)
【原作】 フラン・ノアンの戯曲『スペインの時』
【演奏時間】 全1幕 45分
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【時と場所】 18世紀、スペインのトレド
【登場人物】
トルケマダ(T): 時計屋
コンセプシオン(S): トルケマダの妻
ラミーロ(Br): ロバ曳き
ゴンサルヴェ(T): 学生
ドン・イニゴ・ゴメス(Bs): 銀行家
ほか
【第1幕】
時は18世紀、舞台はスペインのトレドにある時計屋トルケマダの店。腕っぷしの強さでは誰にも負けないロバ曳きのラミーロは、いつも決まった時刻に郵便物をロバに乗せて配達していましたが、肝心の時計が止まってばかりいるので、トルケマダの店に修理に訪れました。
主人のトルケマダは、今日は市役所の時計の点検に行く日で、妻のコンセプシオンは早く出掛けるように急かしていました。実はこの女房、主人の外出中に恋人を家に連れ込もうとしていたのです。
夫がせっかく出掛けたのに店にはロバ引きのラミーロが残っていたので、コンセプシオンは大時計の一つを2階に持っていってほしいと頼んで彼を追い払います。ラミーロとしても得意の力仕事ということで快く引き受けました。
そのときちょうどコンセプシオンの恋人ゴンサルヴェが来訪。けれど、時間がないにもかかわらず彼は流暢に甘い言葉を投げかけるので、コンセプシオンはいらいらします。
2階からラミーロが降りてきたので、もう一つの大時計と取り替えてほしいと頼みます。その上でそのもう一つの大時計の中に恋人のゴンサルヴェを押し込んでおきました。
ここでもう一人の登場人物である銀行家のドン・イニゴ・ゴメスがやってきます。彼もコンセプシオンに言い寄ろうとしますが、相手にされません。そこで彼は大時計の中に隠れて彼女を驚かせようとします。
どうもコンセプシオンの目からすると、恋人ゴンサルヴェもぱっとしない、銀行家ドン・イニゴ・ゴメスは論外。よくよく考えてみると、大時計を軽々と持ち上げて頼りになるロバ曳きのラミーロが一番魅力的ではないか……。コンセプシオンは大時計に入った二人を置き去りにしてラミーロを2階の寝室へと誘いました。
さて、そこへ帰ってきたのが、時計屋の主人トルケマダ。大時計に入っていた二人は、すばらしい時計なので中を調べていたと言い訳をしたので、その大時計を買わされてしまいました。
2階から降りてきたのは、お楽しみの時を終えたコンセプシオンとラミーロ。オペラは「恋人の中から、役に立つ恋人を一人だけ選びましょう!」と歌って幕となります。
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【1】 スペインに魅了されたラヴェル
フランス印象派の代表的な作曲家であるラヴェルの2つのオペラのうちの最初の一つがこの『スペインの時』です(もう一つの作品は『子供と魔法』(1925年))。この頃の若い芸術家たちは、エキゾチシズム(異国趣味)に魅せられており、それはラヴェルにとっても例外ではありませんでした。彼が最も魅了されていたのが、お隣の国スペイン。ラヴェルの最も有名な管弦楽曲『ボレロ』のボレロが意味するところもスペインの舞曲です。実はラヴェルの母親はスペインで暮らしていたこともあり、スペインはラヴェルにとって親しみやすい国だったのかもしれません。
【2】 小さくて大きなオペラ
『ペレアスとメリザンド』で独自の世界観を打ち出したドビュッシーに続き、ラヴェルが世に問うたのは、フランス音楽の語法を使ってスペイン風味に味付けをしたイタリア風の小さなオペラブッファ。それが何とも言えない絶妙なバランスを保ち、オペラ史上、かけがえのない重要なオペラとなりました。ラヴェルは「イタリアのオペラブッファに新たな息を吹き込みたい。とりわけ音楽、つまりハーモニーとリズムとオーケストレーションを通してアイロニーを表現したいのだ」と言いました。
【3】 それはあたかも時を忘れるかの如く
全1幕の演奏時間の短いオペラなので、実際に上演されるときは、何か他の同じような演奏時間の短いオペラと2本立てで上演されます(ダブルビル)。初演のときも、マスネの『テレーズ』というオペラといっしょに上演されました。今では、ラヴェルのもう一つのオペラ『子供と魔法』との2本立てや、新国立劇場(2004年)では、バレエといっしょに上演されたことも記憶に新しいところです。演奏時間は短いのですが、複雑な物語が精密に展開され、ラヴェルの色彩豊かな管弦楽法に驚きつつも、もっと長く楽しみたいと、つい「時」を意識してしまいます。
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【CD】
マゼール指揮
フランス国立放送管弦楽団
ジロドー(T) ベルビエ(S) バキエ(Br) セネシャル(T) ファン・ダム(Bs)
(録音1965年、Deutsche Grammophon) |
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長い間、このオペラの定盤となっています。このディスクに代わるような新しい演奏が出ないものかと思いますが、有名オペラでないだけあって期待薄です。このディスクでは歌手陣が充実しているのがうれしいところ。聴いていて楽しい。
【DVD】
エドワーズ指揮、コルサロ演出
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
コラッサ(T) スタイガー(S) ルルー(Br) ドラン(T) ルー(Bs)
(録画1987年、Pioneer) |
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アマゾンによるとDVDでも発売されたようですが、私はLDの時代に見ていました。あまりにもよくできた舞台のため、頭の中の映像を払拭するのが難しいくらい。もっと多くの映像作品が出てほしいものです。
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