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【作曲】
ジャコモ・プッチーニ(1890〜92年)
【初演】
1893年2月1日 トリノ、レッジョ劇場
【台本】
ドメニコ・オリーヴァ、ルイージ・イッリカ(イタリア語)
【原作】
アントワヌ・フランソワ・プレヴォの小説『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』
【演奏時間】
第1幕 35分
第2幕 35分
第3幕 20分
第4幕 20分 合計 約1時間50分
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【時と場所】
18世紀、フランスとアメリカ
【登場人物】
マノン・レスコー(S): 修道院に入る前の美しき娘
デ・グリュー(T): 青年騎士
レスコー(Br): マノンの兄、近衛軍曹
ジェロント(Bs): 老銀行家
ほか
【第1幕】
時は18世紀、舞台はフランス、アミアンの広場。青年騎士デ・グリューが、自分にふさわしい女性はいるのだろうかと学生たちに話していると、そこに、馬車を降り、宿屋に入っていく兄妹の姿が目にとまります。近衛軍曹レスコーに連れられたその妹のマノンです。恋多き彼女は、父の意向で修道院に入るために旅をしているところでした。マノンにひと目惚れしたデ・グリューは、夜に彼女と会う約束をとりつけます。しかし、馬車に乗り合わせていた老銀行家のジェロントもマノンに目をつけていました。ジェロントは、レスコーがカジノに夢中になっている隙に、用意した馬車でマノンを連れ去ろうと企みました。しかし、その夜に再会したデ・グリューとマノンは、ジェロントが用意した馬車を使い、二人で宿屋から逃げ去ったのです。
【第2幕】
しかし、結局マノンは裕福な銀行家のジェロントを選び、パリにある彼の豪邸で贅沢な暮らしをします。そうした生活はすぐに退屈となり、マノンは過ぎ去ったデ・グリューとの愛ある生活を懐かしみました。そのとき、密かにデ・グリューがマノンの前に現れ、二人は再会を果たし、お互いを求めあいます。しかし、その様子をジェロントに見られていました。面目をつぶされた彼は、マノンの不貞行為を官憲に告発します。マノンは官憲に捕まり、逮捕されてしまいました。
【第3幕】
不貞行為の罪は、新大陸への流刑にあたります。港町ル・アーヴルの牢獄に捕らわれたマノンを、デ・グリューとレスコーが助けようとしますが失敗します。マノンが流刑船に連れていかれようとするところで、デ・グリューが割って入り、自分も同行させてほしいと船長に懇願しました。
【第4幕】
流刑地の米国で、護送中に脱走したマノンとデ・グリューは、ニューオーリンズの荒野にあって極度の飢えと渇きの中で彷徨っていました。水平線の彼方まで水を得ることができる風景は見えてきません。マノンは、デ・グリューの腕の中で、お互いの愛を確かめあいながら息絶えたのでした。
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【1】 ヴェルディの後継者は、プッチーニ
プッチーニはミラノ音楽院で学び、苦学してオペラ作曲家を目指していました。彼の才能に目をつけた楽譜出版のリコルディ社は、プッチーニにチャンスを与え、このオペラ『マノン・レスコー』はトリノ王立劇場で初演されます。イタリア・オペラの巨匠ヴェルディの最後の傑作オペラ『ファルスタッフ』の初演よりわずか8日前に誕生した『マノン・レスコー』は、『妖精ヴィッリ』『エドガール』に続くプッチーニの3作目のオペラであり、初めてのヒット作です。『マノン・レスコー』の初演のカーテンコールは、30回にもなったといいます。ヴェルディからプッチーニの時代へと移り変わる意味でも、このオペラはプッチーニをイタリア・オペラ作曲家の代表という地位に押し上げました。このオペラの成功で、プッチーニがヴェルディの後継者であることが認められたのです。
【2】 イタリア風のマノン
プレヴォの小説『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』を原作とするオペラとしては、フランスのロマン派を代表するオペラ作曲家マスネにも同名の作品があります。プッチーニはこの原作を、イタリア・オペラのスタイルに引き寄せて作曲しました。リコルディ社のジュリオ・リコルディは、プッチーニに対し、すでにマスネが大成功を収めている同じ題材を使うことをやめた方がいいとアドバイスしていました。しかし、プッチーニはマノンというヒロインの持つ魅力にひかれ、このオペラの作曲を続けました。マスネによるフランス風のマノン、プッチーニによるイタリア風のマノンとして、オペラ史上、同じ原作に有名オペラが重なることになったのです。
【3】 恋人たちのオペラの始まり
台本には作曲者自身も含めて6人が関わったことから、出版の際、楽譜に台本作家の名前は掲げられませんでした。このオペラの弱点といえば、ドラマが少し飛び飛びになるところ。例えば、第4幕で米国に流刑となったマノンと、一緒についていったデ・グリューは、いきなりニューオーリンズの荒野に放り出されています。プッチーニはオペラ完成後も、恋人たちのパリでの幸せな生活を描いた幕を加えようかと考えていたそうです。とはいえ、このオペラには、プッチーニの見事なオペラ作曲の手法が垣間見え、例えば、デ・グリューのアリア「見たこともない美しい人」"Donna
non vidi" の若々しい愛のアリアや、その後のマノンとデ・グリューの二重唱「お分かりですか?言ったことは守ります」"Vedete?
Io son fedele" を聴けば、その後のプッチーニの成功を予感することができます。
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【CD】
シノーポリ指揮
フィルハーモニア管弦楽団、コヴェント・ガーデン王立歌劇場合唱団
フレーニ(S) ドミンゴ(T) ブルゾン(Br) リドル(Bs)
(録音1984年、Deutsche Grammophon) |
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シノーポリの指揮に、主役のフレーニ、ドミンゴ、ブルゾンが安定した歌唱で、安心して聴ける全曲盤です。
【DVD】
ムーティ指揮、カヴァーニ演出
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
グレギーナ(S) クーラ(T) ガッロ(Br) ローニ(Bs)
(録音1998年、DENON) |
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映像に恵まれているこのオペラの中でも、ムーティがプッチーニのオペラを初めて舞台上演したこの映像はおすすめ。30代のグレギーナ、クーラという若い歌手陣も良い出来です。
【DVD】
パッパーノ指揮、ケント演出
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
オポライス(S) カウフマン(T) モルトマン(Br) ムラーロ(Bs)
(録音2014年、Sony Classical) |
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コヴェント・ガーデン王立歌劇場の30年ぶりの新演出。マノン役はネトレプコがキャンセルしてオポライスが出演し、カウフマンとともに好評を博しました。
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