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オルフェオとエウリディーチェ






オペラ・データ

【作曲】
クリストフ・ヴィリバルト・グルック(1762年)

【初演】
1762年10月5日 ウィーン、ブルク劇場
1774年8月2日 パリ、オペラ座(フランス語版)

【台本】
ラニエリ・ダ・カルツァビージ(イタリア語)
ピエール・ルイス・モリエール(フランス語版)

【原作】
ギリシア神話のオルフェオの物語に基づく

【演奏時間】
第1幕 30分
第2幕 40分
第3幕 30分  合計 約1時間40分



あらすじ

【時と場所】 
ギリシャ神話の世界、ギリシャと冥界

【登場人物】
オルフェオ(Ms、Br): 竪琴弾き
エウリディーチェ(S): オルフェオの妻
アモーレ(S): 愛の神
ほか

【第1幕】
時は神話の時代、舞台は現世と冥界。竪琴弾きのオルフェオは、愛する妻エウリディーチェを亡くし、月桂樹のある森の中のお墓を前に悲嘆にくれています。オルフェオは神々に対し、妻を取り戻すためなら恐ろしい冥界にも行く覚悟がある、と訴えます。
するとそこへ、愛の神アモーレがやって来ます。アモーレは「全能の神ジュピターがあなたに同情し、冥界に行くことを許しました。もしあなたが死霊たちの怒りを鎮めることができるなら、エウリディーチェを連れ戻すことができるでしょう。しかし、地上に戻る前に絶対に彼女を見てはなりません」と、オルフェオに伝えました。
 
【第2幕】
冥界の入口でオルフェオは、死霊たちに取り囲まれます。死霊たちはオルフェオの行く道を阻みます。オルフェオが竪琴を手に取り、「もしわずかでも愛に悩んだ覚えがあるのなら、私の嘆きをわかってほしい」と歌うと、道は開かれたのでした。
冥界は、美しく澄み切った空に輝かしい太陽の光で満ちていました。小川が流れるその場所に、エウリディーチェが精霊たちに導かれてやって来ます。オルフェオは彼女を見ないようにして手を取って地上へと向かいました。
 
【第3幕】
地上へ戻る途中、エウリディーチェはせっかく再会した夫が、自分のことをひと目も見てくれないので、次第に不安を感じます。夫の自分への愛情が無くなってしまったのではないかと思ったのです。エウリディーチェは、岩の上に倒れるように腰を下ろしました。そして、夫のオルフェオに「私のことを思い出してください」と懇願するのです。
オルフェオも耐えられず、ついに振り向いて彼女のことを見てしまいました。その瞬間、エウリディーチェは絶命してしまいます。
オルフェオは深く嘆き、自ら命を絶とうとしました。そのとき再び愛の神アモーレが現れ、「よく耐えました。それで十分です」と言い、特別にエウリディーチェに命を吹き込みました。オルフェオとエウリディーチェは抱き合って喜び、神に感謝したのでした。



解説(ポイント)

【1】 グルックのオペラ改革
 
グルックは、オペラの歴史上、重要な人物です。オペラが活発に上演されるようになってまもなく、モーツァルトやロッシーニの時代よりもっと前のことですが、バロック時代のオペラは、華やかな声楽技巧を披露することに多くの関心が寄せられ、人々は「歌」にばかり注目し、オペラの重要な要素である「音楽」と「劇」が非常に軽視されるようになっていました。そこでグルックやその仲間の作曲家たちは、オペラの「音楽」と「劇」とを密接に結びつけ、オペラ全体を通して劇的な効果を生む・・・というような作品を目指し、オペラを「改革」しようとしました。そして、その中で最も成功し、今日までも愛好家に親しまれているのが、この『オルフェオとエウリディーチェ』なのです。
 
【2】 簡潔で、わかりやすいオペラ
 
オペラ改革について、グルックはオペラ『アルチェステ』作曲の際の序文に具体的にこう述べています。
《最大の努力を崇高な平明さを求めることに捧げるべきだと信じています。そのために明晰さを犠牲にして、難解さを誇示することは避けてきました。ドラマの内容や表現から自然に示唆されたのでなければ、新しさを与えようとは思っていません》
『オルフェオとエウリディーチェ』の登場人物は3人。非常に簡潔ですが、物語の筋がはっきりしていて、しかもこの時代の音楽とは信じられないような劇的な表現にあふれています。さらにこのオペラの合唱の活躍に注目です。合唱が影の主役だと言ってもいいくらい充実しています。
 
【3】 オルフェオを歌うのは男?女?
 
このオペラがウィーンで初演されたとき、オルフェオ役を歌ったのは、「カストラート」と呼ばれる去勢された男性歌手でした。カストラートは男性なのに女性の声域を持っていました。声変わりをしていないのです。『オルフェオとエウリディーチェ』がウィーンで初演された後、フランスで初演されるとき、フランスではカストラートの出演が認められていなかったので、作曲家グルックはオルフェオ役をテノール歌手が歌えるように変更しました。現在は、オルフェオ役はメゾ・ソプラノが受け持つか、バリトンが歌うこともあります。そして、裏声で女性の声域を出す「カウンター・テノール」が起用されることも多くあります。あなたはどの声域の歌手がオルフェオ役を歌うのがお好みですか。



おすすめディスク

【CD】
ガーディナー指揮
イギリス・バロック管弦楽団、モンテヴェルディ合唱団
レイギン(cT)マクネアー(S) シーデン(S)
(録音1991年、PHILIPS)
 
カウンター・テノール版のオルフェオなら、このディスクをおすすめします。レイギンの声を聴いたら、きっと驚くと思います。マクネアーの声もとてもきれい。指揮者ガーディナーの手兵モンテヴェルディ合唱団の合唱も機動力があり、聴かせてくれます。


【CD】
リヒター指揮
ミュンヘン・バッハ管弦楽団、合唱団
ディースカウ(Br)ヤノヴィッツ(S) モーザー(S)
(録音1968年、Deutsche Grammophon)
 
少し古い録音ですが、バリトン版のオルフェオならこちらのディスクを。ディースカウがさすがの歌唱を披露しています。エウリディーチェ役のヤノヴィッツも十分。こちらの方が、オペラ的な力強さがあります。


【DVD】
ヘンヒェン指揮、クプファー演出
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
コヴァルスキー(cT)ウェブスター(S) バッド(S)
(録音1991年、Arthaus Musik)
 
そして、映像作品なら、カウンター・テノール、コヴァルスキーの『オルフェオとエウリディーチェ』は、一見の価値があります。演出もクプファーであり、まさに役者は揃ったというディスクです。







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