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【作曲】 ルッジェーロ・レオンカヴァッロ(1892年)
【初演】 1892年5月21日 ミラノ、ダル・ヴェルメ劇場
【台本】 作曲者自身による(イタリア語)
【演奏時間】 第1幕 45分
第2幕 25分 約1時間10分
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【時と場所】 1865〜70年頃、イタリアのカラブリア地方
【登場人物】
カニオ(T): 旅芝居一座の座長
ネッダ(S): カニオの妻、女優
トニオ(Br): 座員のひとり
シルヴィオ(Br): 村の青年、ネッダの愛人
ほか
【プロローグ】
幕が上がる前に、旅芝居一座の座員のひとりトニオが道化師の姿で現れ、「人を笑わせる商売の道化役者も、普通の人間。悲しみや苦悩を感じるのはいっしょです」と前口上を述べます。
【第1幕】
時は19世紀後半、舞台はイタリアの南部、カラブリア地方。聖母マリアが天に昇った記念日、聖母被昇天祭の祝日(8月15日)、カニオを座長とする旅芝居一座が村にやってきました。座長カニオの妻は、一座の女優ネッダ。ネッダは嫉妬深い夫に嫌気がさして、空飛ぶ小鳥のように自由になりたいと歌っていました。そこへ座員のひとりであるトニオが現れ彼女に言い寄ります。ネッダはトニオに見向きもしません。なぜならネッダにはこの村にシルヴィオという愛人がいたのでした。
ネッダとシルヴィオは密かに会っていて、駆け落ちの約束をしました。それをこっそり見ていた座員のトニオは、座長カニオをその場に連れてきます。カニオが現場に飛び込んだところで、シルヴィオは逃げ去りました。カニオは妻のネッダに「今逃げた男の名前を言え」と激怒しますが、ネッダは言いません。
そうこうするうちに芝居の時間が迫ってきていました。座長カニオは芝居小屋に戻り、道化師の衣装を着け、白粉(おしろい)を顔に塗りながら、自分の苦悩を笑えと鼓舞しつつ、泣くのでした。
【第2幕】
村人たちが集まったところで芝居が始まります。芝居は現実と似通っていて、女優ネッダの扮する女が、道化師である夫の留守中に恋人を家に呼び込んだところ、夫が帰ってきてしまうという話。夫役は、座長のカニオ。カニオが舞台に登場し、ネッダの扮する女に詰め寄るとき、カニオはもう芝居なのか現実のことなのかわからなくなっていました。その行動は観客には迫真の演技に見えて、大喝采を浴びます。しかしそんなことはお構いなくカニオは本気でネッダに「愛人の名前を言え」と詰め寄ります。ネッダが「嫌だ」とむしろ挑発的に断ると、カニオは逆上して、近くにあったナイフでネッダを刺してしまいました。ネッダは最期に「助けて!シルヴィオ」と叫ぶと、観客の中からシルヴィオが飛び出してきます。カニオは続けてシルヴィオも刺し殺してしまいました。
悲鳴を上げる観客。カニオは呆然としてその手からナイフを落とすと一言、「喜劇は終わりました」とつぶやいたのでした。
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【1】 ヴェリズモ・オペラの傑作
イタリアの楽譜出版社ソンツォーニョ社によるオペラ作曲コンクールの優勝作であるマスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』の成功に触発されて、レオンカヴァッロがわずか5か月ほどで書き上げたのが、このオペラ『道化師(パリアッチ)』でした。ところが、このコンクールは一幕もののオペラを募集していたため、二幕ものの『道化師』は選からもれてしまいます。しかし、楽譜出版社の社長がこのオペラの内容の良さを認め、当時25才だったトスカニーニの指揮によって初演され、大成功を収めました。
【2】 テノールの絶唱「衣装をつけろ」
なんといってもこのオペラの最大の聴きどころは、座長カニオ役が歌うアリア「衣装をつけろ」です。自分の苦悩をも耐えて道化の衣裳を身にまとい、皆を笑わせる立場であることを嘆きます。道化師でなくとも、人は皆、何かのために自分の苦悩を押し殺し、世間で振る舞うことをしなければならないことがあるものです。このテノールの絶唱を聴けば、その痛切な歌声が深く心に響くことでしょう。
【3】 劇中劇のおもしろさ
このオペラの台本は、ある戯曲をもとにしたとも言われていますが、裁判官だったレオンカヴァッロの父が実際に扱った事件をもとに作曲家自身が書いたとも言われています。おもしろいのは、劇の中に劇が入っていること。しかもその中に入っている劇が、外の劇、つまり現実と似通っていて、カニオがそれを混同してしまうところに、ストーリー展開上の重要なポイントがあります。そして、この劇中劇をもっと我々に意識させるために、オペラの冒頭で、プロローグとして客席(私たち)に向かって前口上を述べる「道化師」が現れます。この巧みな劇構成は、見事と言うほかありません。
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【CD】
プレートル指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
ドミンゴ(T) ストラータス(S) ポンス(Br) リナルディ(Br)
(録音1983年、PHILIPS) |
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歌唱の演技力がうまいドミンゴの「道化師」が魅力のディスク。ネッダ役のストラータスも、トニオ役のポンスも役柄に合っています。まずはこのディスクで、このオペラに親しみたいところ。
【CD】
シャイー指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、オランダ放送合唱団
クーラ(T) フリットリ(S) アルバレス(Br) キーンリーサイド(Br)
(録音1999年、DECCA) |
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シャイーのもとに望みうる最高のキャストが揃いました。クーラの声色で「衣装をつけろ」を歌われるとぞくぞくします。フリットリの歌唱もうまい。そして、二人のバリトンの配役も見事で、ラテン系のアルバレスにトニオ役を。そして、ネッダを誘うシルヴィオ役には二枚目のキーンリーサイドを。
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